運営がうまくいかないアパートや引き継いだアパートを売却する方法を知っていますか?
思わぬトラブルや低価格での売却を避けるためには、売却に関する知識が必要不可欠です。
この記事では、アパートの売却方法や不動産会社との契約など、売却の全体の流れを丁寧に解説します。
不動産会社の選び方や売却時の注意点にも触れていますので、アパート売却を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
アパート売却の方法
オーナーチェンジして売る
オーナーチェンジとは、入居者が住んでいる状態でアパートを売却する方法です。
つまり、オーナーとしての権利とアパートの両方を売却する売り方です。
メリット
- 時間をかけずに売却できる
- 入居者に立ち退きを要求しなくてよい
- 入居者への立ち退き料を支払わなくてよい
- 売りに出している時間も入居者からの家賃収入を得られる
デメリット
- 空室が目立つ場合、新たな入居者を募集する必要がある
- 買い手が少ない
オーナーチェンジでは、契約内容は新たなオーナーに引き継がれるため、入居者に大きな影響がありません。
通知の義務は定められていませんが、入居者には事前に通知することが望ましいでしょう。
入居者を退去させた後に売る
一方、アパートをすべて空室にして売る方法もあります。
購入希望者はアパートをさまざまな目的で使用できるため、買い手がつきやすいという特徴があります。
以下に当てはまるアパートは、オーナーチェンジより入居者を退去させる方が良い場合があります。
- 入居率が低い
- 家賃収入が見込めない
- 土地の価値が高い場所にアパートがある
メリット
- 買い手の需要が多い
- 購入希望者に内覧してもらえる
- 投資用物件または居住用物件として売り出せる
デメリット
- 入居者への立ち退き料を支払う必要がある
- 立ち退きに関するトラブルが発生する可能性がある
アパート売却の流れと手順
ステップ1:売却前の下準備
売却価格の査定を取る
アパートを売却する前の準備として、売却価格の査定を取りましょう。
査定方法は2つあり、「机上(簡易)査定」と「訪問査定」があります。
机上(簡易)査定
不動産会社サイトなどで無料で査定できます。
土地や建築年数、広さなどアパートに関する情報を入力することで、おおよその査定を取ることができます。
訪問査定
不動産会社に依頼し、担当者がアパートや土地を実際に訪問する査定です。
机上査定よりも正確な価格を知ることができます。
売却のタイミングを考える
時間に余裕がある場合は、売却のタイミングも考えましょう。
売却価格を左右する入居率や立地などの要素の他に、以下の点も考慮する必要があります。
- その土地周辺の価値が上がっているか
- 過疎化が目立っていないか
木造アパートの場合は法定耐用年数が22年と決められているため、売却のタイミングを考える目安にしてください。
ステップ2:売却活動の開始
不動産業者との契約
査定後は、不動産会社と「媒介契約」を結びます。
媒介契約は、売主と不動産会社の約束のことで、法的に義務付けられた売却依頼に関する契約です。
3つの種類あり、契約の拘束力が異なります。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任契約 | |
契約できる不動産数 | 2社以上可能 | 1社のみ | 1社のみ |
売主から買主への 直接的な取引 |
可能 | 可能 | 不可能 |
不動産会社からの 活動報告 |
任意 | 最低2週間に1回 | 最低1週間に1回 |
不動産会社への REINSへの登録義務 |
任意 | 義務あり (契約後7日以内) |
義務あり (契約後5日以内) |
契約期間 | 任意 | 最大3カ月 | 最大3カ月 |
実際の販売活動と交渉
アパート売却のための販売活動として、不動産会社は以下を行います。
- チラシやインターネット、広告などの作成・宣伝活動
- 内覧のための準備
- 内覧会の実施
- REINSへの登録
販売活動を開始しても購入希望者が現れない場合は、価格や宣伝方法に関して不動産会社に交渉してください。
また、購入希望者側から条件や値引き交渉がくる場合もあります。
ステップ3:売却完了後の手続き
アパートの引き渡し
アパートの引き渡しでは、アパートを支配する権利である「所有権」を買い手に移します。
引き渡し当日の流れは以下の通りです。
- アパートの最終確認
- 本人確認
- 所有権移転登記などの登記
- 決済や清算
- 領収書の発行
- 必要書類や鍵の引き渡し
- 司法書士や不動産会社への報酬支払い
引き渡しでは、売主と買主、不動産会社の担当者のほか、司法書士が立ち合います。
