不動産売却でかかる7つの費用
不動産の売却というと売却価格のことばかり考えがちですが、売却に必要な手数料などの費用についても把握しておくことが大切です。想定外の出費で赤字になってしまったなどということがないように、この章で一つずつ解説していきます。
仲介手数料
不動産売却を不動産会社へ依頼した際、販売活動や買主との仲介業務の報酬として支払うのが仲介手数料です。仲介手数料は「成功報酬」のため、買主が見つかって売買契約を交わすまで、支払い義務は発生しません。ただし、売買契約後の手付解除や違約解除の場合には仲介手数料が発生します。
また、この仲介手数料に含まれるのは通常の仲介業務で発生する費用に限られますので、売主側の希望で広告を追加した場合や買主との交渉で出張する必要があった場合などの費用は別途掛かります。
仲介手数料の金額は、不動産の売却価格によって計算式が変わります。下記表にてご確認ください。
| 不動産の売却価格 | 仲介手数料の計算式 |
| 200万円以下の場合 | 売却価格×5%+消費税 |
| 200万円超え400万円以下の場合 | 売却価格×4%+2万円+消費税 |
| 400万円超えの場合 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
印紙代
売買契約書に貼る印紙のことで、売却時に掛かる税金の一つです。定められた金額の印紙を貼って消印をすることで納税したとみなされます。印紙を貼っていなかった場合には3倍の額の過怠税が、消印されていない場合には同額の税金を納めなければいけません。また、印紙の金額は、契約書の掲載金額(ここでは不動産の売買価格)によって異なります。平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される契約書の印紙税額には軽減措置が適応されますので、詳しくは国税庁サイトをご参照ください。
なお、売買契約書は売主用と買主用の2通作成しますので、2通分の印紙税が必要になりますが、売主と買主で1通分ずつ負担するのが一般的です。
参照:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
抵当権抹消登記費用・ローン一括返済手数料
売却する不動産を住宅ローンで購入している場合には、金融機関が設定した「抵当権」が登記されているため、ローンを完済した際に必ず「抵当権抹消登記」が必要です。抵当権抹消にかかる登録免許税は、1つの不動産あたり1,000円ですが、これを司法書士に依頼する場合には、その手数料も含めて1万円~3万円程度が目安でしょう。
また、売却する不動産の売買代金をつかってローンを一括返済する際には、金融機関所定の一括返済手数料が掛かりますので覚えておきましょう。手数料の金額は、ローンの残高や金利の種類等によっても異なるため、事前に金融機関に確認しておくことがおすすめです。
譲渡所得税
不動産の売却時に、利益(譲渡所得)が出た場合にのみ課税されるのが「住民税」と「所得税」で、まとめて「譲渡所得税」と呼ばれています。利益が発生しなかった場合には課税されないのが特徴です。支払うタイミングは、不動産を売却した翌年に確定申告をして、6月に一括で支払うか、4分割での支払いも可能です。
納税額は、「譲渡所得額」と「不動産の所有期間」によって大きく変わります。譲渡所得額は、「譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)」の計算式で算出し、税率は売却する不動産の所有期間が5年を超えるかどうかで、下記表のように大きく異なります。
| 不動産の所有期間 | 所得税率(復興特別所得税率含む) | 住民税率 | 合計 |
| 所有期間が5年を超える(長期譲渡所得) | 15.315% | 5% | 20.315% |
| 所有期間が5年以下(短期譲渡所得) | 30.63% | 9% | 39.63% |
消費税
不動産会社に支払う仲介手数料と、司法書士に支払う名義変更依頼の費用に消費税がかかります。消費税というと少額をイメージしますが、大きな金額が動く不動産取引では消費税の額も大きくなる場合が多いです。不動産会社や司法書士に依頼せず不動産の売却をすることも可能ですが、専門知識が多く必要になる不動産取引において個人の売買はリスクが高くおすすめできません。
その他費用
不動産の売却時に必ずかかるものではありませんが、必要になる可能性がある費用についても8つご紹介いたします。
