「アパートを売却したい」と思った時にまず行うべきなのが、不動産会社に査定を依頼すること、そして査定にしっかりと備えることです。
アパートの査定は、あなたの物件がどれくらいの価値があり、どのような条件で売却できるかを把握する重要なステップで、コツを抑えることで査定額を高めることもできます。一方で、何が査定に響くのかを理解できていなかったり、しっかり準備せずに査定に臨んでしまったりすると、市場価格よりも低価格で売却してしまった…なんて事態に陥ることも。
そこで記事では、アパート売却時の査定方法を解説するとともに、アパート売却の査定における重要な要素や具体的な査定の流れ、査定額を高めるコツなどを紹介します。査定時に気をつけるべき注意点も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
アパート売却の査定方法
まずは、アパート売却時に使用されることの多い2つの手法について説明します。それぞれの詳細や査定額の計算方法などを分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
直接還元法
直接還元法は、アパートの査定において広く用いられる方法で、簡潔かつ効果的な手法です。この手法では、以下の計算式で査定額が算出されます。
年間家賃収入(円)÷還元利回り率(%)×100
年間家賃収入÷初期投資×100で算出できる還元利回り率は、一般的に、同じ地域や物件タイプにおける平均的な利回り率が使われます。およその相場は投資サイトなどで検索できるため、ぜひ活用してみてください。
直接還元法の特徴は、物件から得られる年間の収益を基にして、その収益がどれだけの価値に相当するかを見積もる点。今後具体的にどのくらいの家賃が見込まれるかはあくまでも想定となってしまうため、これまでの家賃収入の金額や築年数、空室の状況などで売却価格が査定されます。
DCF法
DCF(Discounted Cash Flow)法は、将来的に予想される収益を考慮し、それを現在価値に換算して査定額を決定する方法です。以下の計算式で求められます。
現在価値=(X年後の合計収益)÷(1+年間割引率のX乗)
DCF法の特徴は、将来のキャッシュフローを考慮する点。お金の価値は日々変動するため、今1,000万円得られるのと10年後に1,000万円を得られるのでは、全く価値が異なります。DCF法では物件の将来の変動や市場の変化に対応することができるため、より制度の高い査定が可能となるのです。
直接還元法とDCF法、それぞれ計算式は異なりますが、アパートの査定額を知るためには、まずは両方の方法を試してみるのがおすすめ。そうすることで、アパートの査定においてより信頼性の高い評価が可能となります。
アパート売却の査定における重要な要素
では、アパート売却の査定時には、どんな点が考慮されて査定額が決まるのでしょうか。ここでは、アパート売却の査定における重要な要素について、なぜその要素が重要であるのかを含めながら詳しく解説していきます。
立地とアクセス性
アパートの査定において、立地とアクセス性は極めて重要な要素です。
例えば、都心部に位置し、公共交通機関のアクセスが良い場所は通勤や通学に便利で、生活の利便性が高まります。これにより、高い入居率を維持できるようになるため、査定額が高額になることがあります。大学が多かったり、スーパーや医療機関など生活に必要な施設が揃っていたりする場合も、査定額が高額になりがちです。
逆に、遠隔地やアクセスが不便な場所では入居者の確保が難しくなり、査定価格が低くなってしまう可能性があります。生活に車が必須な郊外の場合は、駐車場があるか、大きな道路に出やすいかなども査定額に大きく影響します。
建物の構造と状態
建物の構造と状態も、査定価格に大きな影響を与えます。例えば、鉄筋コンクリート造の建物は地震に対する安全性が高く、査定価格も比較的高くなる傾向があります。
一方で、耐震基準をクリアしていなかったり、築年数が進んで設備や構造に経年劣化が生じていたりする場合は、それが査定額を下げる要因となります。ただし、築年数が古くても、リフォームが行われていて建物の状態が良好な場合は、査定価格が向上するケースが多いです。
市場の動向と需要
不動産市場の動向とアパートに対する需要も、アパート売却の査定額に影響を与える要素の1つです。例えば、地域全体で需要が高まっている場合、アパートの査定価格も上昇する傾向があります。逆に、需要が低迷している場合は査定価格が相場より低くなることも。
