目次
相続から売却するまでの基礎知識
相続発生から売却までの流れ
土地を相続し、売却するまでの流れは、大まかに分けて以下の6ステップです。
それぞれ1つずつ、詳しく解説していきます。
❶遺言書や資産、債務の有無を確認
被相続人が残した遺言書がある場合は、遺言書に従って遺産を分割することになります。
遺言書の形式は、どこの公証役場でも調べることができる「公正証書遺言」、貸金庫や被相続人の弁護士などが保管している「自筆証書遺言」のいずれかがほとんどです。
また、相続税を算出するために被相続人のすべての資産と債務を確認します。
相続から2ヵ月以内を目途に、関係する金融機関にて確認しましょう。
❷遺産分割協議
遺産分割協議とは、被相続人の財産を相続人である家族や親族などに分割するための協議のことです。遺言書がない場合に、相続人が被相続人の財産を分割する目的で行われることが一般的で、相続人同士のトラブルを未然に防ぐ役割もあります。話し合いの内容は、相続人が分割する財産の種類や割合、相続人の順位、負債の分担方法などです。
もし相続人が多数いる場合やトラブル等が起きた場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのがスムーズです。遺産分割協議が終了したら、書面にまとめた内容を司法書士に提出し、遺産分割協議書を作成してもらいます。
また、被相続人の遺産がプラスの資産よりマイナスの債務の方が大きい場合には、相続放棄をすることができます。相続放棄とは、相続の権利「すべて」を放棄することです。
また、相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に行わなければならないので注意が必要です。
❸相続登記
土地・家などの不動産を相続した場合、相続人は所有権を持つことになりますが、その所有権を証明するためには相続登記(名義変更)が必要です。相続登記を行わない場合、所有権を主張することができないので、土地の売却や貸し出しなどの取引もできなくなってしまいます。
また、複数人で相続する場合には相続人全員の登記を行い、相続人が未成年者である場合は法定代理人が登記を行います。
登記手続きには、相続人の印鑑証明書や相続証明書・登記簿謄本などが必要となり、相続人全員が同意した上で、法務局にて登記申請を行います。
相続登記の手続きは、大変な手間が掛かることが多いため、司法書士に依頼するのが一般的です。登記費用については、登録免許税(不動産評価額の0.4%)と、司法書士へ依頼する場合には、司法書士への報酬が必要になります。
❹売却準備・売却活動
相続した土地を購入した当時の「売買契約書」や「重要事項説明書」など、売却のために必要な書類を準備し、不動産会社の査定を受けます。
査定額は、相場価格に明確な基準がないことや、査定の仕方でも異なるなど、不動産会社によって提示される金額が違う場合がほとんどです。1社だけでなく複数社に依頼し、査定価格や査定の根拠を比較することが大切です。
仲介を依頼する不動産会社が決まったら、売り出し価格を設定し、本格的な売却活動に入ります。主に、不動産情報サイトに土地の情報を掲載したり、購入希望者への対応など、不動産会社で売却活動を行ってくれます。
➏契約・決済・引渡し
売主と買主候補の間で価格や引き渡し時期などの詳細な条件を取り決めし、不動産売買契約を締結します。売買契約時に取り決めた日程で、残代金の授受を行う決済と、土地の引渡しを行います。
相続した土地を売却したときに発生する3つの税金
相続した土地を売却するためにかかる税金は、主に「譲渡所得税」「印紙税」「登録免許税」の3種類です。納税を怠った場合には、罰金が課されてしまう可能性もありますので、損のない売却のために、事前に把握しておくことが大切です。
❶印紙税
印紙税とは、土地売却の際の売買契約書に貼る印紙のことで、国・自治体に対して支払う税金の一つです。定められた金額の印紙を貼って消印をすることで納税したとみなされます。印紙を貼っていなかった場合には3倍の額の過怠税が、消印されていない場合には同額の税金を納めなければいけません。
支払いは、売買契約書を作成する際に印紙を貼付しますので、売買契約のタイミングになります。売買契約書は売主用と買主用の2通作成するため、2通分の印紙税が必要になりますが、売主と買主で1通分ずつ負担するのが一般的です。
❷登録免許税
土地を売却したら、所有者(売主)の名義で登記されていた土地を、買主の名義に変更する移転登記を行う必要があり、その際に課税されるのが「登録免許税」です。
土地売却の際に生じる登記は主に、所有権移転や抵当権設定、ローン残債がある場合は抵当権抹消登記が必要です。そのうち、売主が支払う可能性があるのは、所有権移転登記と抵当権抹消登記です。
所有権移転登記費用については基本的に買主負担ですが、法的な決まりがないため売主負担になる可能性もあるので覚えておいてください。
❸譲渡所得税