敷地測量費や耐震診断費用
不動産の境界が定まっていない場合は測量を入れる必要があります。測量費は売主負担となり、金額は50万円~100万円程度が目安です。また、不動産が1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された建物であれば、現在の耐震基準を満たしていない可能性があるため、耐震診断費用が必要になる場合があります。
ハウスクリーニングやリフォーム費
売却前にクリーニングやリフォームが必要な場合に限りますが、実施する場合は、箇所や広さ、状態、居住の有無などによって金額が異なります。一度専門業者への見積もり依頼をするか、不動産会社に依頼をして業者を紹介してもらう方が安く済むケースもあるので相談してみましょう。
家財等の処分費
不動産売却の際は、家の中や敷地内を空にしておくのが基本です。家財などの不用品は、リサイクルショップや自治体の粗大ゴミ収集所に持ち込むなどして処分する方法があります。自治体の粗大ゴミ処分はゴミの種類や大きさにより金額が掛かり、処分できる日も指定されている場合がありますので確認が必要です。
費用は掛かりますが、片付け専門の会社などに依頼するのも手間が省けて効率的といえるでしょう。
建物解体費用
築年数の古い家を売却する場合、解体して更地として売る方が高く売れることがあります。解体費用は、家の構造や建材、大きさによって異なります。当然、木造よりも鉄筋コンクリート造の方が廃棄しづらい建材になりますので、費用は高くなります。同じ30坪の家の場合、木造で100~200万円、鉄筋コンクリート造で120~240万円程度が目安です。
引越し費用
居住している不動産を売却する場合には、当然新居への引越し費用が掛かります。家族の人数や持ち物、引越し時期によって費用は前後しますが、10万円以上掛かる場合がほとんどですので、あらかじめ引越し会社から見積もりを取って、引越し時期の目途も立てておくのがおすすめです。
相続の場合は別途登記費用が必要
不動産は売主の名義でなければ売却することができないため、相続する不動産の売却には相続登記が必要になります。
不動産売却の費用を抑える方法
節約できる費用とできない費用
前章で解説した通り、不動産売却には多くの費用がかかりますが、中には節約できる費用もあります。特に、大きな出費になりがちな税金については、控除特例を利用することで節約につながりますし、他の諸費用についてもコツを押さえれば費用を最小限に抑えられるでしょう。この後の章で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
一方で、登記手数料や必要書類の取得費など、費用が決まっているものについての節約は難しいと言えます。登記については、司法書士への依頼費用を抑えるために自分自身で行うことも可能ですが、必要書類を揃えたり、登記申請書を作成したりする必要があり、初心者にとっては手間や労力がかかるものです。無理のない範囲で節約を検討しましょう。
費用を抑えるためのコツ
ここでは税金以外の費用を抑えるための具体的な方法について3例ご紹介します。
仲介手数料を抑える
売却する不動産を、不動産会社に仲介を依頼して売却するのではなく、直接不動産会社に買い取ってもらう「買取」を利用する場合には、仲介手数料はかかりません。
ただし、市場価格よりも売却価格が安くなる傾向にあることや、条件によっては買取を断られるケースもあります。何社か査定金額を比較し、仲介会社の査定価格と買取業者の査定価格が同じ場合には、買取業者に売却したほうが出費を抑えられますので頭に入れておきましょう。
何社か見積もりを取る
不動産売却にかかるその他費用でご紹介した「ハウスクリーニング費用」や「測量費用」「解体費用」「司法書士への報酬」「引越し代」などは、何社か見積もりを依頼し、比較することで費用を抑えられる可能性があります。時間や労力はかかりますが、少しでも費用を抑えたいという方は行うと良いでしょう。
リフォームやクリーニングは最小限に
不動産売却前にリフォームやクリーニングが必要だと感じる場合でも、まず不動産会社に相談してから実施するようにしましょう。場合によっては、リフォームなど無しでも十分売却が見込める可能性がありますし、大規模なリフォームなどで売却価格が高くなるのはあまりおすすめできません。
節税に利用できる特例3つ