2023年末現在では、中古・新築ともに、マンションの需要は大きく上昇しています。2020年から続く感染症の影響で、リモートワークが一般的になったのも要因の1つといえるでしょう。そのため、不景気時と比較すると、マンションの査定額が高くなる傾向にあります。
ただし、不動産市場は経済状況や金融政策、地域の需要と供給のバランスなどに大きく影響します。地元の不動産業者や専門家に相談し、最新かつ地域特有の市場動向を確認するようにしましょう。
また、ここで紹介した要素以外にも、現在の入居率が良いか、家賃滞納者やマナーの悪い入居者がいないかなども、査定額に影響する可能性があります。
アパート売却を査定してもらう流れ
アパート売却における査定は、一般的に以下の流れで行われます。
- 査定業者の選定
- 必要な情報の提供
- 訪問査定
- 査定結果の受け取りと検討
では、それぞれのステップにおける詳細やポイントを詳しく見ていきましょう。
査定業者の選定
まずは、査定を依頼する不動産業者を選定します。不動産業者のホームページから1社1社申し込むほか、一括サイトを活用するのもおすすめです。
査定業者を選ぶ際には、信頼性や実績が非常に重要です。良質な査定業者は過去の成功事例や顧客の評判があり、適切な査定額を提供してくれる傾向にあります。口コミや評判、業者のホームページを確認し、過去に同様の物件での査定実績があるかどうかを調べた上で依頼しましょう。
また、良質な業者を見極めるためには、実績だけでなく、連絡を取った際の対応や、手続きのスムーズさも確認するのがおすすめです。
必要な情報の提供
査定を依頼する際には、以下の情報や資料が必要です。査定業者を選定するのと同時に、準備しておけると手続きがスムーズに進みます。
- 物件購入時に交わした売買契約書
- 登記済権利証
- 登記事項証明書
- 重要事項説明書
- 固定資産税納税通知書
- 管理規約・長期修繕計画表(修繕計画などを記載した書類)
- レントロール(不動産の賃貸借条件を一覧表にしたもの)
- 測量図や間取り図
- 現在の入居状況や賃料収入が分かるもの
- 設備の状態が分かる写真や資料
これらの情報を提供することで、査定業者はより正確な査定を行うことができます。ただし、必要な書類は査定を依頼する不動産業者によって絶妙に異なるケースがあるため、事前に確認しておくことが重要です。
訪問査定
不動産業者への依頼が終わったら、査定担当者が実際に物件を見て評価を行う「訪問査定」が行われます。査定担当者は、建物の構造や設備、修繕の必要性などを確認し、査定額を専門的かつ具体的に算出します。所要時間は1〜2時間程度です。
より正確な査定額を算出してもらうためには、物件の特徴や状態、周辺環境などを担当者に詳しく説明することが重要です。不動産業者のみで行われることもありますが、できる限り同行することをおすすめします。査定時に質問や疑問点がある場合は積極的に伝え、その場で解消するようにしましょう。
査定結果の受け取りと検討
訪問査定が終わると、約1週間後に査定結果が届きます。
査定結果を受け取った後は、提出された査定額が妥当かどうかを判断する必要があります。他の査定業者からの査定結果や、自身でインターネットなどで検索した相場と比較してみましょう。査定額が大幅に高かったり低かったりする場合は何か理由があることが多いため、査定した不動産業者に問い合わせてみるべきです。
また、査定結果には物件の良い点や改善すべき点が含まれることがありますので、それらを行った上で再度査定を依頼してみるのも良いでしょう。査定結果を基に、どの不動産業者に売却を依頼するかを検討します。
アパート売却の査定額を高めるコツ
アパートを売却する際、できる限り高く売りたいと思うのは当然のこと。ここでは、アパート売却の査定額を高めるコツを3つ紹介します。
建物の維持とリフォーム
アパートの査定額を高めるためには、必要に応じてリフォームを行い、建物を綺麗な状態で維持していることが重要です。リフォーム済みのアパートやマンションは将来的な修繕コストが低く、査定時にプラスの評価を受けやすくなります。
また、リフォームは建物の外観や内部の魅力を向上させ、入居者にとっても魅力的な住空間となります。建物自体の需要向上にもつながるはずです。