土地の売却時に、利益(譲渡所得)が出た場合にのみ課税されるのが「住民税」と「所得税」で、まとめて「譲渡所得税」とも呼ばれています。利益が発生しなかった場合には課税されないのが特徴です。支払うタイミングは、土地を売却した翌年の6月に一括で支払うか、4分割での支払いも可能です。
譲渡所得(土地の売却利益)の算出は、「譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)」
の計算式で求めます。
税金以外に発生する費用
不動産は売主の名義でなければ売却することができないため、相続する不動産の売却には相続登記が必要になります。相続登記にかかる費用は「登録免許税」「必要書類の発行費用」「司法書士への依頼料」の3つで、下記に目安をご紹介しておきます。
| 必要な事項 | 計算方法や費用目安 |
| 登録免許税 | (相続不動産の)固定資産税評価額×0.4% |
| 書類発行費用 | 5,000円~20,000円程度 |
| 司法書士への依頼料 | 3万~7万円程度 |
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相続税の納税義務者なら取得費加算の特例
特例を受けられる対象者と要件、適用された場合の譲渡所得と相続税の計算方法について解説をしてください。。
譲渡所得税の説明にて先述しましたが、譲渡所得を計算する際には「取得費」を使います。
譲渡所得の計算式:譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
取得費とは、土地を購入した当時の費用のことを指し、購入時の仲介手数料や印紙代・登録免許税・不動産取得税などの諸費用も含まれます。
この「取得費加算の特例」の適用要件を満たせば、相続税額の一部を取得費に加算することができます。この加算により譲渡所得を減らすことができ、譲渡所得税の税額を抑えることにつながります。
ただし、この特例はあくまで相続税を負担した人しか利用できない特例になっています。
相続税の納税義務者なら、相続開始から3年10カ月以内に土地を売却する際に利用することができ、適用要件は下記の通りです。
取得費加算の特例適用要件
・相続や遺贈によって財産を取得した人であること
・その財産を取得した人が相続税を納めていること
・相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)から3年を経過する日までに売却すること
参照:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
相続空き家を取り壊した場合は3,000万円特別控除
売却する土地が一定の要件を満たすものであれば、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」を利用できる可能性があります。この特例が適用されると譲渡所得から3,000万円を控除することができ、例えば3,000万円で空き家を取り壊した土地を売却し、特例が適用された場合、税金は0円になります。
空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例適用要件
・亡くなられた方が1人で暮らしていた家であること
・昭和56年5月31日以前に建築された家であること
・相続から売却までずっと空き家であったこと
・売却する空き家は耐震基準を満たしているか更地である
適用期間
・特例の適用期限とされる2023年12月31日までの売却であること
・相続発生日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却であること
その他適用要件
・売却金額が1億円以下であること
・親子や夫婦など特別な関係がある人への売却でないこと
参照:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
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取得費が分かる資料の取得
譲渡所得の計算で使用する「取得費」は、計上できるものが多ければ多いほど譲渡所得を減らすことができ、それに課税される譲渡所得税の節税につながります。
取得費とは、土地を購入した当時の費用のことで、購入時の仲介手数料や印紙代・登録免許税・不動産取得税などの諸費用も含まれます。しかし、購入した当時の費用がわからない場合は、「売却価格の5%」を取得費として計算することになっており、この場合、税金が大きくなってしまうことがほとんどです。このような事態を避けるために、購入した当時の費用がわかる資料を出来る限り探すことが肝心です。
取得費がわかる資料は「購入時の売買契約書」が確実ですが、見つからない場合は以下の資料も役立ちます。
・購入時に仲介に入った不動産会社から売買契約書の写しを依頼
・ローンを利用して購入している場合は、ローンの金銭消費貸借契約書から購入額を推測
・同じくローンを利用している場合は、抵当権設定額から購入額を推測
