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不動産売却の流れと売却準備での注意点
不動産売却では、不動産を売る流れと期間を把握しておくことが重要です。売却までにかかる期間は、一般的に物件の情報収集から不動産の引き渡しが完了するまで平均3ヶ月〜6ヶ月程度と言われています。
ただし、売却にかかる期間は不動産の種類によって異なりますので、この期間はあくまで目安として考えましょう。例えばマンションだと、2ヶ月ほどで売却が完了するケースもあります。一方、一戸建てや土地などの場合は、売却時に境界線がはっきりしていないと測量が必要となるなど、通常よりも時間がかかるケースも少なくありません。
不動産売却の流れは、以下の7ステップで進めていきます。
不動産の売却には、多くの手続きが必要であり、専門的な内容も多いといえます。スムーズな売却を成功させるために、全体像を把握し計画的に進めることが重要です。
この章ではまず「1.売却準備」の注意点をご紹介していきます。
【不動産売却の流れ】
1.売却準備
2.価格査定依頼
3.不動産会社の選定・媒介契約
4.不動産会社の販売活動
5.買主との価格や条件交渉
6.売買契約の締結
- 決済・引渡し
売却準備での注意点
まずは、売却を予定している不動産の状況を正確に把握しましょう。
築年数や、材質、間取り、などからリフォーム歴の有無などまで、さまざまな観点で不動産の状況を把握しておくことで、売却活動の第一歩がスムーズに踏み出せます。
事前に確認する点として、以下のような項目があります。
- 売却前に修繕が必要かどうか
- 電気、水道、ガスなどのライフラインに問題がないかどうか
- 建物の基礎や構造体の状態
- 建物の壁の傷や汚れ、床の状態など、見た目に関する状態
- 土地の用途地域や建築基準法に基づく制限
- 道路や隣地との境界線の確認
これらの点を事前に調べ、整理しておくことで、不動産売却時の不確実性を減らし、より良い条件での売却が期待できます。必要に応じて、不動産会社や建築士などの専門家に相談することも検討しましょう。
住宅ローンの残債を確認
また、不動産売却の際には住宅ローンの残債があるかどうかも重要です。相続でない限り、不動産購入の際には、住宅ローンを契約している方がほとんどです。そのため、不動産の売却前には、まず、住宅ローンの返済がどうなっているか、抵当権が抹消されているかどうかを確認しましょう。住宅ローンの完済が済んでいない不動産の売却は、原則NGとなります。一部の条件に当てはまる場合は考慮される可能性もありますが、基本的には、住宅ローンの返済が完了し、抵当権が抹消されて初めて、不動産の売却が可能になります。
相続登記を確認
売却前には必ず不動産の名義人が誰になっているのか確認しましょう。
親や親族から相続された不動産の場合、故人名義のままでは売却ができません。不動産を相続したら、まず「相続登記」を行い、誰が現在の正式な所有者であるかが明確にしておく必要があります。なお、2024年4月から相続登記は義務化されています。違反した場合には、10万円以下の過料対象となりますので、売却を考えていなくても必ず期限内の登記が必要です。
不動産売却における価格査定の注意点
不動産を売却するためには、不動産会社へ売却の仲介を依頼して買主を探す方法が一般的です。まず、売りに出したい不動産がどのくらいの価格で売れそうか、不動産会社に売却査定を依頼し、相場を把握します。また、査定前には敷地や家の中など不動産の掃除を行ったり、不要なものは処分しておくなど出来るだけきれいな状態にしておきましょう。不動産に関わる図面や書類なども忘れずに準備しておいてください。
査定額は、不動産会社や査定方法などによって異なります。より正確な査定してもらうためには、1社だけでなく複数社に依頼し、査定価格や査定の根拠、不動産会社の対応力などを比較しましょう。
中には、相場よりも高い査定金額を出して、依頼を受けようとする悪質な不動産会社もありますので注意が必要です。基本的に、売却価格は売主が自由に設定することができますが、相場より高すぎる価格で売りに出しても買い手がつきにくく、長い期間売れ残ると不動産の価値を下げてしまうことにもつながりかねません。査定価格だけでなく、査定の根拠についても必ず確認することをおすすめします。
また、不動産会社が直接購入してくれる「買取」もありますが、相場よりも安くなってしまいますので、急いで売りたい場合以外はおすすめしません。
不動産売却における仲介業者選びの注意点
複数の不動産会社に査定をしてもらい、査定が出揃ったらどの会社に売却を依頼するか選定しましょう。不動産会社にも、それぞれ得意不得意があったり、積極的に販売活動をしてくれないなど、不動産会社に問題があって売却が進まないケースというのも存在します。
不動産会社選定のポイントは以下です。
