離婚を考えたとき、購入したマイホームの問題が挙がります。
婚約後に購入した家は、夫婦共同の財産であり、離婚の際に財産分与する対象です。
今回の記事では、離婚時に行う「財産分与」についてわかりやすく紹介します。
家を売却する場合・家を売却しない場合の財産分与の方法、財産分与の際の注意事項を知っておきましょう。
家を手放した後にどうすべきか、新たな住居にどのような選択肢があるか、そして子どもの親権についても総合的に解説していきます。
離婚時の家の売却と財産分与の基本
一般的には、離婚をすると家を売却することが多いです。
離婚すると財産を2人で分配する「財産分与」をする必要がありますが、家は物理的に分割できないため、売却した金額を平等に分けるケースがよくあります。
財産分与とは「離婚した者が一方の他方に対して財産分与を請求することができる制度」です(法務省)。離婚から2年の制限があり、2年を超えると申し立てができなくなります。
離婚と家の売却
離婚と家の売却は、どちらを先に行うかによって制度が変わってきます。
例えば、家の売却→離婚という順序であれば「財産分与」になります。
一方、家を出る(家という財産を片方に受け渡す)→離婚の順序では、財産分与ではなく「贈与」という形になります。
これは贈与税の対象となり、家を出て行った側は売却価格を受け取れなくなる可能性があるのです。
また、税金面でも「分与」と「贈与」では取り扱いが異なります。
財産分与で得た現金は非課税のため、税金がかかりません。一方、贈与税は家の売却額によって異なり、50%近くになる可能性もあります。
贈与の対象となる合計額から、基礎控除額の110万円を引いた価格に税金がかかります。
以下の表は、夫婦間で使用する「一般贈与財産用」の贈与税の算出方法です。
詳しい内容は国税庁のサイトをご覧ください。
| 贈与の対象額 – 110万円(基礎控除) | 税率 |
| 200万円以下 | 10% |
| 300万円以下 | 15% |
| 400万円以下 | 20% |
| 600万円以下 | 30% |
| 1,000万円以下 | 40% |
| 1,500万円以下 | 45% |
| 3,000万円以下 | 50% |
| 3,000万円超 | 55% |
ただし、家の所有を「共有名義」にしている場合、離婚前に売却しても贈与税が発生しません。
ペアローン等を組んでいる場合は「共有名義」となっているため、売却前に住宅ローンは名義の確認をしましょう。
財産分与の基本原則
財産分与は、基本的には夫婦で半分ずつ分ける原則があります。
これは財産分与の制度には、以下の考えがあるためです。
- 夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配
- 離婚後の生活保障
- 離婚の原因を作ったことへの損害賠償
実際の財産の額は、夫婦間の話し合いによって決定されます。
もし話し合いが困難な場合は、家庭裁判所の裁判で分与額を決定します。
夫婦のどちらかが専業主婦・主夫で収入が無い場合であっても、2分の1の分与が原則です。
財産の形成する際の貢献度は同じ割合であり、どちらか一方によるものではないと考えられています。
家を売却しない場合の財産分与
「離婚しても家は売却しない」という選択をした場合、夫婦のどちらかが家に住むことになります。
その場合、家から出た側(家という財産を使わなくなる側)は、家と同等の現金を受け取ります。
家の不動産価値が高く現金にすることが難しい場合は、他の財産による分与で埋め合わせることもあります。
ここで重要になる、家の不動産価値は話し合いで決定します。
固定資産税の評価額や家査定シミュレーションの結果を参考に、不動産業者の訪問査定なども活用しながら、不動産の価値を決定します。
住宅ローンを組んでいる場合は、その支払いについても話し合いましょう。
夫婦のどちらかが連帯保証人になっていると、家の名義人が支払いを滞らせた場合に連帯保証人に支払いが請求されます。話し合いながら連帯保証人から外れる手続きが必要です。
共同名義になっている場合は、必ず単独名義への変更手続きをしてください。
共同名義の場合、片方が家に住んでいない状態は契約違反となってしまいます。
家の売却と財産分与の流れ
家を売却する際、まずは家の名義やローンの状況を確認してください。
家を売却できるのは名義人だけです。名義人には「単独所有」、「共有所有」、「単独所有かつ配偶者が連帯保証人」という3つのパターンがあるため、まず自分たちが何に当てはまるか確認しましょう。
次に家の売却を行います。家の売却には、4つの方法があります。
- 不動産業者による売却
- 不動産業者による買取
- 任意売却
- リースバック
家を売却できたら、夫婦双方の財産の総額を確認します。
財産とは現金や預金だけでなく、自動車や家具などの価値があるものすべてを含みます。
一方、婚姻前に形成していた財産は「特有財産」といい分与に含まれないため、婚姻前の財産がある場合はしっかり確認してください。
夫婦の財産を合計し、話し合いによって決定した割合で分配します。分配する財産の額に満たない側に、財産の額が多い側が支払います。
最後に、それまでの話し合いをもとに「離婚協議書」を作成します。
離婚協議書とは契約書のことで、離婚に関する決定や誓いなどの内容を書いた文書です。
作成の義務はありませんが、離婚によって将来起こり得る問題を未然に防ぐための書面です。
この離婚協議書を公正証書にすることで、より法的に効果のある文書にすることもできます。
離婚と子どもの住まい
親の離婚を経験した子どもは、毎年20万人に及ぶとされます。
最終的な「離婚」という決断を含め、離婚前後の夫婦関係は子どもにとって大きなストレスです。
