不動産査定とは
不動産査定は、売却を検討している不動産の市場価値を評価し、売り出し価格を決定するための重要なステップです。
不動産の売却をしようと思ったとき、少しでも高く売りたいと考える方がほとんどだと思います。しかし、あまりにも相場からかけ離れた高い価格設定だと、なかなか買い手が見つからずに売れ残ってしまい、結果的には大幅に値引きせざるを得なくなってしまったなんてことも少なくありません。適切な売り出し価格を設定するためには、まず不動産査定が重要になってくるというわけです。
査定の種類は主に、「訪問査定」「簡易査定」「AI査定」の3種類で、それぞれに特徴やメリットがあります。この章で1つずつ解説していきます。
査定のポイントは、3つの査定方法を組み合わせて利用したり、最初から不動産会社を1社に絞らず、複数の会社から査定を受けることです。異なる査定結果を比較することで、より適切な価格を把握することができますし、最適な不動産会社選びにつながるでしょう。
査定方法①訪問査定
訪問査定は、不動産会社の担当者が実際に物件へ訪問し、現地調査を行うことで査定額を算出する方法です。この方法では、以下の手順が一般的です:
①予約:査定の依頼をして日時を設定します。
②現地訪問:担当者が物件を訪れ、内外観、周辺環境、設備の状態などを詳細にチェックします。所要時間は1時間程度を目安にすると良いでしょう。
③査定結果の報告:調査後、通常1週間から10日程度で詳細な査定報告書が提供されます。
訪問査定は、他の方法に比べて結果が出るまで時間がかかりますが、精度の高い査定結果が得られるのがメリットです。現地調査をすることで、物件の特徴や状態等を直接確認できるため、売却を決めている方は訪問査定を必ず受けましょう。
また、担当者と直接会話ができるので、査定で考慮してほしい点や不安点などを伝えることもでき、仲介を依頼する不動産会社を決める基準にもなるでしょう。
査定方法②簡易査定
簡易査定は、物件の基本情報をもとに大まかな査定価格を算出する方法です。基本情報とは、面積や築年数、間取りなどの物件情報やエリアの相場や成約事例等です。簡易査定の流れは以下の通りです。
①情報提供:物件の住所、間取り、築年数などの基本情報をWEB上の申し込みフォームや電話などで不動産会社へ提供します。
②査定価格の提示:通常、数時間から数日以内に査定価格が提示されます。
簡易査定は、現地へ訪問することなく算出しますので机上査定とも呼ばれ、実物の管理状態や損傷具合、騒音や通風など近隣の状況などは加味されません。そのため、訪問査定に比べて精度が低くなりがちですが、大まかな査定価格を短時間で知りたい場合には有効です。初期段階での参考価格として利用するのに適しています。
査定方法③AI査定
AI査定は、人工知能を活用して物件の査定額を算出する方法です。主に過去の成約事例などが算出のもとになります。この方法は、物件の基本情報とメールアドレスを申し込みフォームに入力するだけで査定が可能で、以下に手順をご紹介します。
①情報入力:WEB上の申し込みフォームに沿って物件の基本情報を入力します。
②データ分析:過去の売買データや周辺の市場データをもとにAIが自動的に査定を行います。
③即時結果提示:数秒から数分以内に査定結果が画面上に表示されます。
AI査定の1番のメリットは、即時に結果が得られることです。特に中古マンションは、データ数や類似物件が多く、建物の性能にもさほど差がないため、AI査定に適しています。
AI査定は過去のデータに基づくので、データ量が豊富なものほど精度が高くなる傾向にあります。そのため、過去の取引事例が少ないエリアにある物件や、建物の状況や面積などの条件がそれぞれ異なる一戸建てなどは、データ量が少ない場合が多く、査定の精度も落ちると考えた方がいいでしょう。
査定額を決める3つの要素
不動産査定額は様々な要素によって算出されますが、特に重要なのは「物件の状況」「立地条件」「市場動向」の3つです。以下でそれぞれの要素について詳しく解説していきます。
物件の状況
築年数や間取り、設備、修繕状況などの物件状況は査定額に影響します。どのようなポイントが見られるのか、基本的なものを5つご紹介します。
土地の形状と面積なども、査定額に影響を与える要素です。
一般的に、整形地や角地などの形状が整っている土地は査定額が高くなります。また、土地の面積についても、広い土地ほど査定額が高くなる傾向があります。土地の形状や面積についても改善は難しい場合が多いですが、できるだけ整形や区画整理を行うなど、面積を広く見せる工夫をすることで査定額を上げることができます。