このような資料を取得費としたい場合には、まず税務署に相談してみましょう。
また、このような資料を探すことは、購入した当時にかかった諸費用についても知ることができる可能性が増えますので、出来る限り購入当時の資料を探して整理しておきましょう。
【取得費に加算できる購入時の諸費用例】
・売買契約書へ貼り付けした印紙代
・仲介手数料
・登録免許税
・司法書士への手数料
・不動産取得税
・測量費
・建物解体費
・整地費用
譲渡費用の計上
取得費同様、譲渡所得の計算で使用する「譲渡費用」についても同じことが言えます。
譲渡費用として計上できるものが多ければ多いほど譲渡所得を減らすことができ、それに対して課税される譲渡所得税が安くなります。以下、譲渡費用として計上することができるものをご紹介します。
【譲渡費用に加算できる売却時の諸費用例】
・売買契約書へ貼り付けした印紙代
・仲介手数料
・登記費用
・建物解体費
・売却のための広告料
・売却のための鑑定料
・交渉のために使用した交通費や通信費等
このように、土地を売却する際に生じた諸費用は、基本的に譲渡費用に加算することができます。
固定資産税など、維持や管理にかかった費用は含むことはできませんので覚えておいてください。
取得費や譲渡費用は、それに加算できるものか否かの判断が難しい場合もあると思いますので、税務署や不動産会社等に確認してみましょう。
ふるさと納税の利用
ふるさと納税とは、自分が選んだ自治体に寄付を行うことで、所得税や住民税の控除が受けられる制度です。寄付額のうち2,000円を超える部分が控除対象となり、寄付先から特産品などの返礼品を受け取ることができます。
また、土地を売却した年は所得が増える可能性があるため、ふるさと納税を利用することで、税負担の軽減が期待できるのもメリットです。つまり、土地売却で発生した譲渡所得(売却利益)が増えれば、ふるさと納税の上限額も増え、節税効果が高まるということです。
ただし、売却した土地と同じ年に、土地売却をした人の名義でふるさと納税をしないと節税できませんのでご注意ください。
平成21年及び平成22年に取得した土地の特別控除
この特例では、平成21年に取得した土地を平成27年以降に売却した場合、もしくは平成22年に取得した土地を平成28年以降に売却した場合に、一定の要件を満たすことで譲渡所得から最大1,000万円の控除を受けられます。
この1,000万円特別控除は、リーマンショック後の景気対策として設けられた特例で、リーマンショック翌年からの2年間、つまり平成21年と22年に購入した土地等を売却した場合に、売却益から1,000万円を控除できるという特例です。
購入してすぐ売却した場合には利用できませんが、適用期間がクリアできれば、未利用の土地に対しても適用できるのが1,000万円特別控除の特徴です。
以下のような適用要件すべてに該当する必要があります。
適用要件
・平成21年1月1日から平成12月31日までの期間に土地等を取得
・平成21年に取得した土地(及び権利)を平成27年以降に売却、または平成22年に取得した土地(及び権利)を平成28年以降に売却
・特別な間柄(親子や夫婦、生計を一にする親族、内縁関係にある人、または特殊な関係の法人など)にある人から取得した土地ではない
・土地等は、相続・遺贈・贈与・交換・代物弁済・所有権移転外リース取引により取得したものではない
・譲渡した土地等について、収容等の場合の特別控除や事業用資産の場合の課税の繰延べなど他譲渡取得の特例を受けないこと
参照:国税庁「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」
低未利用土地等の特別控除
低末利用土地等の100万円特別控除の特例とは、令和2年7月1日から令和4年12月21日までに、都市計画区域内の特定の未利用土地等を500万円以下で売却した場合、譲渡所得から最大100万円を控除できる特例です。※令和5年1月1日から令和7年12月31日に売却された土地に関しては、一部の土地について売却価格の要件が500万円から800万円に引き上げられます。
また、譲渡所得の金額が100万円に満たない場合は、譲渡所得税の課税がなくなります。
【低未利用土地とは】
・居住や事業、その他の用途に利用されていない土地であること
・利用されている場合でも、その周辺地域における同一用途の土地利用に比べて、著しく劣っている土地である(空き地、空き家、耕作放棄地など)
【適用要件】
・都市計画区域内にある土地の売却であること
・売却した年の1月1日において所有期間が5年を超えること
・売却相手が親子や夫婦など特別な関係にある人でないこと(法人も含む)
・土地にある建物なども含めた売却価格が500万円以下であること
・売却後にその低末利用土地の利用がされること
・分筆された土地の場合、分筆された他の土地が前年・前々年にこの特例を受けていないこと
・売却した土地等について、収容等の場合の特別控除や事業用資産の場合の課税の繰延べなど他譲渡取得の特例を受けないこと


