不動産売却の流れと早期売却のコツ
不動産売却の流れ
不動産の売却には、多くの手続きを行う必要があります。スムーズな売却を成功させるためには、全体の流れを把握し、計画的に進めることが重要です。
不動産の売却は、次の6つのステップで進めていきます。
価格査定依頼
不動産の売却は、不動産会社へ仲介を依頼して買主を探す方法が一般的です。まず、所有する不動産がどのくらいの価格で売れそうか、不動産会社の査定を受けましょう。
査定額は、不動産会社や査定方法によって異なるため、より正確な査定してもらうためには、1社だけでなく複数社に依頼し、査定価格や査定の根拠を比較することが大切です。査定してもらうことで相場価格を把握できるほか、不動産会社の対応力なども見極めることができます。
中には、相場よりも高い査定金額を出して、依頼を受けようとする悪質な不動産会社もあるため、査定価格だけでなく査定の根拠についても必ず確認しましょう。
また、不動産会社が直接購入してくれる「買取」もありますが、相場よりも安くなってしまいますので、急いで売りたい場合以外はおすすめしません。
不動産会社の選定・媒介契約
複数の不動産会社に査定をしてもらい、査定が出揃ったらどの会社に売却を依頼するか選定します。不動産会社にも、それぞれ得意不得意があったり、積極的に販売活動をしてくれないなど、不動産会社に問題があって売却が進まないケースというのも存在します。
選定の際のポイントは下記です。
・不動産売却において豊富な実績があるか
・売却活動について幅広いアイディアを持っているか
・的確なアドバイスをしてくれるか
・依頼者(売主)の意向を聞いてくれるか 等
特に、売却する不動産が一戸建てなのかアパートなのかなど、その種類によって購入を検討する主なターゲット層が異なります。例えば、アパートの売却であればアパート経営に関する知識も必要になってくるため、アパートを売却している実績が豊富な不動産会社と担当者を選ぶことが大切です。
不動産会社との媒介契約締結
不動産会社の選定をしたら、その会社と媒介契約を結びます。売り出し価格や売却時に不動産会社へ支払う仲介手数料、売却に向けた活動の方針や内容もこの契約を通じて決めます。
媒介契約の種類は「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3つに分かれます。1社のみの不動産会社に売却を依頼する場合は「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」、複数の不動産会社に依頼する場合は「一般媒介契約」となります。
不動産売却のための媒介契約としては「専任媒介契約、または専属専任媒介契約」がおすすめです。複数の不動産会社に重ねて依頼ができる「一般媒介契約」には広く広告できるというメリットがありますが、不動産会社からすると買主がどの会社で購入するか不確実なため、仲介手数料が確実に得られるとは限らず、販売活動に力を入れにくいというデメリットがあります。その点、1社の不動産会社のみが取り扱う専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合は、不動産を売却できれば必ず仲介手数料を得ることができるので、積極的に販売活動をしてくれる傾向にあります。
それぞれにルールや特徴がありますので、下記の表でご確認ください。
専属専任媒介 | 専任媒介 | 一般媒介 | |
複数の不動産会社と契約できるか
|
×
できない |
×
できない |
○
できる |
自身で買主を探して直接契約できるか | ×
できない |
○
できる |
○
できる |
不動産会社からの業務処理状況の報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 義務なし
(報告を求めることは可能) |
媒介契約の有効期間
|
3か月以内 | 3か月以内 | 制限なし
(行政指導は3か月以内) |
不動産情報ネットワークシステム「レインズ」への登録義務 | 契約締結の日から
5日以内 |
契約締結の日から
7日以内 |
義務なし
(任意での登録は可能) |
不動産会社の販売活動
