不動産を売却すると、金額によって3種類の税金が発生します。
納税額は売却益に応じて高くなりますが、条件によっては節税することも可能です。
ただし、節税には税金の知識はもちろん、特例や控除についての知識も必要です。
そこで今回は、不動産売却後に発生する税金の詳細と、節税・納税方法についてくわしく紹介します。
不動産売却に関わる税金について理解し、損をしないコツを学びましょう。
不動産売却時にかかる税金とは
譲渡所得税の概要
譲渡所得税とは、不動産などを売却して利益が出た際に納める税金のことです。
得た利益を「譲渡所得」といい、譲渡所得にかかる税金を「譲渡所得税」といいます。
譲渡所得税は、以下の3つをまとめた税金のことです。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税(2037年12月31日まで)
売却して得た利益が大きいほど、譲渡所得税の額も大きくなります。
「特別控除」を使えば譲渡所得税を納めなくていい場合もありますが、基本的には利益が出たら納税が必要なことを覚えておきましょう。
譲渡所得税の税率と内訳
譲渡所得税に含まれる3つの税金「所得税」「住民税」「復興所得税」は、どのように算出されるのでしょうか。
ここではそれぞれの税率を見ていきましょう。
所得税と住民税は、不動産の所有期間によって異なります。
売却した不動産の所有期間が5年以下の場合、その所得を「短期譲渡所得」と呼びます。
一方、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」です。
所有期間は不動産の購入日から売却日までの日数ではなく、1月1日を基準に計算されます。
例えば2024年に不動産を売った場合、「長期譲渡所得」となるのは2018年12月31日より前に取得したものです。
2019年1月1日以後であれば「短期譲渡所得」となります。
所得税と住民税は、短期譲渡所得か長期譲渡所得かによって以下のように異なります。
| 所得税 | 住民税 | |
| 短期譲渡所得(5年以下) | 30% | 9% |
| 長期譲渡所得(5年超) | 15% | 5% |
最後に「復興特別所得税」とは、東日本大震災の復興のために2013年に創設された税金です。
短期譲渡所得税・長期譲渡所得税のどちらにも、基準所得額に対し2.1%かかります。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税を知るためには、まず基準となる「譲渡所得」を算出する必要があります。
譲渡所得は、以下の式で計算できます。
課税譲渡所得金額 = 譲渡価格 – (取得費 + 譲渡費用)
算出するために必要な「取得費」と「譲渡価格」について、詳しく説明していきます。
購入金額(取得費)とは
購入金額のことを「取得費」といいます。
取得費は不動産を購入する際にかかった費用のことで、購入代金や仲介手数料を含めた合計額です。
以下は取得費に含まれる費用の一例です。
- 不動産を購入したときに納めた登録免許税・不動産取得税・印紙税
- 借主に支払った立退料
- 土地の取得する際に支払った土地の測量費
売却する不動産が建物の場合は、購入代金から減価償却費相当額を差し引きます。
住宅用として使っていた建物の減価償却費は、以下の計算式で算出できます。
建物の取得価格 × 0.9 × 償却率 × 経年年数 = 減価償却費相当額
償却率は売却した建物の構造によって異なります。
建物の取得費に関しての詳細は国税庁のこちらのページをご確認ください。
先祖代々相続している不動産や購入金額が分からない不動産は、売却価格の約5%を取得費とみなします。
実際の取得費が5%に満たない場合、売却価格の約5%を取得費とすることも可能です。
売却金額(譲渡価格)とは
売却金額のことを「譲渡価格」といいます。
売却した際に得た金額のことで、以下の3つの総称です。
- 取得費:購入する際にかかった費用
- 譲渡費用:売却するためにかかった費用
- 特別控除額:一定の条件下で適用できる控除
(マイホーム売却に適用できる「3,000万円の特別控除」など)
譲渡費用には、売却のためにかかった諸費用を含みます。
以下は譲渡費用の一例です。詳しくは国税庁のこちらのページをご覧ください。
- 売却のためにかかった仲介手数料
- 印紙税
- 貸家を売るために支払った立退料
譲渡所得を知るためには、売却金額から諸費用を差し引いた「譲渡価格」を計算する必要があります。
課税譲渡所得の計算式は以下の通りです。
課税譲渡所得金額 = 譲渡価格 – (取得費 + 譲渡費用)
不動産の売却で得た金額が、そのまま課税対象になるわけではないので注意してください。
税金を抑えるための控除と特例
不動産売却において節税をしたいなら、控除について知っておきましょう。
一定の条件はありますが、ここで紹介する控除は節税でとても大きな効果がある手段です。
しっかり条件を確認して有効活用してください。
3,000万円の特別控除
一定の条件を満たせば、3000万円の特別控除を受けられます。
マイホームの売却益が高かった人には、ぜひ使ってほしい控除です。
3,000万円の特別控除の適用条件
居住用財産(マイホーム)を売った譲渡益が3,000万円以上ある場合、「3,000万円の特別控除」が受けられます。
控除の対象となるためには、基本的に以下の条件があります。
- 自分が住んでいる家屋を売却した
- 売却した年・前年・前年々に「3,000万円の特別控除」や他の特例を受けていない
- 売り手と買い手は親子・夫婦などの特別な関係ではない
ただし、住まなくなった家屋を売却しても「3,000万円の特別控除」を適用できるケースがあります。
その場合、以下の2点に当てはまっている必要があります。
- その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
以下のような不動産は、この特別控除は適用できません。