築年数:物件の築年数は、査定額に大きく影響します。築年数の浅い新しい物件は価値が高く評価されやすい一方、古い物件は価値が低くなりがちです。ただし、定期的に適切なメンテナンスやリノベーションが行われている場合は、古い物件でも高い評価を得られることがあります。
建物構造:家が木造なのか、鉄筋コンクリート造なのか等の構造はもちろん、耐震構造や防火性能なども評価されます。特に戸建の場合、家に傾きがある場合は売却において不利になりますので、査定額は大きく下がります。また、外観の状況も査定に影響します。塗装の劣化や破損はないかなどが評価される項目になりますのでおさえておきましょう。
間取り:部屋の数や配置、広さなどの間取りも重要です。市場のニーズに合った間取り(例えば、ファミリー向けの広いリビングや居室数がある等)である物件は、需要も高いため評価も高い傾向にあります。
設備:キッチンや洗面台などの水回りやその他設備の状況も査定額に影響します。例えば、エアコンやキッチンの設備が新しい、バスルームがリフォームされているなどがチェックポイントになります。
修繕状況:定期的にメンテナンスが行われているか、大きな修繕が必要でないかどうかも重要です。修繕履歴が良好な物件は、購入後のリスクが低いため、査定額が高くなる傾向があります。
土地の形状や面積:建物が建っている敷地も査定額に影響を与える要素のひとつです。一般的に、整形地や角地などの形状が整っている土地は査定額が高くなります。また、土地の面積についても、広い土地ほど査定額が高くなる傾向があります。土地の形状や面積についても改善は難しい場合が多いですが、ネックになり得る部分があれば対策するなど工夫しましょう。
立地条件
土地の査定額に大きな影響を与える要素の一つは、立地条件です。
立地条件があまり良くないケースでは、自力での改善はなかなか難しいですが、一般の人は気付きにくい所有者ならではの視点で、交通の便や周辺環境等で需要が高そうなものがないか見直してみましょう。
交通アクセス:最寄り駅やバス停までの距離、主要道路へのアクセスの良さなど、交通の便が良い物件は需要が高いため、査定額も高く評価されます。特に都心部や通勤通学に便利なエリアは人気があります。
周辺環境:周辺環境の治安や騒音、近隣トラブル、景観なども重要です。他の条件が良い物件でも、近隣トラブル等があれば査定額を大きく下げる要因になります。
施設の近さ:コンビニやスーパーなどの商業施設や小中学校、病院、公共施設などへのアクセスも査定額に影響します。これらの施設が近くにある物件は生活の利便性が高く、査定額が上昇する傾向にあります。逆に、工場や墓地、パチンコ店などの施設がある場合は需要が下がる傾向にあり、査定の評価も下がってしまうことがあります。
市場動向
類似物件の成約価格や、エリアの需要と供給のバランスも査定時に見られるポイントです。
類似物件の取引価格:同じ地域や同じ条件の物件が近年どれくらいの価格で取引されているかは、査定の重要なポイントになります。類似物件の取引価格が高ければ、その物件の査定額も高くなります。
需要と供給のバランス: 地域の不動産市場における需要と供給のバランスも査定額に影響します。買い手が多く、売り物件が少ない「売り手市場」では査定額が高くなる一方、逆に売り物件の多い「買い手市場」では査定額が低くなる可能性があります。
不動産査定を受ける際の事前準備
不動産査定を受ける際には、査定方法に応じて適切な準備を行うことが重要です。この章では、先ほどご紹介した「訪問査定」「簡易査定・AI査定」のそれぞれに対して必要な準備について説明します。
訪問査定
訪問査定を受けるためには、詳細な情報と物件の状態を整えることが求められます。以下のポイントを参考に準備しましょう。
物件情報の準備
・権利証や登記簿謄本:所有者情報や物件の正確な面積を確認するために必要です。
・購入時の契約書:物件の購入価格や契約時の条件を把握するために役立ちます。
・設備状況:主要な設備(エアコン、キッチン、水回り設備など)の状況を確認します。
・修繕履歴:過去の修繕やリフォームの履歴をまとめておきます。
・間取り図:契約時や建築時に入手している、正確な間取り図を用意します。
・住宅ローンの残高がわかる書類
物件の整備
・清掃:物件の敷地、外観、室内を出来るだけ綺麗に掃除して、担当者に良い印象を与えましょう。