媒介契約を締結したら、不動産会社と相談のうえ売り出し価格を決め、物件を不動産情報サイトに掲載するなどの売却活動に進みます。不動産の情報が開示されるため、購入検討者の内覧にも対応することになります。不動産会社に不動産の鍵を渡し、アピールポイントなどを伝えて内覧の対応を任せても問題ありません。
売却する不動産の種類にもよりますが、買主候補は不動産のプロではない一般の方の場合も多いので、事前に掃除をするなど準備をしておきましょう。
買主候補が購入を希望する場合は、「買付証明書(購入申込書)」が提出されます。その際に、販売価格よりも低い価格で買付証明書が提出されるなど、価格交渉や条件交渉になることもあります。その場合、買主候補の反応を教えてもらったり、不動産会社のアドバイスを受けながら、売却するかどうかの判断をしましょう。
購入検討者の内覧があっても決まらなかった場合は、不動産会社に理由を確認し、次の内覧までに対策しておくとよいでしょう。
買主との売買契約締結
売主と買主候補の間で価格や引き渡し時期などの条件に合意をしたら、不動産売買契約を締結します。売買契約は、一般的に売主・買主・それぞれの担当不動産会社が集まって行い、重要事項説明書などの読み合わせ、署名捺印を行います。売買契約が成立すると、買主から手付金を受け取り、売主は引き渡しの準備を始めることになります。買主がローンを利用して購入する場合、審査が通らなかったなどの理由で契約が白紙になる可能性があり、その際は手付金を返却する必要があるので、まだ使わないように注意してください。
不動産会社からも事前に通知されますが、売主として用意する書類は下記の通りです。
・身分証明書
・印鑑登録証明書
・登記識別情報通知
・収入印紙
・固定資産税評価証明書(引き渡し時期により)
売却する不動産に住宅ローンの返済残高がある場合は、売買契約で確定した「引渡し日」を銀行に連絡します。引き渡し日には、住宅ローン返済と同時に抵当権抹消の手続きが必要になるので、事前に必要書類などの確認をしておいた方がよいでしょう。また、引渡し日に向けて水道光熱費など契約の解除が必要なものがあれば手続きが必要です。
決済・引渡し
売買契約後の決済とは、「残代金の授受」と「不動産の引渡し」を行うもので、買主が住宅ローンを借り入れる金融機関等にて、買主・売主・不動産会社・司法書士などが集まって行うのが一般的 です。具体的には、買主から手付金以外の残代金を受領し、固定資産税や管理費等の清算を行うと同時に、売主から買主へ不動産の所有権移転登記の手続きや鍵の引渡しをします。ここでは、不動産会社への仲介手数料と司法書士への報酬の支払いも済ませることになります。
決済当日中に司法書士が登記申請手続きを行い、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)に売買の記載がされます。また上記でも説明しましたが、ローン残高がある場合は返済と同時に抵当権抹消を行うことで、不動産売却は終了です。
売却する不動産がアパートなどの賃貸物件である場合には、入居者の取り扱いに注意が必要です。のちのちトラブルにならないよう事前に不動産会社と相談して決めておきましょう。
成功事例から学ぶ早期売却のコツ
早期売却を実現した成功事例から、早期売却のための方法やコツを学ぶことができます。
例えば、売却が長引く傾向にある築年数の古い不動産でも、相場より安い価格設定で売り出したことで、買い手が「古くても安く買えるなら」と考え購入につながった成功事例があります。
また、不動産取引が活発な引っ越しシーズンを狙って売りに出すというのも1つの成功事例です。子供の進学や仕事の転勤時期などライフスタイルに変化が起きる1月〜3月、9月〜10月頃は、不動産購入の需要が高く、高値でも買い手が現れる可能性が高くなります。ただし、1月や9月など売れる時期に売却をスタートすれば良いわけではありません。9月に売却するためには、6〜7月頃から査定を始めて不動産会社を選定し、8月頃から売り出しというのがスムーズな流れです。
ここで注意が必要なのは、上記の時期以外に売却を決めた場合には、あえてこの時期を待つ必要はないということです。待つことで逆に早期売却の機会を失うことになりかねませんので、タイミングが合えば不動産会社に相談の上検討しましょう。
