家の売却は、ほとんどの方が人生で一度限りの経験。
初めてのことに戸惑ったり、売却の流れや常識が分からない方に向けて、この記事では以下の4点に絞って家を売る時の注意点をやさしく解説します。
- 家を売る前の準備
- 失敗しない不動産業者の選び方
- 売却契約の進め方
- 家を売った後の手続き
ぜひ最後まで読んで家を売る時の流れを注意点を把握しておきましょう。
家を売る前の準備
ここでは、家を売る前の準備について順を追って解説します。
不動産価値の把握
家を売る前にまずやるべきことは「客観的な家の価値」を把握することです。
販売価格には、家の建築年数や土地の広さ、家が建っている地域が関わってきます。
相場を知るために最も簡単な方法は、売却したい家に似た条件の物件を調べることです。
不動産価値を調べる際は、以下の2つのサイトが便利です。
- 不動産情報ライブラリ(国土交通省が管理)
- REINS Market Information(レインズ・マーケット・インドメーション)(全国指定流通機構連絡協議会が管理)
さらに具体的な不動産価値の把握をしたい場合は、査定をしてもらいましょう。
査定には「訪問査定」と「簡易査定」の2種類があります。
- 訪問査定:不動産会社に連絡し、実際に家を訪問・査定してもらう
- 簡易(机上)査定:不動産会社が提供する簡易ツールを用い、自分で入力し査定する
簡易査定は簡単に分かる反面、実際の査定額と大きく異なる可能性もあるため注意しましょう。
必要書類の準備
家の価値を把握したら、売却のための書類を準備します。
最低限必要な書類には以下のものがあります。
- 本人確認書類
- 身分証明書
- 実印
- 印鑑証明書
- 登記簿謄本(または登記事項証明書)
- 登記済権利証(または登記識別情報)
- 固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書
固定資産納税通知書は、毎年管轄の役所から送られてきます。再発行はできないため自宅を探してください。
登記簿謄本や登記済権利証は、管轄の法務局窓口にて請求できます。
上記の他に提出を求められる可能性がある書類には、以下のものが挙げられます。
- 家を買った際の重要事項説明書
- 物件の図面
- 設備の仕様書
- 建築確認済証および検査済証
- 建築設計図書・工事記録書
- 耐震診断報告書
- アスベスト使用調査報告書
場合によっては住民票や銀行口座の通帳、ローン残高証明書などの提出を求められる場合もあります。
ハウスクリーニングとリフォーム
最後に、家の外観や室内を整えましょう。
ハウスクリーニングやリフォームをすることで、家の販売価格を高くすることができます。
ハウスクリーニングは業者に家を掃除してもらうサービスです。掃除してもらう箇所は1部屋単位から家全体まで自由に選択できます。費用相場は戸建2LDKまたは3DKで6万円から10万円、3LDKまたは4DKで7万円から11万円ほどです。
ハウスクリーニングの流れは以下の通りです。
- 見積もりを依頼する
- ハウスクリーニングを申し込む
- 担当者から連絡が来る
- 担当者が訪問・見積もりに訪問する
- ハウスクリーニングのスタッフが掃除する
- 代金を支払う
さらには、リフォームで家の価値を高めることもできます。
家の経年劣化を修復・修理することで、新築のような状態に戻すことができます。
劣化具合や規模によりますが、キッチンや浴室は100万から150万、屋根や外壁といった外装は50万から150万が相場とされます。
リフォームの流れは以下の通りです。
- リフォーム業者に相談を依頼する
- 担当者が希望や価格などをヒアリングする
- 担当者が訪問する
- 担当者が見積もりやリフォームのプランを提示する
- 契約する
- 工事
- 引き渡し
自力でやる場合は、敷地内に生えている雑草を抜いたり床を磨いたりするだけでも、しっかり丁寧に管理されている印象を与えられます。
失敗しない不動産業者の選び方
ここでは、初めて家を売却する方に向けて不動産業者の選び方を解説します。
不動産業者は家を売る時のパートナーとも言える存在。失敗しないためにも最後まで読んで理解しましょう。
業者選択の基準
