不動産売却のコツ

2024.09.02

不動産売却時は瑕疵担保責任に注意!契約不適合責任との違いについても分かりやすく解説します。

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不動産売却時の瑕疵担保責任とは

 

瑕疵担保責任とその重要性について

「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」とは、不動産売買契約において、その不動産に瑕疵(かし)があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことを指します。瑕疵とは、隠れた欠陥や不具合、傷などのことで、買主がそのことに気付かずに購入した場合でも、売主はその責任を負うことになります。雨漏りやシロアリ被害、土壌汚染、地下埋設物、事件や事故が過去にあったなどが瑕疵の代表的な例です。もし物件に瑕疵が発覚した場合、売主は修繕費用を負担する、契約を解除する、損害賠償を支払うといった義務が発生します。

瑕疵担保責任は、買主が不動産を安心して購入できるようにするための制度であり、売主がその責任を果たすことで、買主のリスクを軽減する役割を果たしています。

また、売主にとってもこの責任は重要で、売却が完了した後でも瑕疵が発覚すれば責任を負わなくてはいけません。

なお、2020年4月の民法改正に伴い、瑕疵担保責任の名称や内容が変更になっておりますので、詳しくは次章にて解説します。

 

 

瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと名称変更し、内容も改められました。瑕疵担保責任は2020年の民法改正以前に適用されていたもので、主に隠れた瑕疵(買主が知り得なかった欠陥)に対して、売主が責任を負うものでした。しかし、契約不適合責任は、不動産の隠れた瑕疵だけでなく、契約内容と不動産の現状が一致していない場合にも適用される責任です。

つまり、買主が知り得なかった欠陥があった場合にのみ売主がその責任を負う瑕疵担保責任に対し、契約不適合責任では、売買契約書に記載された内容と実際の物件が合致しない場合においても、売主はその責任を問われる可能性があります。

 

また、契約不適合責任では、買主が瑕疵の事実を知った時から1年以内に権利行使しなければならないという期間の制限が設けられていましたが、改正民法により、目的物の種類・品質が契約の内容に適合しない場合には、買主はその旨を契約不適合を知った時点から1年以内に売主に通知することで権利が保全されることになりました。

さらに、買主が不適合を発見した場合に取れる救済措置が増えました。具体的には、損害賠償請求や契約解除に加えて、履行の追完請求や購入代金の減額請求も可能となります。買主が権利を行使できなくなる時効についても以下表の通りとなっております。

 

瑕疵担保責任 契約不適合責任
売主の責任対象 売主が事前に把握していなかった瑕疵 売買契約書に記載されていない、内容が合致しない瑕疵
買主が権利を行使できる期間 事実を知ってから1年以内に行使しなければならない 事実を知ってから1年以内に通知すればよい
買主が請求可能な権利 損害賠償請求・売買契約の解除 損害賠償請求、売買契約の解除、履行の追完請求、購入代金減額請求
買主が権利を行使できなくなる時効 引き渡しから10年 引き渡しから10年もしくは事実を知ってから5年

 

 

 

不動産売却において瑕疵に該当する4種類

不動産の売却で瑕疵にあたるとされるものは、「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」「法律的瑕疵」の4つに分類されます。

 

物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、不動産の建物や土地自体に存在する物理的な欠陥や不具合を指します。建物の瑕疵としては、建物の傾きや基礎のひび割れなどの構造的な問題、雨漏り、シロアリ被害などが該当し、土地の瑕疵としては、地盤沈下や土壌汚染、地中障害物の存在、擁壁の破損などが該当します。

 

法律的瑕疵

法律的瑕疵は、不動産の所有や利用に法律的な制約や問題がある状態を指し、この瑕疵があることで買主は予定していた利用ができなくなる可能性があります。例えば、土地に抵当権や地上権が設定されている、建築規制があるため建物の再建築ができない、都市計画によって特定の用途に制限されているなどが例としてあげられます。

ただ、法律的瑕疵は問題になることが少なく、どちらかというと不動産会社の重要事項説明義務違反として取りざたされることが多いものになっています。

 