早期売却を実現するためのポイント
早期売却には売り出し価格の設定が重要
どの不動産にも共通して言えるのは、売り出し価格の設定が早期売却につながる大きな要素の1つであるということです。売却を考えたとき、少しでも高く売りたいと価格にこだわるのは、売り手として当然の心理だと思います。しかし、始めからあまりにも相場からかけ離れた高い価格設定にしてしまうと、売れるタイミングを逃してしまい、結局年月が経って大きな損失につながってしまったなどの事態に陥りかねません。
売却する不動産の状態や価値を知り、相場に合った価格、もしくは相場より手頃な価格で設定すると買い手が見つかりやすくなるケースもあります。売り出し価格が不動産の状態や価値に見合っているか、市場の相場から考えてどうかなど、ノウハウをもった不動産会社と相談しながら、適正な価格に設定することが重要です。
売却期間を短縮するための対策
売却期間を短縮するための対策はいくつか存在します。ここでは、不動産情報サイトの活用方法や内覧対策、ホームステージングなど、実践的な例をご紹介しますので、ぜひご参照ください。
不動産情報サイトの活用方法
買い手の多くは、まずインターネットで希望のエリアや不動産の種類などを検索し、物件探しをしています。そこで気になる物件をいくつか見つけて比較検討し、問い合わせや内覧申込をするのが一般的な流れです。つまり、買い手側はインターネット上にある物件情報だけで不動産の良し悪しを検討しているということです。
そのため、インターネットに掲載されている不動産の写真があまり良く見えない、掲載されている情報が足りない場合などは、問い合わせや内覧申し込みに至りにくいです。
不動産情報サイトに掲載をする写真は、買い手にとって魅力的に写りそうなものを用意することが大切です。
内覧対策
内覧前には、掃除はもちろん、室内が広く見えるように不用品を処分したり、収納内もできるだけ見せられるように整理しておきましょう。また住んでいる人からすると、室内のにおいは意外と気付かないポイントです。クッションやカーテンなどの布製品はできるだけ洗濯したり、洗濯が難しいものは消臭スプレーを使う、玄関やトイレには消臭剤を置く、まめに窓を開けて換気するなどの対策が必要です。特にペットを飼っている場合やたばこを吸う人がいる場合は、念入りに行うとよいでしょう。
ハウスクリーニング
水回りは、特に内覧者の印象を左右する重要なポイントです。たとえ、内覧者が購入後に水回りのリフォームを検討していたとしても、水回りが汚れていることで全体の印象に悪影響が出ますので、購入につながりにくくなってしまいます。
「自身で掃除しても汚れがなかなか落ちない」「忙しくてしっかり掃除の時間を取れない」などの場合は、プロのハウスクリーニングを検討してみましょう。
ホームステージング
ホームステージングとは、モデルルームのように部屋を演出してくれるサービスです。内覧者の第一印象をぐんと良くしてくれます。ホームステージングがさかんな欧米では、ホームステージングを行うと、行わない物件に比べて6%以上高く売れるというデータがあるほどです。家具や照明、小物やグリーンなどのインテリアコーディネートはもちろん、荷物を一時的に預かってくれるサービスなどいろいろなプランがあるので、興味があれば一度相談してみるとよいでしょう。
不動産売却にかかる平均期間
不動産売却の平均期間とその内訳
不動産売却の流れについては冒頭の章にて解説しましたが、不動産の売り出しから売買契約が完了するまでにかかる期間は、過去の成約例を平均すると3~6か月程度となっています。
さらに、売却する不動産の種類にもよりますが、査定や媒介契約など売り出しまでの事前準備に2週間〜1ヶ月程度、売買契約から引き渡しまでは1〜2ヶ月程度かかるのが一般的なので、前後のプロセスも踏まえた上で計画することが大切です。
【不動産売却期間の目安】
・価格査定と媒介契約締結:2週間〜1ヶ月
・販売活動から売買契約締結:3〜6ヶ月
・売買契約から引き渡し:1〜2ヶ月
査定から売買契約、引き渡しまでの全体にかかる期間は、スムーズに進んで半年程度が目安です。しかし、売却にかかる期間は、不動産の状態や築年数・エリア等によって「売れやすさ」が異なるため、上記はあくまで目安であり、一概には言えないというのが正直なところです。
