「住宅ローンが残っていても、家は売れるのかな?」
そう疑問に思ったことはありませんか?
実は、住宅ローンが残っていても家は売却できます。
家の売却利益で住宅ローンを完済できるケースもあるため、住宅ローンを理由に売却を諦める必要はないのです。
さらに、前の住宅ローンが残っていても、新しく住宅ローンを組むことも可能です。
本記事は、住宅ローンが完済し終えていない家の売却について、初心者にもわかりやすく解説します。
売り方の手順や必要な書類、手続きに加え、住宅ローンのある家から新居へ引っ越すための手順を説明していきます。
住宅ローンの現状を確認しよう
家を売る前に、住宅ローンの現状について確認しておきましょう。
具体的には、金融機関が発行している「返済予定表」と「残高証明書」を用意してください。
見つからない場合はローンを借りた金融機関へ問い合わせましょう。
1.住宅ローンの残高を確認する
「返済予定表」は金融機関が発行する書類で、ローンを借り入れた後に金融機関へ登録した住所に郵送されます。
返済方法や最終返済日のほか、当初借入金額・借入額、毎月の返済日・返済金額、借入金の残高などが記載されています。
「残高証明書」も金融機関が発行する書類で、登録した住所へ毎年郵送されます。
年末のローン残高が記載されているため、住宅ローンの現状を把握することができます。
返済予定表・残高証明書は、金融機関窓口または郵送にて再発行ができる書類です。
インターネット上で残債額を確認できる金融機関もあり、三菱UFJ銀行では「ご返済のお知らせ」ページから確認可能です。
(例)三菱UFJ銀行Q&A
三井住友信託銀行はインターネットバンキングへログイン後、「住宅ローン・カードローン」にある「返済予定明細」から確認できます。
(例)三井住友信託銀行Q&A
2.現在の物件価値を把握する
住宅ローンが残っていても、家の売却はできます。
まずは家の物件価値を正しく把握するため、インターネットで出来る「簡易査定」や不動産業者へ査定を依頼する「訪問査定」を行いましょう。
気軽に価値を把握したい場合は、簡易査定や家査定シミュレーションが便利です。
1日から3日以内で結果を知れて、中にはその場で査定結果が出る場合もあります。
より現実的な価値を把握したい場合は、以下の流れで不動産に訪問査定を依頼ましょう。
プロセスはおおよそ1週間かかります。
- 不動産業者へ訪問査定を依頼する
- 必要書類を集める
- 担当者が訪問し、物件の状態を調べる
- 不動産業者が査定書を作成する
- 不動産業者から査定報告を受ける
査定価格は不動産業者によって差が出る場合があるため、複数の不動産業者へ査定を依頼して相場を把握しましょう。
以下は必要書類の一例です。
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 身分証明書
- 固定資産税評価証明書
- 測量図
- ローン残高証明書
- 物件の間取りや形などが分かる図面
業者によって異なるため、訪問査定を依頼する際に必要書類を確認しましょう。
売却の検討
住宅ローンの残債額が確認できたら、具体的な売却を検討しましょう。
売却が長引くと物件の不動産価値が低くなる可能性があるため、注意が必要です。
不動産が売れやすい時期を見極め、それに向けた売却計画を立てましょう。
ローン残債を一括返済できる場合
家の売却額が住宅ローンの残債額を上回ることを「アンダーローン」といいます。
例えば、家の売却額が1,000万円で、住宅ローンが残り800万円だった場合は「アンダーローン」です。この場合、家の売却と同時に住宅ローンを一括返金できます。
アンダーローンの利点は、売却と同時に住宅ローンが完済できるという安心感がある点です。
またアンダーローンは手続きが簡単という利点もあります。
売り手と買い手、司法書士が同席して手続きをすることで、買い手から売り手への支払い・金融機関から買い手への融資・家の登記変更がすべて完了します。
注意点は、売却して得た利益が3,000万円以上だった場合は「譲渡所得」となり、課税対象となることです。
ただ、中古の家が3,000万円以上で売れる場合は稀であるため、アンダーローンでのデメリットはないに等しいです。
ローン残債が売却価格を下回る場合
一方、家の売却額が住宅ローンの残債額を下回ることを「オーバーローン」といいます。
家の売却額が800万円で、住宅ローンが残り1,000万円だった場合は「オーバーローン」です。この場合は家を売却しても住宅ローンを完済できません。
オーバーローンの状態で住宅ローンを返済するには、手持ちの現金などを使う必要があります。
現金の準備ができない場合は売却はできません。
ただし、オーバーローンであっても新築物件に買い替える場合は「住み替えローン」を利用できます。
住み替えローンは新居の購入費用と住宅ローンの残債額の2つを金融機関から借りることです。
現金が用意できない・住宅ローンを借りれない人は、金融機関からの合意を得て家を売却する「任意売却」が可能な場合があります。
任意売却ができる物件は、一定の条件を満たした不動産価値が高い物件です。自分の物件が当てはまるか確認しておきましょう。
売却の手順
売却には、不動産業者との契約が必須です。
不動産業者との契約を「媒介契約」と呼び、これにより不動産業者とともに物件の売却活動を開始することになります。
全体の流れとしては、売却活動を進めながら住宅ローンの支払いを考えていきます。