心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、不動産に対して買主が心理的な嫌悪感や不安感を感じるようなものを指します。いわゆる事故物件と呼ばれるようなもので、例えば、物件内で過去に自殺や殺人事件、火災、忌まわしい事故などが発生していた場合などが該当します。このような瑕疵は、不動産の物理的な状態には影響を与えませんが、心理的な抵抗を買主に与えるため、本来あるべき住み心地を欠くものであるといえ、不動産の評価や価値にも大きく影響します。

 

環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、不動産が周囲の環境によって悪影響を受ける場合を指します。具体例としては、近隣にゴミ処理状や火葬場、墓地、宗教施設、反社会的組織の事務所があるなどの例や、騒音や振動、悪臭、日照や眺望障害などがある場合も含みます。心理的瑕疵は「物件そのものの過去に起きた事象」を指すのに対し、環境的瑕疵は「物件周辺で現在に起きている事象」を指します。

 

 

瑕疵担保責任におけるリスク管理

 

売主としてのリスク管理と保険の活用

 

欠陥や不具合は不動産会社や買主に必ず告知する

売却する不動産に欠陥や不具合などがある場合には、仲介を依頼する不動産会社や買主にすべて伝えることが何より重要です。不動産売買では、売却時に欠陥や不具合などの瑕疵を、買主に告知する義務があります。売却にとって不利な情報は隠してしまいがちになりますが、欠陥や不具合を知っているにも関わらず買主に告知していない場合、のちのち契約不適合責任を問われる可能性が高くなります。

それは欠陥や不具合の修理が完了して、すでに直っている場合でも同じで、その履歴は告知義務に含まれます。修理が適切に行われているか、将来的な修理や不具合が生じる可能性があるか等、買主にとって重要な情報になるためです。売買契約時の重要事項説明書などに欠陥や不具合などの状態を細かく記載することで契約不適合責任のリスクを減らし、トラブルのない売却につなげましょう。

 

特約で契約不適合責任を限定する

契約不適合責任は、特約によって免除や通知期間の制限ができます。特に、個人が売主の中古住宅の場合は、購入後の経年変化により不具合が発生することも多いため、契約不適合責任の通知期間を2〜3カ月とする特約を設けるケースがよくあります。あまりにも築年数が古い中古住宅などの売買では、売主と買主の合意によって契約不適合責任を免除するという特約を結ぶこともあります。売主にとっては、免除や期間が短縮されている方が有利なため、契約前に不動産会社へ確認しておくと良いでしょう。

ただし、売主が知りながら買主に告げなかった契約不適合については、特約の対象外となります。先ほども解説しましたが、売却する不動産の欠陥や不具合について知っている事実は必ず事前に告知しましょう。

 

瑕疵保険に加入する

瑕疵保険とは、万が一不動産に瑕疵が発覚した場合に、売主が買主に対して支払う損害賠償金などの費用を一部保証するものです。

これまで解説してきましたが、2020年4月の民法改正で瑕疵担保責任から契約不適合責任と改られたことで、売主が負う責任の範囲が広がり、売主側のリスクが増加しています。契約不適合責任を問われた際の、補修費や損害賠償金は多額の費用になる可能性もあるため、瑕疵保険の加入は欠かせない状況になっていると言ってもいいでしょう。

また、売主の瑕疵保険加入は買主にとっても、物件に万が一不具合が発覚した場合、迅速に補償を受けられるというメリットがあります。このことからも瑕疵保険に加入することは、万が一のリスクに備えることができることはもちろん、買主が不動産を購入する安心材料にもなるでしょう。

 

 

トラブルを未然に防ぐための実践的アドバイス

 

契約内容を明確にする

民法改正により、契約不適合責任では、売買契約書に記載された内容と実際の物件が異なる場合でも、売主はその責任を問われる可能性があります。そのため、売買契約書には、契約内容について細かく記載することが重要です。また、契約不適合責任を負う期間や範囲を特約として明記しておく必要があります。不具合がある場合には、不具合についても記載し、その不具合について契約不適合責任を負わない旨も記載します。

