不動産売却は慣れないことも多く大変ですが、実は売却後もやるべき手続きが残っています。
具体的には、不動産売却利益に応じた税金の支払いが必要です。
今回の記事では、売却による所得にかかる「譲渡所得税」や、譲渡所得税の節税方法、適用できる特別控除などを紹介します。
不動産売却における譲渡所得税の仕組み
譲渡所得税の概要と仕組み
譲渡所得税とは、譲渡所得によって得た利益にかかる税金です。
「一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得」のことを指します(国税庁ホームページより引用)。
利益が出なかった場合は、譲渡所得は課税対象にはなりません。
課税対象となる譲渡所得金額の算出方法は以下の通りです。
課税譲渡所得金額 = 譲渡価格 – (取得費 + 譲渡費用)
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課税譲渡所得金額を算出する際、「売却した建物はマイホームである」などの特定の条件を満たすと「特別控除額」を引くこともあります。
特別控除額を含めた課税譲渡所得金額の計算式は以下の通りです。
| 課税譲渡所得金額 = 譲渡価格 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 |
課税所得額に税率を掛けると、譲渡所得額を算出できます。
税率は建物の所有期間によって異なり、以下の2種類があります。
- 長期譲渡所得
- 短期譲渡所得
長期譲渡所得は所有期間が「5年を超える」もので、短期譲渡所得は「5年以下」を指します。
不動産売却時にかかる税金の種類
不動産を売却すると、主に以下の3つの税金を支払う必要があります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 仲介手数料にかかる消費税
1.印紙税
印紙税とは、不動産売却に必要な「不動産売買契約書」の印紙を消印して納税する税金です。
納税額は不動産の売却価格によって異なり、価格が大きいほど印紙税も高くなります。
2024年9月現在、印紙税は軽減措置の対象です。
2027年(令和9年)3月31日までの間に作成された不動産売買契約書で、金額が10万円を超える場合、印紙税は軽減されます(国税庁ホームページ)。
印紙税を支払わなかった場合、「過怠税」が課せられます。
過怠税は、納付しなかった額に加え、その額の2倍の金額です。つまり、印紙納税額の3倍を支払うことになります。決して手続きを忘れないように注意しましょう。
2.登録免許税
登録免許税とは、不動産の所有者の名義変更や抵当権を抹消する際にかかる税金です。
2026年(令和8年)3月31日までに登記をする場合、軽減税率の対象になります(国税庁ホームページ)。
3.仲介手数料の消費税
不動産業者に売却を依頼する場合、仲介手数料に対する消費税が発生します。
見積書や契約書を見てもわからない場合は、必ず業者に問い合わせて明確にしておきましょう。
譲渡所得税とその他の税金の違い
個人が不動産を売却した際の譲渡所得には、以下の3つの税金が課せられます。
- 所得税
- 復興特別所得税
- 住民税
譲渡所得税とは、上記の所得税・復興特別所得税・住民税を含んでいます。
正式な国税庁の情報では「譲渡所得税」という言葉はありませんが、一般的に譲渡所得に対してかかる税金を「譲渡所得税」と呼びます。
1.所得税
1年間で得た個人の所得から、所得控除を引いた金額にかかる税金です。
所得控除にはそれぞれ使えるものが異なるため、自分が使える控除を探してみましょう。
2.復興特別所得税
東日本大震災の復興のために創設された税金す。
基準所得額に対して2.1%の復興特別所得税がかかります。
3.住民税
個人にかかる住民税は「個人住民税」といい、住所のある地方自治体に対して納める税金です。
住民税は、課税所得金額に税率をかけて算出する「所得割」と、「均等割額」を足した額です。
譲渡所得税は分離課税です。給与所得などの所得とは分けて計算しますが、確定申告では同時に手続きする必要があります。
譲渡所得税の申告義務と申告方法
不動産売却による譲渡所得税は確定申告にて申告します。
申告期間は2月16日から3月15日です。
譲渡所得で利益が出た場合、基本的に譲渡所得税を確定申告で申請する必要があります。
譲渡所得を申請しないと、無申告追加課税が課せられます。
1か所から収入を得ているサラリーマンの場合、利益が20万円に満たなかった場合は申請の義務はありません。
義務はありませんが、申告することで損失に対する特別控除を受けられる可能性があります。
申告は以下の3つの方法で行います。
- 納税地の税務署に必要書類を持っていく
- 納税地の税務署に必要書類を郵送する
- e-Taxで提出
確定申告書は、税務署または確定申告会場で入手可能な書類です。