不動産業者は、焦らずに時間をかけて慎重に選んでください。
たくさん業者があってどう選べば分からない方は「宅地建物取引業の免許更新回数が多い業者」を選びましょう。
この免許は5年ごとに更新する必要があるため、更新回数は信頼の基準になり得ます。
免許の更新回数以外にも、以下のようなポイントを押さえると良い不動産業者を選べます。
- 査定価格が適切
- 実績がある
- 売りたい家の地域に詳しい
不動産業者には、広い地域をカバーする大手もあれば地域密着の小さな会社もあり、それぞれ強みが異なります。
不動産を扱う会社には大手と中小があります。メリットとデメリットは以下が挙げられます。
メリット | デメリット | |
大手不動産会社 | アクセスが良い場所にある | 地域に詳しくないことも |
広い範囲の多くの人に物件を見てもらえる | 売却までに時間がかかることも | |
中小不動産会社 | 地域のことに詳しい | 売却したい家の地域で探す必要がある |
独自のネットワークを持っている | 売却したい家をアピールできる範囲が絞られる |
家の売却には1カ月以上がかかるため、査定のために訪問したスタッフとの相性も重要です。
最終的には、自分がどのように家を売りたいか?を大切にしてくれる、長く付き合える不動産会社を選びましょう。
売却価格の交渉
不動産業者と良い価格交渉をするためには、事前に売却したい家の相場やアピールポイントをまとめましょう。
これをまとめておかないと、不動産会社の言い値で価格が決まってしまいます。
家の利便性や機能面だけでなく、「駅から近い」「公共施設へのアクセスが良い」などの家以外のアピールポイントをしっかりしっかり伝えることで、売却価格が上がる可能性があります。
交渉のポイントは、価格設定をあらかじめ高めにしておくことです。
最初の段階で高めに設定しておくことで、長期化したときに値下げ交渉に応じることもできます。
価格を決めた後で値上げするのは難しいため、最初に納得のできる価格を決めましょう。
売却契約の進め方
納得できる不動産業者が決まったら、次は売却契約に進みましょう。
ここでは契約時に見落としがちなポイントを詳しく解説します。
契約内容の確認
契約は「媒介契約」ともいわれ、「売主または購入希望者の両者と、不動産会社の間で結ぶ契約」のことです。
媒介契約により、不動産手数料や不動産業者に依頼できる業務内容が決まります。
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。
契約の種類によってできること・できないことが異なりますので、契約時は契約の種類を確かめましょう。
以下の表は3種類の媒介契約の違いです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
売り手が買い手を見つけること | 〇 | 〇 | × |
複数の不動産業者との契約すること | 〇 | × | × |
不動産から売り手への業務状況を報告すること | △ (任意) |
〇 (義務:2週間に1回以上) |
〇 (義務:1週間に1回以上) |
REINSへの登録すること | △ (任意) |
〇 (媒介契約締結後7営業日以内) |
〇 (媒介契約締結後5営業日以内) |
契約の期限 | × (指定なし) |
〇 (最長3カ月) |
〇
(最長3カ月) |
契約の有効期限が3カ月以内となっている箇所がありますが、あくまで契約の起源であり、必ずしもその期間内に家が売却されるわけではありません。
無事に家の売却が決まったら、売買契約書に必ず目を通しましょう。
この売買契約書には引き渡し日や価格、買い手との間で決定された内容などが細かく記載されます。
記載に抜け漏れがあった場合は契約が無効になる可能性もあり、家の欠陥などを報告していなかった場合は「契約不適合責任」として民法違反として違約金が発生する可能性もあります。
契約内容は複雑であるため、不安な方は専門家に相談しながら勧めると安心です。
売却益の計算
家の売却では、売却価格がすべて利益になるわけではありません。
売却に伴う費用を差し引いた金額が「手元に残る利益」であることを覚えておきましょう。
具体的には、不動産にかかる「仲介手数料」などがあり、金額は物件の売買価格によって異なります。