- 売った家屋が居住用ではない(別荘など)
- 一時的な住まいとして入居していた
- 「3,000万円の特別控除」を得ることが目的で入居していた
3,000万円の特別控除の例
この3000万円の特別控除は、実際にどれくらい節税効果があるのでしょうか。
「譲渡所得」が4,000万円だった場合の事例を見てみましょう。
「3,000万円の特例」を使わない場合 → 譲渡所得税 812万6,000円
所得税:4,000万円 × 15% = 600万円
住民税:4,000万円 × 5% = 200万円
復興特別所得税:600万円(所得税)× 2.1% = 12万6,000円
600万円 + 200万円 + 12万6,000円 = 812万6,000円
「3,000万円の特別控除」を使った場合 → 譲渡所得税 201万1,500円
4,000万円 – 3,000万円 = 1,000万円
所得税:1,000万円 × 15% = 150万円
住民税:1,000万円 × 5% = 50万円
復興特別所得税:150万円(所得税)× 2.1% = 3万1,500円
150万円 + 50万円 + 3万1,500円 = 203万1,500円
このように「3,000万円の特別控除」を使うだけで、609万4,500円も節税ができるのです。
同じ不動産を売却しても、この控除を知っているか知らないかで支払う税金はここまで変わります。
まずはあなたの不動産が条件に当てはまるかを実際に確認してください。
取得費加算の特例
特別控除の他に「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」で税金が優遇されるケースもあります。
不動産などの財産を一定期間内に譲渡した場合、相続税のうち一定の金額を譲渡資産の取得費に加えることができます。
適用条件は以下の3つです。
- 相続や遺贈により財産を取得した本人である
- 財産を取得した人に相続税が課税されている
- 財産が、相続が開始された日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡されている
取得費を増やすことができれば、課税対象となる金額が減るため節税につながります。
所有期間10年超のマイホーム売却時の税金軽減措置
冒頭で不動産所得は所有期間に応じて「短期譲渡所得」か「長期譲渡所得」に分かれるとお伝えしました。
しかし、所有期間が10年を超えている場合は、ここから2つに分類され、特例を適用することができます。
このように10年以上所有した居住用財産を売却した時に使えるのが、「軽減税率の特例」です。
「3,000万円の特例」を差し引いた譲渡所得から、所得税と住民税を以下の税率で算出します。
| 課税長期譲渡所得金額 | 所得税 | 住民税 |
| 6,000万円までの部分 | 10% | 4% |
| 6,000万円を超える部分 | 15% | 5% |
譲渡損失が出た場合の特例
不動産売却では、生じた損失を「譲渡損失」といいます。
所有期間が5年以上のマイホームを手放して譲渡損失がある場合、以下のどちらかの特例を使えば繰越控除ができるのです。
- 新たにマイホームを買い替える場合の特例
- 新たにマイホームを買い替えない場合の特例
これを使えば、売却した年の翌年以後3年内の各年分の所得から繰越控除ができます。
「新たにマイホームを買い替える場合の特例」は、不動産を売却した年の前年~翌年までの3年間の間に新居を取得した場合に適用できます。
「新たにマイホームを買い替えない場合の特例」は、売却する不動産の住宅ローンの支払いが、譲渡契約締結日の前日まで終えていない等の条件があります。
この特例は、売却した年だけでなく、その数年のプランや税金にも影響を与えます。
売却が終わった後も頭の隅で覚えておきましょう。
譲渡所得税の納付方法
所得税の納付時期と納付方法
譲渡所得税は「分離課税」のひとつで、給与所得などの所得と分けて算出します。
所得税と復興特別所得税は、不動産を売却した年の翌年の確定申告で支払います。
確定申告の申告期間は2月16日から3月15日です。
所得税と住民税は、以下の方法で納付できます。
- 振替納税
- 電子納税(e-Taxによる口座振替、インターネットバンキング等からの納付)
- クレジットカード納付
- コンビニ納付(QRコード)
- スマホアプリ納付(Pay払い)
- 金融機関や税務署の窓口納付
コンビニ納付・スマホアプリ納付は納付できる金額が30万円以下です。納付額が高額の場合は使用できません。
税務署または指定された金融機関に納付する場合は、納付書とともに現金で納めます。
納付書については国税庁のこちらのページからご確認ください。
振替納税は、納税者名義の預貯金口座から口座引き落としで納付します。
住民税の納付時期と納付方法
譲渡所得税に含まれる住民税は、不動産を売却した年の翌年に、所得税・復興特別所得税と異なる時期に支払います。
所得税・復興特別所得税の確定申告書を提出した場合は、住民税申告書の提出は不要です。
住民税の納税額は、確定申告書で決定されます。
納税額が記載された納付書がその年の5月以降に届くため、住民税の支払いは6月頃である点にご注意ください。
不動産売却による住民税は、一括または4期分割で納付します。
一括の場合は納付期限が6月末ですが、4期分割の場合は4回それぞれに支払期限が決められています。
支払いタイミングが異なるため、税金支払いのスケジュールもしっかり把握しておきましょう。
まとめ
不動産売却で得た利益を「譲渡所得」といい、基本的に確定申告が必要です。
譲渡所得にかかる税金は所得税・住民税・復興特別所得税の3つがあります。
一定の条件下で適用できる控除や特例があり、活用すれば大きく節税できます。
申請が必要であったり、一定の条件があるため、まずは控除・特例の条件を確認することから始めましょう。
所得税と復興特別所得税は同時に納付しますが、住民税の支払いは約3ヶ月後となっています。
期間がずれることに注意してください。


