中古住宅が売れない現状
中古住宅市場の現状
中古住宅市場は、少子高齢化と人口減少の影響を受け、拡大傾向にあるのが現状です。また、地価の高騰などにより新築住宅の購入が難しくなっていることで、新築の需要は減少し、代わりに価格の安い中古住宅への関心が高まっています。
また、税制優遇措置やリフォーム支援金など、中古住宅の流通を促進する政策が行われていることも後押しになっているといえるでしょう。
しかし、中古住宅だからと言って必ずしも売れるという状況にはありません。立地条件が悪い中古住宅や老朽化している空き家なども多く存在し、そのような物件は売れにくいと言えます。
しかし今、中古住宅市場が拡大している好機ではあるので、売れない中古住宅でも対策や工夫次第で売却できる可能性は十分にあります。今回の記事を参考に、売れない原因を把握し、その改善策を見出しましょう。
なぜ中古住宅が売れないのか
この章では、中古住宅が売れない場合の原因として考えられる5つのポイントについて、1つずつ詳しく解説していきます。
❶価格が相場に合っていない
売却を考えたとき、少しでも高く売りたいと価格にこだわるのは、売り手として当然の心理だと思います。しかし、あまりにも相場からかけ離れた高い価格設定だと、なかなか買い手が見つからないというのも当然の話なのです。
売却したい家の状態や価値を知り、相場に合った価格、もしくは相場より手頃な価格で設定すると買い手が見つかりやすくなるケースもありますので、まずは価格設定を見直しましょう。
❷人気のない立地である
交通アクセスが不便な立地にある場合、買い手が見つかりにくい傾向にあります。特に都心部から離れた地方や田舎の場合は、コンビニやスーパーなどの商業施設も少なく、人気のない立地であるといえます。
立地を変えることは不可能なので、こちらも地域相場に合った価格設定になっているか、もう一度見直してみましょう。便利な立地でなくても、相場に合った価格設定であれば買い手が見つかる場合もあります。
❸家自体に問題がある
家(建物)の状態やその敷地自体に何か問題があると、買い手側が購入を躊躇する原因になり売れにくくなります。中でも、建物が古すぎて売れないというのは、家が売れない理由で最も多いといえます。
・築年数が古く、躯体や屋根に損傷がある
・キッチンやトイレなど水回りの設備が古い
・近隣トラブルなど周辺環境に問題がある
価格との兼ね合いにもよりますが、一般的に上記に該当する項目があると売れない理由になりますので、補修工事やリフォーム等を検討したり、家(建物)を解体して更地として売却する方法も検討すると良いでしょう。
また古い家の場合、旧建築基準法で建てられた建物であることが多く、現在の建築基準法だと建物を解体しても新しい家が建てられない土地になっている場合があります。
この場合、家が古く住めない状況だとすると売却は困難です。家を建てる以外にも、駐車場や資材置き場として販売することもできますので、他の活用法で売却を考えましょう。
❹内覧時の対応が悪い
家の価格設定に問題がなく、内覧の申し込みがあっても売却につながらない場合は、内覧時の準備や対応が悪いことが原因になっているケースがあります。
買い手側は、間取りや広さについては物件資料等で内覧をしなくても確認が取れますので、内覧では主に部屋の雰囲気や劣化具合を見たり、物件資料と相違がないかなどを確認しようとする方が多いです。
家の中にゴミが散乱していたり、整理整頓や掃除が行き届いていないなどが原因で、家の印象を落としてしまう可能性がありますので、できるだけ部屋を明るく・広く・清潔に見せることがポイントです。
❺不動産会社に問題がある
不動産会社にも得意不得意があったり、積極的に販売活動をしてくれていないなど、不動産会社に問題があって売れないケースというのも存在します。
売却を依頼している家が不動産情報サイト等にきちんと登録されているか、こまめに活動報告をしてくれているか等、まずは確認してみましょう。
相談や指摘をしても状況が改善されなければ、不動産会社を変えてみることをおすすめします。
中古住宅が売れない課題
中古住宅が売れない課題とは
中古住宅が売れないからといって放置を続けると、多くのデメリットやリスクを抱えることになります。まずは固定資産税の支払いが続くという点です。毎年1月1日の時点で登記簿上の所有者になっている方には、固定資産税の納税義務があり、たとえその中古住宅に居住していなくても所有者と認められれば支払いが必要になります。
また、中古住宅が空き家の状態のまま売れないのであれば、家の劣化が懸念されます。家は人が住んでいないと、老朽化が急速に進んでしまうという特性があります。風通しが悪くなることで湿気や結露が起こり、カビや腐食の原因になったり、通水していないことで台所やトイレから害虫が侵入したり、悪臭が発生したり、想像以上に家を傷めてしまうことになるのです。さらに放置してしまうと、敷地に雑草が生い茂るなど景観も悪化し、犯罪を誘引する可能性も出てきます。