不動産売却で特に大きな出費になりがちなのが税金ですが、特別控除を利用できれば大きな節約につながる可能性があります。この章では不動産売却で利用できる特例を3つご紹介いたしますので、ご自身の売却が該当するか確認してみてください。
居住用財産の3,000万円控除
居住中もしくは過去に居住していた居住用財産(マイホーム)を売却する際に、一定の要件を満たせば「居住用財産の3,000万円特別控除」が利用できます。
居住用財産の3,000万円特別控除を利用することで、譲渡所得から最大3,000万円を控除が受けられます。マイホームが購入時より3,000万円以上高く売れるケースは稀なので、この特例を利用できれば譲渡所得税・住民税が非課税になる場合がほとんどです。
参照:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
不動産の所有期間が5年を超えると譲渡所得税率が低くなることは前章にて解説しましたが、居住していたマイホームを売却する場合、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えると軽減税率の特例を使って、さらに税率を低くすることができます。
また、この特例は居住用財産の3,000万円の特別控除の特例と併用できるなど、メリットの多い特例となっています。
| 譲渡所得 | 6,000万円以下 | 6,000万円超 |
| 所得税 | 10.21% | 15.315% |
| 住民税 | 4% | 5% |
| 合計(譲渡所得税率) | 14.21% | 20.315% |
※平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%がそれぞれ加算されています。
参照:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
特定の居住用財産の買換え特例
特定の居住用財産(マイホーム)を2023年12月31日までに売却し、代わりのマイホームに買い替えたとき、一定の要件を満たせば譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です。課税を先延ばしにできることで、マイホーム買い替え時に資金負担を減らすことができます。あくまで繰延にできるというだけで非課税になるわけではないので、注意が必要です。
参照:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
不動産売却の費用についてのその他情報
売却費用の相場と地域差について
不動産売却にかかる費用の目安は、売却価格の5%前後といわれています。売却価格に応じて変動しますが、地域によっても売却にかかる費用には差が生じます。特に大都市圏では不動産の価格自体が高いため、必然的に仲介手数料や税金などの負担が大きくなりますし、不動産の価格が比較的安い地方では、売却費用も抑えられる傾向にあります。ただし、エリアによっては、特殊な手続きや調査など地域特有の費用が必要になる場合があるので、それに伴って追加費用が発生することもあるでしょう。
売却費用を計算する際の注意点
不動産売却にかかる費用を計算する際、いくつかの誤りやすいポイントがあります。この章ではよくあるミスについて3つご紹介いたします。注意すべき点を押さえ、損のない売却につなげましょう。
仲介手数料の上限計算ミス
不動産仲介手数料は、法律で定められた上限がありますが、売却価格に応じた段階的な手数料(200万円以下、200万円超400万円以下、400万円超)が誤解されやすく、一律のパーセンテージで計算してしまうミスが起こりがちです。
譲渡所得税の計算での誤り
譲渡所得税は、不動産の売却益に対して課税されます。そのため、税額は単純な売却価格ではなく「譲渡所得」に基づくという点に誤りが生じやすいです。
また、冒頭の章でも記載しましたが、この「譲渡所得」は、売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いたものです。取得費や譲渡費用を過少に見積もってしまうと、実際よりも多くの税金を払うことになります。
取得費を0円と計算するミス
相続で取得した古い不動産などを売却する場合、取得時の価格が不明なことがよくあります。その場合、取得費が分からないからといって0円で計算してしまうと、大幅に譲渡所得が増え、課税額が多くなります。取得費が不明の場合には、原則として「売却価格の5%」を取得費として計算することができますので忘れずに覚えておきましょう。