特に劣化が目立つ箇所や、実際に入居者から要望が来ている場合は、査定前に修繕しておきましょう。最近は、ソーラーパネルやエコキュートの設置など、省エネのためのリフォームもよく行われています。
入居率を高める
先ほども解説したように、入居率は査定額に大きな影響を与えます。高い入居率は安定した収益を意味し、査定時に物件の魅力として評価されやすくなるためです。
入居率を高めるためには、賃料を適性な価格に設定したり、広告戦略を見直したりするなどの方法があります。すでに住んでいる入所者の要望を受け入れ、より魅力的な住居にすることも欠かせません。不動産業者への仲介手数料を上乗せし、売却活動に力を入れてもらう方法もあります。
家賃滞納者は早めに対応する
アパートの査定には、家賃滞納者の有無も大きく影響します。不動産収入を期待してアパートを購入する買主にとって、家賃の滞納はデメリットしかないためです。そして、不動産業者はこういった理由から需要が低くなることを見込み、そもそも不動産業者は査定額を低めに設定しがちです。そのため、家賃滞納者がいる場合は早めに対応しておきましょう。
とはいえ、長い間家賃を滞納している入居者への対応は、そう簡単なことではありません。トラブルやオーナー自身への被害を防ぐため、弁護士に相談した上で対応方法を検討することが重要です。
アパート売却の査定の注意点
最後に、アパートの査定を受ける際の注意点や、査定結果を正確に判断するためのポイントについて説明します。アパートの売却において重要なことばかりですので、売却を検討する際には事前に必ず確認しておきましょう。
本格的な査定は業者への依頼が不可欠
本記事で紹介した計算方法やインターネットにある見積もりサービスを利用することで、アパートの査定額の目安を算出することができます。ただし、アパートの本格的な査定は、プロの不動産業者に依頼することが不可欠です。
アパートの査定には、部屋の数や広さ、築年数、家賃などの項目に加え、地域性や市場状況、経済状況など、日々変動するさまざまな要素も必要になります。素人には判断し切れない要素も多く存在するのです。一方、不動産業者であれば、これまでの経験や実績、市場への理解は豊富なため、より正確に判断できます。
もちろんおおよその相場を把握するために自身で売却金額を算出することは大切ですが、それだけで済ましてしまうと最終的な取引価格に影響を与える可能性があります。アパートを売却する際には、必ず業者への査定依頼を行いましょう。
不動産業者の査定額は根拠まで確認する
本来、不動産の売却金額は、共通する計算式で求められるものではありません。もちろん物件の条件や状態などでおおよその金額を算出することはできるものの、詳細の査定額は不動産業者によって異なります。そのため、不動産業者から提供された査定額は、その背後にある根拠や計算方法を確認することが重要です。
確認しないまま売却を依頼してしまうと、相場よりも低い価格で売りに出されてしまったり、契約時にトラブルが起こってしまったりする可能性があります。同様の物件での過去の取引履歴や近隣の類似物件の相場などを事前にチェックしておき、不動産業者が出した査定額と差がある場合は、業者に直接質問して説明を求めるようにしましょう。
複数の不動産会社に査定を依頼する
査定を受ける際には、複数の不動産会社に依頼することが重要です。複数の業者からの査定を比較することで、市場相場をより正確に把握したり、相場から大きくズレている業者を避けたりすることにもつながります。
また、査定額が他の業者と比べてあまりにも高すぎる業者は、悪徳業者の可能性もあります。査定を依頼する際は、業者の信頼性や評判も確認し、査定依頼に際しての契約条件や手数料にも注意を払いましょう。
まとめ
アパートの査定金額は、立地とアクセス性、建物の構造と状態、市場の動向と需要など、さまざまな要素によって決定します。大切なのは、素人判断で済ませてしまわず、プロの業者に査定を依頼することです。
査定を依頼する際には、信頼性や実績を重視して業者を選定すること、複数の業者に依頼すること、そして査定結果を比較して実際の市場価値を正確に判断することが欠かせません。査定結果に疑問がある場合は、契約を結ぶ前にすべて解消しておきましょう。
また、査定前にリフォームを行ったり入居率を上げたりしておくことで、アパートの査定額を高めることも可能です。可能な限り対策をした上で査定に臨むのが、アパート売却を成功させるカギとなります。