築年数が古い不動産や人気のないエリアに位置しているような不動産だと、売却完了まで1〜2年かかるケースも少なくありません。特に、子供の入学や転勤などで引っ越し時期が決まっている場合は、余裕を持って査定を始める必要があります。
また、価格査定には売却する不動産に関わる書類が必要になります。登記事項証明書や図面など、主に不動産に関する物件情報の詳細がわかるもので、査定や売却の際には必須です。特に、相続で取得した不動産などは、書類を探すのが大変だったり、取得に時間が掛かってしまうこともありますので、できるだけ早めに準備に取り掛かることをおすすめします。
不動産売却が長引く原因とその対策
売却が長引く不動産の特徴と対策
売却期間が長引く不動産には、価格設定や立地条件などいくつか特徴があります。
この章では、売却が長引く不動産の特徴として多く見られる5つのポイントについて、その対策を踏まえながら1つずつ解説していきます
①価格が相場に合っていない
先ほども記述しましたが、不動産の販売価格が相場より高いと売却が長引く傾向にあります。特に、今はインターネット検索で物件探しをする買い手がほとんどなので、検索した際に他の物件と比較され、相場よりも価格が高いのはすぐに分かってしまいますし、価格が高いことに納得のいく理由がなければ、すぐに候補から外されてしまいます。
高い価格設定で売りに出した後で、価格を下げる場合も買い手に「売れないから値下げしたのかな」などのネガティブな印象を与えてしまうかもしれません。
売却価格は、不動産会社に相談しながら慎重に設定しましょう。
②人気のない立地である
交通アクセスが不便な立地にある場合、買い手が見つかりにくく、売却期間が長引く可能性があります。特に都心部から離れた地方や田舎の場合は、コンビニやスーパーなどの商業施設も少なく、人気のない立地であるといえます。
立地を変えることは不可能なので、こちらも地域相場に合った価格設定になっているかがポイントです。便利な立地でなくても、相場に合った価格設定であれば買い手が見つかる場合もあります。
③不動産自体に問題がある
不動産(建物)の状態やその敷地自体に何か問題があると、買い手側が購入を躊躇する原因になり売れにくくなります。中でも、建物が古すぎて売れないというのは、不動産が売れない理由で最も多いといえます。
・築年数が古く、躯体や屋根に損傷がある
・キッチンやトイレなど水回りの設備が古い
・近隣トラブルなど周辺環境に問題がある
価格との兼ね合いにもよりますが、一般的に上記に該当する項目があると売れない理由になりますので、補修工事やリフォーム等を検討したり、建物を解体して更地として売却する方法も検討すると良いでしょう。
また古い家の場合、旧建築基準法で建てられた建物であることが多く、現在の建築基準法だと建物を解体しても新しい家が建てられない土地になっている場合があります。
この場合、家が古く住めない状況だとすると売却は困難です。家を建てる以外にも、駐車場や資材置き場として販売することもできますので、他の活用法で売却を考えましょう。
④内覧時の対応が悪い
不動産の価格設定に問題がなく、内覧の申し込みがあってもなかなか売却につながらないというケースがあります。その場合、内覧時の準備や対応が悪いなどの原因が考えられます。買い手側は、間取りや広さについては物件資料等で内覧をしなくても確認が取れますので、内覧では主に部屋の雰囲気や劣化具合を見たり、物件資料と相違がないかなどを確認しようとする方が多いです。
室内にゴミが散乱していたり、整理整頓や掃除が行き届いていないなどが原因で、不動産の印象を落としてしまう可能性がありますので、できるだけ室内を明るく・広く・清潔に見せることがポイントです。
不動産会社に問題がある
不動産会社にも得意不得意があったり、積極的に販売活動をしてくれていないなど、不動産会社に問題があって売却が長引いてしまうケースも存在します。
売却を依頼している不動産が不動産情報サイト等にきちんと登録されているか、担当者はこまめに活動報告をしてくれているか等、まずは確認しましょう。相談や指摘をしても状況が改善されない場合は、不動産会社の変更を検討しましょう。