期間の明記がない場合には、買主に有利な契約になってしまいますので注意しましょう。

 

②告知書や付帯設備表をしっかりと記載する

告知書(物件状況確認書)とは、設備以外の瑕疵について記載する書面で、付帯設備表とは、不具合の状況等を記載する書面です。売買契約時に買主へ渡し、通知します。

どちらも不動産の状態を示すためのものなので、民法改正により重要度が増した書類といえます。トラブルを未然に防ぐためにも、不動産の状態を細かく記載し、少しでも懸念される事項があれば、あわせて記載しておきましょう。

 

 

瑕疵が不動産売却に与える影響とその対策

 

不動産売却における瑕疵の影響

不動産売却において、瑕疵がある不動産は買い手が購入を敬遠する傾向にあるため、基本的に売却価格は安くなると思っておいた方がいいでしょう。売却期間においても、買いたいと思う人が少ないため、長くかかると思っておいた方が賢明です。だからと言って、瑕疵について告知せずに売却することは危険です。瑕疵が発覚し、契約不適合責任を問われることで、結果的に大きな損失につながる可能性があります。

瑕疵があるからと言って、必ず売れないとは限りません。瑕疵の感じ方は人それぞれですし、安く買えるならと価格を優先して考える買い手もいます。瑕疵があるからといって売却を諦めず、まずは信頼できる不動産会社を見つけ、対策を検討すると良いでしょう。

 

 

売却前にホームスペクションを実施

ホームインスペクションとは住宅診断とも呼ばれ、専門知識を持った診断士が客観的に、建物の劣化状況や不具合等を調査してくれるものです。不動産の売却前に、ホームインスペクションを受けることで、確認証明書を取得することができます。物件の瑕疵について把握できることはもちろん、確認証明書があれば物件の状態について買主に漏れなく告知でき、契約不適合責任のリスクも減らせます。特に、築年数の古い不動産の場合は実施することをおすすめします。また、ホームスペクションは買い手からしても、購入を検討する際の安心材料になります。

ホームスペクションにかかる費用は、一戸建てで5〜7万円程度、マンションであれば4〜6万円程度が目安です。不動産の種類や広さ等によっても異なりますので、まずは不動産会社に相談してみましょう。

 

 

瑕疵担保責任によるトラブル事例

瑕疵担保責任によるトラブルの具体的な事例として、実際の判例を2つご紹介します。

 

築42年の中古住宅の売買において、売主が雨漏りがあることなど知っていなからを故意に告知しなかったことで、買主の損害賠償請求が認められました。

参照:社団法人 不動産適正取引推進機構 R4.2.17 東京地裁裁判例

 

居住するために購入したマンション内の天井裏や床下に大量の野鳥の死骸等が発見され、これが売主が容易に発見できなかった隠れた瑕疵にあたるとして、買主の損害賠償請求の一部が認められました。

参照:社団法人 不動産適正取引推進機構 R3.9.30 東京地裁裁判例

 

買主が購入した共同住宅に雨漏りや給湯設備の瑕疵があったとして、売主に対し原状回復や防水工事費用等を請求し、一部が認められました。

参照:社団法人 不動産適正取引推進機構 H30.7.9 東京地裁裁判例

 

 

瑕疵物件は不動産会社の買取も検討

不動産に瑕疵がある場合でも、すぐに手放したい場合などは、不動産会社に買い取ってもらう買取を検討しましょう。価格の折り合いが付けばすぐに不動産会社へ売却でき、現金化が可能です。しかしその反面、市場価格よりも安くなる傾向にあることや、条件によっては買取を断られるケースもありますので、まずは何社か探してみると良いでしょう。

弊社「S plus home(エスプラスホーム)」では、札幌や札幌近郊の不動産売却の仲介や買取

を行っています。ご相談や査定を無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

代表取締役浜谷 卓

一つ一つのお取引を大切にし、必ずご満足のいくサービスをご提案致します。

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