また、税金についても知っておく必要があります。
家の売却で得た金額は「所得税」の課税対象となる「譲渡所得」といいます。
計算方法は以下の通りです。
譲渡所得 = ①収入金額 – (②取得費 + ③譲渡費用) – ④特別控除額
- 収入金額は「売却価格」で、買い手から受け取る金額のことです。
- 取得費は「売却した家を買った際の費用」で、購入時の税金や仲介手数料、リフォーム費用などが含まれます。
- 譲渡費用は「家を売却した際にかかった費用」で、仲介手数料や売買契約のための印紙税などが含まれます。
- 特別控除額は「売却益にかかる税金を一定額まで抑えられる控除」です。条件を満たした場合に使用できます。
家を売却する場合、取得費から「減価償却費」を引きます。
家は土地とは異なり、長期間使用することで価値が下がっていくためです。
「取得費」から「減価滅却費」を引いた費用を「減価償却費相当額」といいます。算出方法は以下の通りです。
減価償却費相当額 = (建物購入代金 + 建物購入費用) × 90% × 償却率 × 経過年数
売却した家のローン返済が終わっていない場合、抵当権の抹消を行う必要があります。
抵当権とは債権者である金融機関が、土地や建物を担保とすることです。
ローン返済が終わっていない家を売却する際は、引き渡し日に住宅ローン残席の一括返済・抵当権の抹消を同時に行います。
家を売った後の手続き
家の売却が終わっても、実はまだ必要な手続きがあります。ここではそれぞれのポイントを解説します。
所有権移転登記
家の売却が終わったら、登記簿に掲載されている所有者の名義を変更しましょう。
登記簿とは法務局内で管理される書類で、建物や土地といった不動産の記録が載っているものです。
この家所有者の名義変更を「所有権移転登記」と言います。
登記簿の名義変更手順は以下の通りです。
- 売買契約が締結、売り手が頭金を受け取る
- 必要書類を揃える
- 家の引き渡し日に、管轄の法務局へ必要書類を提出する
必要書類提出から1週間〜2週間ほどで、登記簿謄本での名義変更が完了します。
必要書類は以下のものが挙げられます。
- 住民票
- 印鑑証明書
- 実印
- 登記識別情報
- 固定資産評価証明書
- 戸籍の附票
- 所有権移転登記の申請書
所有権移転登記にかかる費用は以下の通りです。
- 登録免許税
- 印紙税
- 各書類の発行手数料
印紙税は金額によって、登録免許税は家の評価額によって異なります。
これらの手続きは、司法書士などの専門家に依頼するのが一般的です。
個人が管轄の法務局窓口に行って手続きすることも可能ですが、登記権利者(売り手)と登記義務者(買い手)の両者が同時に窓口へ行く必要があります。
個人での手続きは手間が増える反面で依頼料を削減できるため、相談窓口などを活用しながら検討してみましょう。
税金対策
売却益である「譲渡所得」は課税対象のため、税金がかかります。
税金は家を所有していた期間の長さによって異なり、5年以下は「短期譲渡所得」、5年以上は「長期譲渡所得」といわれ、「短期譲渡所得」は税率が高いです。
税金は、それぞれ以下の計算式で算出できます。
- 短期譲渡所得:譲渡所得 × 39.63%(所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%)
- 長期譲渡所得:譲渡所得 × 20.315%(所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%)
家をの売却による利益が3,000万円に満たない場合は、特別控除を受けられる可能性があります。
また、公共事業などのため・特定土地区間整理事業のため・特定住宅地造成事業のため、などに該当する場合は特別控除の対象です。
節税のためにも正しい知識を持って確定申告を行いましょう。
分からない場合は税理士に相談しながら進めることもできます。
まとめ
家を売る時は、以下の4段階でそれぞれ注意すべきことが異なります。
- 家を売る前の準備
- 失敗しない不動産業者の選び方
- 売却契約の進め方
- 家を売った後の手続き
家の状況や売却にかけられる時間、費用などに応じて、自分に最適な形で家の売却を進めましょう。