税務署に連絡し、指定した住所へ郵送してもらうこともできます。
手書きで確定申告書を作成しない場合、国税庁ホームページの確定申告等作成コーナーで作ります。
確定申告等作成コーナーで作った確定申告書は、印刷して郵送・提出する、またはe-Taxで送信することができます。
申告を行う手順は以下の4ステップです。
- 必要書類の用意
- 帳簿の整理
- 確定申告書を作成
- 確定申告書・必要添付書類を提出
申告に必要な書類として、以下の2つが挙げられます。
- 譲渡所得の内訳書
- 確定申告書
売却した不動産によって、受けられる特例や必要書類が異なります。国税庁の申告書添付書類チェックシートでチェックしましょう。
不動産売却における譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税の計算に必要な情報
譲渡所得金額の算出に必要な情報として、以下の3つがあります。
- 譲渡価格
- 取得費
- 譲渡費用
1.譲渡価格
譲渡価格とは、不動産の売却金額から取得費と譲渡費用を差し引いた金額のことです。
2.取得費
取得費とは、売却する不動産の購入にかかった金額のことです。
購入代金や仲介手数料、改良費などを含みます。
建物の場合は購入や改良にかかった金額から、減価償却費に相当する額を差し引いた金額を「取得費」とします。
取得費として含まれる費用としては、以下の例が挙げられます。
- 不動産を購入した際に納めた印紙税・登録免許税・登記税・不動産取得税など
- 所有権などの確定のために支払った訴訟費用
- 土地の取得に支払った測量費
- (借主がいた場合)借主の立ち退きに支払った立退料
3.譲渡費用
譲渡費用とは、不動産を売るために直接かかった費用のことです。
不動産業者への仲介手数料、土地の測量費、建物の取り壊しなどを含みます。
固定資産税や不動産の維持費などは、譲渡費用に含みません。
譲渡費用として、以下の例が挙げられます。
- 土地を売るために建物を取り壊した際に発生した費用
- 印紙税で売主が納めた費用
- (貸家を売る場合)借家人に支払った立退料
譲渡所得税の具体的な計算ステップ
譲渡所得税の計算は、以下の2ステップで行います。
- 譲渡価格から取得費と譲渡費用を引く
- 課税譲渡価格に譲渡所得にかかる税率を掛ける
具体例として、以下の不動産を売却したときの税金を計算してみましょう。
今回計算するケース
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ステップ1:譲渡価格から取得費と譲渡費用を引く
まずは、譲渡価格から取得費・譲渡費用を差し引きます。
課税対象となる譲渡所得金額の算出方法は以下の通りです。
| 課税譲渡所得金額 = 譲渡価格 – (取得費 + 譲渡費用)
1億4,500万円 – (1億円 + 500万円) = 4,000万円 |
ステップ2:課税譲渡価格に譲渡所得にかかる税率を掛ける
次に、課税所得額に税率を掛けます。
不動産は30年前に購入しているため、「長期譲渡所得」の税額で算出します。
長期譲渡所得は所得税の税率が15%、住民税が5%です。
| 「課税譲渡所得金額 × 税率」で、15%の所得税を算出します。
4,000万円 × 15% = 600万円
次に、5%の住民税を算出します。 4,000万円 × 5% = 200万円 |
2013年から2037年までは「復興特別所得税」を納付する義務があります。
復興特別所得税は、各年度の基準所得税額の2.1%です。
| 所得600万円に税率2.1%を掛けます。
600万円 × 2.1% = 12万6,000円 |
すると、税金の合計は以下のようになります。
| 所得税 | 600万円 |
| 住民税 | 200万円 |
| 復興特別所得税 | 12万6000円 |
| 税金の総額 | 812万6000円 |
譲渡所得税の計算における注意点
譲渡所得税を計算する際は、以下の3つに注意しましょう。
- 譲渡所得は分離課税
- 長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分
- (建物を売却した場合)譲渡所得から減価償却費を差し引く
譲渡所得は分離課税の対象です。
不動産によって得た譲渡所得となる所得は、給与所得などの自分の所得と合算してはいけません。
長期譲渡所得の対象となるものは、「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの」です。
所有期間は、相続や贈与によって得た不動産の場合、所有期間は被相続人や贈与者といった、財産を渡した人が取得した日から数えます。
建物を売却した場合は、建物の購入代金を含む合計額から減価償却費を差し引くことに注意しましょう。