子どもの負担を減らすために、家は売却せずに片親が子どもと一緒にそのまま住み続ける方法もあります。その場合、子どもは親権者と住むことが一般的であるため、親権者は財産分与で家をもらうケースが多いです。
子どもの住まいの選択
両親が離婚すると、子どもは親権を持つ片親と住むことになります。
多くの場合、以下の3つの選択肢があります。
- そのまま家に住む
- 新しい住居へ引っ越す
- 実家に戻る
住居を変えずそのまま家に住めば、学校の変更手続きは不要です。
生活環境も変わらないため、子どもにとっての負担は大きく減るでしょう。
新しい住居へ引っ越す場合、新たに学校を探す必要があります。
学校と家が変わることで、子どもへの影響は大きい可能性が高いです。
一方、環境が変わったことでリフレッシュできる可能性もあり、生活環境の変化が子どもに良い影響を与えるケースもあります。
そして、実家に戻る選択肢もあります。
子どもが実家に馴染んでいる場合は、子どもも安心して過ごせるでしょう。
学校や居住地が変わると環境の変化はありますが、家庭内は比較的馴染んだ場所で過ごせます。
子どもの住まいと親権
親権とは、「子どもの利益のために、監護・教育を行ったり、この財産を管理したりする権限であり義務である」(法務省)とする権利です。
婚姻中は、子どもの親権を持っているのは夫婦の双方です。
現状では、離婚すると父母のどちらか一方しか親権を持てません。
(現在、政府が共同親権に取り組んでおり、早ければ2026年に共同親権の選択肢ができるかもしれません。)
親権を持つ「親権者」は、父母の話し合いで決まります。
協議が困難な場合は家庭裁判所による裁判が必要になります。
子どもの住まいを決定できるのは親権者で、一般的には親権者と子どもが同じ家に住みます。
原則として、親権者の都合だけで子どもの住まいを決めることはできません。
しかし例外として、子どもが離婚相手から精神的または身体的暴力等を受ける危険性が高い場合は「子どもを会わせないために転居する」ことも認められます。
離婚時の家の売却の注意点
家の売却のタイミングは斥候期間である「離婚後2年間」内です。
2年を過ぎると贈与税等が発生します。家を売却する際の注意点は、ローンや名義人についてです。
家の売却で問題が発生しないように、夫婦間で話し合った内容は書面に残しておきましょう。
書面は公正証書にすることで、法的に証明力のある文書になります。
離婚に伴う家の売却時の注意点
売却時に注意する点は2つあります。
1つ目は、住宅ローンと売却価格のバランスです。
住宅ローン残債が売却額よりも多いと「オーバーローン」といわれ、ローンを完済できません。「アンダーローン」は売却額が住宅ローン残債よりも少ないことで、売却によってローンを完済できます。
オーバーローンの家を手放すには、自分の手元にある資金で返済するか、任意売却を行うことになります。任意売却には条件があるため、当てはまるかを確認しましょう。
任意売却を行った場合、金融機関の信用情報に記録されます。カードが発行できない、融資が得られない等の問題が起こる可能性が高くなります。
2つ目は、家が共有財産か特有財産のどちらであるかです。
婚姻前に片方が所有していた家は、夫婦の共有財産ではありません。財産分与の対象外となります。
売却後の住居確保
家を売却した後は、新たに住居を確保する必要があります。
住居には以下の選択肢があります。
- 実家
- 社宅
- 賃貸
- 公営住宅
家族との関係が悪くない場合は、賃料も気にならない実家に住むという選択肢があります。
勤めている会社に社宅がある場合は、社宅も候補になります。離婚後に一時的に実家に戻り、社宅がある会社に転職する人もいます。
十分な収入がある場合は、賃貸を借りることも可能です。収入額に不安がある際は、できるだけ家賃や敷金礼金を抑えられる賃貸住宅を探しましょう。
公営住宅とは、国と地方公共団体が低所得者に対して提供する住宅のことです。ただし、入居には条件があるため必ずしも入居できるとは限りません(国土交通省住宅局)。一方、家庭内暴力等の被害者は比較的公営住宅などに入居しやすいでしょう(厚生労働省)。
弁護士や専門家の支援
離婚や家の売却には法律が関わるため、不動産業者や弁護士といった専門家に相談しましょう。
財産分与にはさまざまなケースがあり「家を売却して、財産を2分の1にする」という言葉以上に複雑な事情が関わります。
その上、不動産は売却したくてもすぐに売れるとは限りません。効率よく売却するためには専門家の支援が必要です。その上、家だけでなく土地などの問題が発生する可能性もあります。
不動産鑑定士に査定を依頼することで、その査定の結果は法的効力を持ち、裁判での証拠になります。
最初から専門家の力を借りることで、無駄なトラブルは防げるのです。
その他、ローンの返済や権利、子どもの養育費などは、弁護士の支援を受けるとスムーズです。離婚問題に強い弁護士に依頼すると様々なケースを把握しているため相談もしやすいでしょう。
法務省のサイトでは、離婚に関する相談窓口が紹介されています。
家庭問題をサポートするサイトも掲載されているため、分からない情報があるときや相談窓口が必要なときは活用しましょう。
まとめ
離婚すると、夫婦は婚姻後に形成した財産を分ける必要があります。
財産を分けることを「財産分与」といい、一般的には2分の1ずつに配分します。財産分与の割合を決めるのは、夫婦の協議または家庭裁判所の裁判です。
離婚後に家を売る場合、斥候期間である「2年間」内に売却を終わらせましょう。
2年を超えると贈与となり、贈与税が発生します。
売却時に住宅ローンが多く残っていると「オーバーローン」になるため、ローンの残債には注意が必要です。