・不動産売却において豊富な実績があるか
・売却活動について幅広いアイディアを持っているか
・的確なアドバイスをしてくれるか
・依頼者(売主)の意向を聞いてくれるか 等
特に、売却する不動産が一戸建てなのかアパートなのかなど、その種類によって購入を検討する主なターゲット層が異なります。例えば、アパートの売却であればアパート経営に関する知識も必要になってくるため、アパートを売却している実績が豊富な不動産会社と担当者を選ぶことが大切です。
不動産売却における土地や物件の注意点
この章では、住宅、土地、事業用不動産それぞれの売却における注意点と、それぞれが持つ特有のリスクについて解説します。
住宅(一戸建て・マンション等)売却の注意点
一戸建て売却の際に注意すべき点は、査定時の建物の状態に注意が必要です。
一戸建てを査定する場合、周辺環境や利便性などが査定項目としてチェックされることはもちろん、建物自体の状態も査定結果に大きく影響します。築年数が古く、劣化が目立つ場合には、査定結果が相場よりも下回る可能性があります。場合によっては建物を解体し、売り土地にした方が良い場合もあるので、築年数の古い一戸建て売却は特に不動産会社と相談しながら売却活動を進めるのが得策です。
また、マンション売却の場合は、同じマンション内の類似した部屋が、同じタイミングで売り出されるケースがあります。この場合、買い手はより安い部屋を選ぶ傾向にありますので、日当たりやリフォーム歴など、類似した部屋と差別化できるポイントを見つけて内覧時などでアピールすることが重要です。
土地売却の注意点
土地売却の際には、境界線に注意が必要です。
特に、古い土地や相続した土地などは境界線がはっきりしていなかったり、曖昧になっているケースが多々あります。土地境界線は、土地の所有権を保護するために重要なもので、境界線が明確に設定されていることで隣接する土地所有者間で紛争が発生することを回避できます。また、境界線がはっきりして初めて正確な査定価格を得ることができます。
法務局で入手できる確定測量図を入手すれば境界線がわかるので、必要に応じてインターネットや窓口から手に入れて確認しておきましょう。
地積測量図とは、土地の測量結果を明らかにした図面で、土地の面積や境界標の位置、形状などが記載されています。土地の所在地に関係なく、どこの法務局でも取得可能で1筆あたり450円です。ただし、地積測量図は必ずしも全ての土地にあるわけではなく、無い土地も存在しますので覚えておいてください。測量図が無い場合、土地家屋調査士に依頼することになりますが、一般的な住宅用地で30~40万円程度かかります。
事業用不動産売却の注意点
アパートなど事業用の不動産売却では、入居者の立ち退きについて注意が必要です。
日本では借地借家法により入居者の権利が強く保護されているため、正当な理由がない限り貸主側からの解約はできないことになっています。賃貸借契約の種類が定期借家契約である場合には、事前に定めた契約期間が過ぎれば解約されますが、一般的な賃貸借契約の場合は、貸主側から解約を申し出るには「正当の事由」が必要です。正当な事由とは、立ち退きを要求するもっともな理由のことで、以下のような理由があげれます。
【正当事由の例】
・建物の使用と必要とする事情があること
・債務不履行などの従前の経過
・老朽化しているなど建物の現況
・建物の明け渡しを条件として財産の給付(立退料の支払い)を行うこと
貸主の都合で入居者に立ち退きを要求する場合は、賃貸契約の契約期間満了の1年前から6カ月前までに勧告し、交渉を始める必要があります。6カ月前を過ぎてから勧告をしても立ち退きを認められない場合がほとんどなのと、「正当事由があれば、必ず立ち退いてもらえる」わけではありませんので、そこを踏まえて交渉にあたりましょう。立ち退きの交渉は、多額の立ち退き料を請求されたり、立ち退きの裁判を起こされたりなど、難航する可能性があります。最終的な立ち退き完了日程から考えて、立ち退き交渉のスケジュールを計画し、トラブルに対する事前対策を練っておきましょう。
不動産売却における書類手続きの注意点
不動産を売却するために必要な書類は多岐に渡ります。特に、相続で名義人が複数いたり、権利関係が複雑な不動産だと、通常取引よりも追加で必要になる書類が出てくる場合がありますので、注意が必要です。
必要書類は、登記事項証明書や図面など、主に不動産に関する情報の詳細がわかるもので、不動産の査定や売却の際には必ず必要になります。不動産売買の際にしか使わないような書類も多いため、必要なものがすべて手元に揃っているケースは少なく、中には取得しなくてはいけない書類が出てくると思っておいた方がいいでしょう。
特に相続で取得した家などは、書類を探すのが大変だったり、取得に時間が掛かってしまうこともありますので、できるだけ早めに準備に取り掛かることをおすすめします。
登記識別情報通知書は再発行できない?