金融機関の担当者が参加することもあります。
確定申告
アパート売却で利益が出た場合、確定申告をする必要があります。
利益が出なかった場合は確定申告の必要はありません。
損失が大きい場合は、条件を満たしていれば確定申告で控除できる可能性が高いため、しっかり知識を蓄えておきましょう。
譲渡所得は「譲渡価格-譲渡費用-取得費」で算出され、アパートの所有期間によって区分が異なるため、国税庁ホームページをご確認ください。
アパート売却時の注意点
売却の理由を曖昧にしない
アパートの売却は、信頼ありきで成り立ちます。
そのため、不明瞭な点が多いと違和感に繋がり、買い手に不信感を与えます。
離婚などの個人的な理由を伝える必要はありませんが、アパートで起こった事故や事件、アパートの欠陥などは事前に伝えましょう。
万が一意図的に隠した場合、瑕疵担保責任として契約解除になるほか、損害賠償が請求される可能性もあります。売却理由は曖昧にせず、明確にしてください。
売却価格でローンは返済できるか確認する
アパートローン残高が残っている場合は、アパート売却の「売却益」で返済できるか確認しましょう。
売却益で返済ができない場合は「売却益-ローンの残高」で残った差額を一括で支払うことになります。
これは、ローンが残っている状態だと金融機関がアパートに定める抵抗権を抹消できないためです。
アパート売却の費用や不動産会社への報酬もあるなか、手元には売却した金額がすべて入るわけではありません。
さまざまな費用を含めてローン返済が可能なのか、事前に不動産会社に相談・確認してください。
既存不適格物件ではないか確認する
売却したいアパートが、既存不適格物件ではないかを確認しましょう。
既存不適格物件とは「著しく保安上危険」な建築物のことで、国土交通省は以下のように定義しています。
- 建築物において、劣化や自然災害等が原因で倒壊する等する可能性が高い
- 建築物が崩壊等した場合、通行人等に被害を及ぶ可能性が高い
既存不適格物件の場合、金融機関からの融資が得られない可能性があります。
その場合、買主側が行う購入費の資金調達の難易度は上がり、売買がなかなか成立しない状況になり得ます。
不動産買い取り業者の選び方
投資用物件に強い
不動産買い取り業者を選ぶ際は、不動産会社の投資用物件の実績に注目しましょう。
アパート売却は個人・法人問わずに投資用物件として買い取る可能性があり、買取実績を残している不動産会社は良い条件で売ることができます。
不動産会社にも得意・不得意があるため、自分の物件に合う業者選びはとても重要です。
アパートを売却したい場合は、アパートの買取実績を不動産会社選びの基準にすることがおすすめです。
価格交渉に応じてくれる
不動産買取では、訪問査定で提示された金額が売却価格になるケースがほとんどです。
納得できる価格で売却するために、訪問査定後も価格交渉に応じてくれる不動産会社を選びましょう。
アパートを売却するまでには、さまざまな交渉や手続きがあります。
自分に合わない・非協力的だと感じた場合は、価格交渉や相談、その他の疑問を受け入れてくれる、良心的な不動産会社を検討しましょう。
免許の更新回数が多い
不動産会社を選ぶコツは、宅地建物取引業者免許の更新回数の多さに着目することです。
複数の都道府県に事務所がある場合は「国土交通大臣免許」、ひとつの都道府県にある場合は「都道府県知事免許」と表記されます。
免許の右に、数字が書かれた(カッコ)があり、この数字は宅地建物取引業者免許の更新回数です。
(カッコ)の中の数字が大きい不動産会社は信頼度が高いうえ、実績やノウハウも多いといえます。
売却したいアパートを速やかに買い取ってもらいたい場合は、アパートの所属する都道府県の都道府県知事免許を複数回更新している不動産会社を選びましょう。
行政処分歴がない
アパートを売却する際には、行政処分歴のない不動産会社を選びましょう。
「国土交通省ネガティブ情報等検索システム」の「検索メニュー」にある「事業者名」「都道府県」を入力すると、行政処分歴を確認できます。建設業者・宅建業者等情報検索システムもおすすめです。
「宅地建物取引業者」を選択後、商号や名称、免許番号を入力すると、不動産会社の情報が確認できます。
まとめ
アパート売却には、オーナーチェンジと全室空室の状態で売却する方法のふたつがあります。
売却を考える際には、机上査定と訪問査定を用いてアパートの価値を把握しましょう。
査定後は不動産会社と契約を結び、最長3カ月間売却活動を行います。
買い手が現れたらアパートや必要書類などを引き渡し、売却完了です。
アパートは投資用物件としても価値があるため、アパート買取に特化した不動産会社を選ぶと成功しやすいと言えるでしょう。