手持ちの資金で不足する場合は、新たな融資を受ける必要があります。
貯金額を使い切って住宅ローンを返済してしまうと、物件の売却活動に必要な資金がなくなってしまうため、注意しましょう。
抵当権の抹消手続き
抵当権とは住宅ローンを借りる際に、金融機関が物件や土地を担保とする権利です。
これにより、ローンを借りる「債務者」は融資を得られ、資金を貸す「債権者(金融機関など)」はローンの踏み倒しを防ぐことができます。
住宅ローンを完済すると、物件などの不動産の抵当権の登記を抹消する手続きが必要です。
抵当権抹消のための必要書類・手続き方法・注意点を確認しましょう。
必要書類
- 登記申請書
- 登記識別情報
- 登記原因証明情報
- 会社法人番号(抵当権者の会社法人番号)
- 代理権限証明情報(委任状)
- 登録免許税(収入印紙)
手順
- 登記申請書を作成する
- 登録免許税を納付する
- 登記申請書類等を管轄の法務局(登記所)へ提出する
- 法務局で登記を完了する
- 法務局から登記完了書類を受領する(郵送または窓口)
注意点は、登記簿に登録されている所有者および抵当権設定者の住所や氏名などの情報を確認しておくことです。
もし変更がある場合は、抵当権抹消登記に加え登記申請が求められます。
また、必要書類の有効期限が切れていないかを確認しましょう。
期限切れの書類は使用不可能なため、発行後は速やかに提出手続きを行うことがおすすめです。
売却価格の交渉と売却契約の締結
不動産業者を決め契約を結んだ後、物件の情報をRENS Market Informationなどの不動産情報サイトに登録します。
サイトを通して買い手が現れたら価格や条件などについて詳しく話し合い、売買契約を結びます。
公開から契約締結までの流れは以下の通りです。
- 不動産業者による訪問査定
- 不動産業者との媒介契約の締結
- サイトへの登録などの売却活動
- 買い手との売買契約
- 物件の引き渡し
家を高く売却するためのポイントは3つあります。
- 日々の住宅の清掃
- 物件のメンテナンス
- 売買に際して相談相手を多く持つ
売却する際は、物件購入を希望する人が内覧に来ます。
室内が汚れていたり生活感があり過ぎたりすると、悪い印象を与える可能性が高いため、清潔感のある物件になるよう清掃しましょう。
物件のメンテナンスとして、水回りや電気系統などの定期的な点検を行うほか、家全体の換気や破損している部分の修理を行いましょう。
仲介業者としての不動産業者のほか、買取を扱っている不動産業者もいます。
さまざまな専門家へ相談することは、少しでも物件を高く売ることにも繋がります。
売買代金からローン残高の返済、所有権移転登記、物件引き渡し
売買代金を受け取った後の流れは、アンダーローン・オーバーローン・住み替えローンの場合で異なります。
アンダーローンの場合、4つのステップはほぼ同時進行で行われます。
- 売却で得た資金で住宅ローン残債額を完済
- 残債務(完済して余った金額)があれば受け取る
- 法務局で所有権移転登記・抵当権の抹消手続きを行う
- 物件を引き渡す
オーバーローンであっても、残債務を現金で支払うことが可能であれば以下のようになります。
- 売却で得た資金で住宅ローン残債額を支払う
- 返済できなかった分(残債務)を一括で支払う
- 法務局で所有権移転登記・抵当権の抹消手続きを行う
- 物件を引き渡す
住宅ローンがオーバーローンで、住み替えローンを使って新居を購入する場合は以下の流れです。
- 金融機関へ住み替えローンを申し込む
- 住み替えローンで融資を受ける
- 売却で得た資金で住宅ローン残債額を支払う
- 新居を購入する
- 物件を引き渡す
ポイントは、売却代金を得る前に住み替えローンができる金融機関を探すこと、借入の審査に通ることの2点です。
住み替えローンは審査が難しいため、通らない場合もあります。
新居の準備
新居を購入する場合、以下の3つの住み替え方法があります。
- 売り先行型:住んでいる家を売る→新しい家を買う
- 買い先行型:新しい家を買う→住んでいる家を売る
- 同時並行型:住んでいる家を売りながら、新しい家を買う
売り先行型
売り先行型とは「住んでいる家を売った後に次の家を買う」方法です。
利点
- 資金計画を立てる時間と余裕が生まれる
- 二重借り入れ(ダブルローン)にならない
注意点
- 新しい家を手に入れるまでの仮住まいが必要
- 引っ越し回数が増えることもある
買い先行型
買い先行型とは「新しい家を買った後に、住んでいる家を売る」方法です。
利点
- 引っ越しにかかる費用が少ない
- 買い手が内覧しやすいため、買われやすい
注意点
- 資金計画を立てづらい
- 自己資金が足りなくなる場合もある
同時並行型
同時並行型は「住んでいる家の売却活動をしながら、新しい家を探す」方法です。
利点
- 引っ越しや一時的な住居にかかる費用が少ない
- 二重借り入れにならない
注意点
- 売却と購入のタイミングを合わせる必要がある
- 短期間にやることが増え、時間的余裕がない
まとめ
現在住んでいる家に住宅ローンが残っていても、物件として売却可能です。
売却額が住宅ローンを上回ることを「アンダーローン」、下回ることを「オーバーローン」といいます。
オーバーローンになる場合は、不動産業者や金融機関に相談しながら新居を探しましょう。
住宅ローンの残債額を「返済予定表」または「残高証明書」で確認し、売却活動にかかる金額などを考えながら、無理のない返済のプランを立てましょう。