従来の登記済権利証に代わるもので、物件の名義人となった人ごとに定められ、登記名義人にのみ登記所から通知される重要な書類です。
不動産を取得し、名義変更を行った際に法務局から渡されています。万が一紛失してしまった場合に再発行はできませんが、それに代わる手段で本人確認情報を取ることはできます。例えば、司法書士に本人確認情報を作成してもらう場合は、5~10万円程度の費用がかかります。
登記識別情報通知所以外にも、必要な書類がどうしても見つからない場合や取得が困難な場合などは、仲介を依頼する不動産会社へまず相談することが大切です。実績が豊富な不動産会社であれば、必要になる書類を都度教えてくれますし、取得方法についても適切なアドバイスが得られるでしょう。
不動産売却における契約時の注意点
不動産売却では、主に2つの契約が必要になります。売却を依頼する不動産会社との媒介契約と、買主との売買契約です。この章では、それぞれの契約時において注意すべき点をご紹介します。
媒介契約時の注意点
不動産会社の選定をしたら、その会社と媒介契約を結びます。売り出し価格や売却時に不動産会社へ支払う仲介手数料、売却に向けた活動の方針や内容もこの契約を通じて決めます。媒介契約の種類は「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3つに分かれます。1社のみの不動産会社に売却を依頼する場合は「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」、複数の不動産会社に依頼する場合は「一般媒介契約」となります。
不動産売却のための媒介契約としては「専任媒介契約、または専属専任媒介契約」がおすすめです。複数の不動産会社に重ねて依頼ができる「一般媒介契約」には広く広告できるというメリットがありますが、不動産会社からすると買主がどの会社で購入するか不確実なため、仲介手数料が確実に得られるとは限らず、販売活動に力を入れにくいというデメリットがあります。その点、1社の不動産会社のみが取り扱う専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合は、不動産を売却できれば必ず仲介手数料を得ることができるので、積極的に販売活動をしてくれる傾向にあります。
売買契約時の注意点
不動産の売買契約時には、契約不適合責任に注意が必要です。
契約不適合責任とは、売却で引き渡した不動産が契約内容と一致していないと判断された場合に適用される責任です。例えば、「売買契約で定めた面積より実際の面積が小さかった」「土壌汚染されていることが判明した」「心理的瑕疵となる事件や事故があったのに説明を怠っていた」などが契約不適合責任に該当します。このような場合、内容や程度によって損害賠償請求や代金減額請求をされるリスクがあります。
契約不適合責任のリスクを減らすためには、売買契約締結前に契約書の内容を細かく確認することが重要です。売買契約書には売却価格や引き渡し日、買主と取り決めした内容などを詳細に記載することはもちろん、口頭でやりとりし決定した内容も契約書に記載が必要です。契約書の作成は不動産会社が行いますので、完成した契約書を契約締結前に必ず隅々まで目を通し、不明な点があれば必ず不動産会社へ確認しましょう。
不動産売却におけるよくあるトラブル
共有不動産を売却する際の注意点
1つの不動産を夫婦や兄弟同士などの複数人で所有している場合、売却時には名義人全員の同意が必要になります。名義人の中に、一人でも売却に同意しない人がいると、その不動産は売却することができません。
また、全員分の同意が得られたとしても、売却時に必要になる身分証明書や印鑑証明書などの書類や署名・押印も名義人全員分が必要になります。そのため、共有不動産の売却には、余裕を持ったスケジュールで売却を計画しなくてはいけません。しかし、相続等で名義人の人数が多い場合には、遠方に住んでいる名義人がいたり、入院中の名義人がいたりなど様々な事情で、名義人全員が集まって売却手続きを進めることが難しい場合も少なくないでしょう。その場合は、委任状を作成して代理人をたて、売却を進めることになります。このように共有名義の不動産売却は、複雑になりがちで専門知識も多く必要になるため、不動産会社や弁護士など専門家に相談しながら進めるのがおすすめです。
不動産売却の翌年に確定申告が必要
会社員や公務員、パートやアルバイトなどの給与所得者であっても、不動産所得が年間20万円以上ある場合には確定申告が必要になります。会社員などの場合は、会社で年末調整を行うため確定申告は不要だと思ってしまいがちですが、会社で申告してもらえるのは、給与所得に課税される所得税のみです。そのため、不動産所得にかかる所得税の申告はご自身で行う必要があるのです。
たとえ不動産所得が赤字であったとしても、その赤字分を他の所得(給与所得など)の黒字と相殺する「損益通算」が可能です。この場合、不動産所得の赤字分で、課税対象となる所得金額を少なくすることができるため、確定申告を行うことで節税につながる可能性があります。例えば、給与所得が1,000万円の場合で、不動産所得がマイナス200万円の赤字だったとすると、課税対象となる所得は800万円となるため、納税額を減らすことができます。