・修繕箇所のチェック:目立つ修繕が必要な箇所は事前に洗い出しておきましょう。
追加情報の準備
・周辺環境:近隣の施設や交通アクセス等についての情報を整理しておきます。
・市場動向:同じ地域の類似物件の取引価格を調べておくと良いでしょう。
質問事項の整理
・疑問や不安点:事前に質問等をまとめておき、担当者と直接話す際に確認します。
簡易査定・AI査定
訪問査定と同じものが揃っていれば、簡易査定とAI査定もスムーズに受けられます。訪問査定よりも簡易的なものになりますので、詳細な資料が揃ってなくても査定できるケースも多いでしょう。
また、AI査定はオンライン上ですべて完結しますので、安定したインターネット接続環境を整えておくことが必要です。
不動産査定を進める際の注意点
不動産査定を進める際には、以下のポイントに注意することが重要です。事前に注意点を理解しておくことで、スムーズで適切な査定と売却を進めることができるでしょう。
売却スケジュールと売却価格の目安
査定をスムーズに進めるためには、必要書類の準備はもちろんのこと、「売却希望期間」と「売却希望価格」を決めておきましょう。
必要書類については、不動産売買の際にしか使わないような書類も多いため、必要なものがすべて手元に揃っているケースは少ないです。中には、法務局や役所等で取得しなくてはいけない書類が出てくると思っておいた方がいいでしょう。
特に相続で取得した家などは、書類を探すのが大変だったり、取得に時間が掛かってしまうこともありますので、できるだけ早めに準備に取り掛かることをおすすめします。
売却期間については、短期間での売却を希望する場合と、時間をかけてでも高値で売りたい場合とでは、査定や売却の戦略が異なります。一般的に査定から売買契約、引き渡しまでの期間は、スムーズに進んで半年程度が目安です。特に、子供の入学や転勤などで引っ越し時期が決まっている場合は、余裕を持って査定を始める必要があります。
また、売却希望価格は、ご自身で相場を調べた上で現実的な売却希望価格を設定することが重要です。また、査定結果は長期間有効ではありませんので、定期的な査定が必要になることや、あくまで大まかな目安になることを念頭においておきましょう。
相場と査定価格の比較
査定額は、物件の相場価格に明確な基準がないことや、査定の仕方でも異なるなど、不動産会社によって提示される金額が違う場合がほとんどです。1社だけでなく複数社に依頼することで、査定価格や査定の根拠を比較することが大切です。
不動産会社を査定額で比較する際の注意点として、査定額が高いという理由だけで選定するのはおすすめしません。査定時には高い金額を提示して、媒介契約後に売れないのを理由として、すぐに価格を下げる提案を行う不動産会社もいます。
ご自身でも、査定価格と類似物件の取引価格を比較したり、周辺地域で販売中の価格相場を参考にするなど、提示された査定価格が適正かどうか確認しましょう。
また、売却を前提とした査定の場合、査定額と売り出し価格は異なるケースがあります。査定額は、不動産会社が販売を開始してから3ヶ月以内に売れると推測した金額であり、売りに出す時期や需要によって、その価格で売れるかどうかが変わってきます。
売り出し価格とは、実際に不動産を売りに出すスタートの価格設定です。不動産会社の担当者と相談して決定しますが、購入希望者からの値引き交渉も前提とした価格設定にするのがおすすめです。
物件の不具合と瑕疵の告知義務
物件の不具合や瑕疵について、査定を行う不動産会社にきちんと伝えることが重要です。
土地・建物に何らかの欠陥があることを瑕疵(かし)といい、具体的には設備の故障や雨漏り、シロアリ被害、事故や事件が発生したことがあるなどです。
不動産売買では、売却時に不具合や瑕疵の事実を買主に告知する義務があります。売却にとって不利な情報は隠してしまいがちになりますが、告知していないとのちのち大きなトラブルにつながってしまう可能性があります。
「契約不適合責任」といって、家を売却する際に雨漏りなどの不具合を伝えていない場合、買主は売主に対して損害賠償や代金減額の請求ができるというものです。
それは不具合や瑕疵の修理が完了して、すでに直っている場合でも同じで、その履歴は告知義務に含まれます。修理が適切に行われているか、将来的な修理や不具合が生じる可能性があるか等、買主にとって重要な情報になるためです。
物件に不具合や瑕疵がある場合はしっかり告知し、トラブルのない売却につなげましょう。