居住用の家など、事業に使われていなかった建物は以下の計算式で減価償却費相当額を算出します。
減価償却費相当額 = 建物の取得価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
償却率は建物の区分によって異なります。詳しい償却率については、国税庁ホームページからご確認ください。
不動産売却における譲渡所得税の特例制度
特例制度が適用される条件と内容
譲渡所得税は特例制度があり、条件を満たすと控除を受けることができます。
譲渡益がある場合の「特別控除」や、譲渡損失がある場合の「損益通算」「繰越控除」などです。
マイホームを売った場合、特例制度を適用できます。
マイホームとは、正式には「居住用財産」と呼びます。
趣味や保養を目的とした別荘などは、マイホームとして認められません。
適用除外となる条件として、国税庁は以下の3つを挙げています(国税庁ホームページより引用)。
- この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
- 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
- 別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋
マイホームを売って譲渡益があった場合、以下の3つの制度を利用できます。
- 3,000万円の特別控除の特例
- 軽減税率の特例
- 買換え(交換)の特例
マイホームを売って譲渡益があった場合、以下の2つの制度を利用できます。
- 新たにマイホームを買い換える場合の特例
- 新たにマイホームを買い換えない場合の特例
特例制度を利用した税額のシミュレーション
マイホームを売ると、所有期間に関係なく「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」によって所得税を節税できます。
譲渡所得が3,000万円に満たない場合は、確定申告を行うと譲渡所得税は0円です。
「譲渡所得税の具体的な計算ステップ」の例で、「3,000万円の特別控除の特例」と「軽減税率の特例」を用いた場合を算出していきます。
「軽減税率の特例」は、マイホームの所有期間が10年を超えている場合に適用できる特例です。
- 30年前に購入
- 建物の譲渡価格は1億4,500万円
- 不動産(土地と建物)の取得費は1億円(減価償却費は控除済み)
| 課税譲渡所得金額 = 譲渡価格 – (取得費 + 譲渡費用)
1億4,500万円 – (1億円 + 500万円) = 4,000万円 |
3,000万円の特別控除の特例によって、課税譲渡所得金額から3,000万円を引きます。
4,000万円 – 3,000万円 = 1,000万円
「軽減税率の特例」では、15%の所得税を「10%」、5%の住民税を「4%」として算出します。
6,000万円を超える部分は所得税は15%、住民税は5%で算出されます。
1,000万円 × 10% = 100万円
4%の住民税を算出します。
1,000万円 × 4% = 40万円
2.1%の復興特別所得税を掛けます。
100万円 × 2.1% = 2,100円
譲渡所得税は140万2,100円、特例を使わない場合は812万6,000円です。
つまり、これらの差額「672万3,900円」を節税できるのです。
特例制度を適用する際の注意点
特例制度にはさまざまな条件があり、条件に満たない不動産は特例制度を使うことができません。
条件に当てはまるかを注意して確認しましょう。
上記の例で挙げた「3,000万円の特別控除の特例」の適用を受けるためには、「家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと」などの要件があります。
特例の制度を受けるためには必要な書類があります。例として以下の書類が挙げられます。
売ったマイホームの書類
- 登記事項証明書
- 売買契約の写し
- 住宅借入金等の残高証明書(譲渡契約締結日の前日のもの)
新たに取得したマイホームの書類
- 登記事項証明書
- 住宅借入金等の残高証明書
- 耐震基準適合証明書など(建築後25年を超える中古の建築物の場合)
特例制度を利用する場合は、確定申告が必要です。
不動産を手放した翌年の2月16日から3月15日までの期間に申請しましょう。
まとめ
不動産を売却すると、譲渡所得には税金を支払う義務があります。
譲渡所得にかかる税は「譲渡所得税」と一般的に呼ばれており、所得税と住民税、2037年までは復興特別所得税が含まれます。
譲渡所得で利益があり、譲渡所得税を申告しなかった場合は無申告追加課税が課せられます。
確定申告で大幅に節税できる可能性があるため、売却した不動産が特別控除の対象であるかしっかり確認しましょう。