中古住宅を売る為に必要な対策
中古住宅を売りに出してから売れるまでの期間は、3ヶ月から6カ月程度が一般的ですが、条件によっては長期戦となることもあります。売りに出している間も固定資産税などのコストが発生しますので、不動産会社に任せきりになるのではなく、売却のために出来ることを都度行っていくことが大切です。
ここでは、売却につなげる見直しポイントを5つ詳しく解説していきますので、出来ることがあれば実施・検討してみてください。
❶価格を下げる
価格は売却につながる大きな要素です。価格が家の状態や価値に見合ったものか、相場からかけ離れていないか、再度見直しを行いましょう。家は年月が経つだけで資産価値が下がり、価格も下がります。できるだけ高く売りたいからといって値下げしないでいると、その分価値が下がってしまうので、早めに値下げして売ってしまった方が良いという考え方もあります。
❷見栄えを改善する
家の築年数は変えられませんが、見た目をきれいに整えることはできます。ハウスクリーニングを入れて、部屋や水回りの掃除を行ったり、壊れたり傷んだりしている箇所の補修工事やリフォームをするなど検討してみましょう。
建物はもちろん、敷地も見た目に大きく影響するポイントなので、雑草の除去や不用品の処分なども忘れてはいけません。
しかし、大規模なリフォームなどで価格が高くなるのはあまりオススメできません。リフォーム前には必ず不動産会社と相談するようにしましょう。
❸不動産会社を変える
上記売れない理由でも説明しましたが、家の売却成功には不動産会社の販売力も大きく関わっています。不動産会社を変える際は、物件を売るためのノウハウを多く持っているか、地域周辺の市場や相場等に詳しいか、積極的に販売活動を行ってくれそうかなどに注目し、信頼できる不動産会社を探しましょう。
❹売却方法を変更する
家(中古住宅)として販売するよりも、古家付き土地として土地をメインに販売したり、家(建物)を解体して土地だけで販売する方が売れやすくなる場合があります。築年数の古い家の場合はなおさらです。
しかし、家(建物)を解体する場合は、解体費が掛かったり、固定資産税が高くなったりというデメリットもありますので、その点を考慮した上で判断しましょう。
❺買取を依頼する
家がどうしても売れない場合や、すぐに手放したい場合は、不動産会社に買い取ってもらう方法があります。
売却が難しい家でも、いろいろ工夫や対策をしてまで買い手を探す必要がなく、価格の折り合いが付けばすぐに不動産会社へ売却できるのがメリットです。しかしその反面、市場価格よりも安くなる傾向にあることや、条件によっては買取を断られるケースもありますので、まずは何社か探してみましょう。
中古住宅の価値を再発見しよう
中古住宅の魅力とは
では、中古住宅には新築住宅と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。
一見、古いなど消極的な印象を持ってしまいがちな中古住宅ですが、その魅力はたくさん存在します。その中でも、買い手が特に魅力に感じる3つのポイントについてご紹介いたします。
❶価格が手頃である
新築住宅と比べて手頃な価格で購入できるという点は、中古住宅の最大の魅力と言ってもいいでしょう。中古住宅は、築年数が古くなるにつれて建物の価値が下がっていくので、
新築住宅と同じエリアや広さであっても、中古住宅の方が低価格である場合がほとんどです。
❷エリアの選択肢が豊富
住まい探しを行う上で、まずエリアを重視される方は非常に多いです。中古住宅は、土地が豊富な時期に建てられているものが多く、住みたいエリアに合った物件を見つけやすいという魅力があります。
❸住み替えがしやすい
中古住宅は価格が手頃であることはもちろん、売買取引の柔軟性や流通性も高いことから、住み替えしやすいという点も魅力の1つです。また、新築から中古に住み替えと、中古から中古に住み替えするケースでは、後者の方が値下がりしにくいので、資金繰りもしやすいと言えます。
リノベーションの可能性
若年層を中心に中古住宅への関心が高まっている理由のひとつとして、リノベーションの普及があげられます。
リノベーションとは、家の基礎や主要な構造部分を残して解体し、間取りや内装の変更したり、水回り等の設備を入れ替えるなど、住宅の性能を現代のレベルまで向上させたり、価値を高めたりする大規模な工事です。大規模な工事ではありますが、1から新築を建築するよりも費用を抑えられるというメリットもあります。
新築住宅よりも流通が豊富な中古住宅は、希望のエリアで物件を探しやすく、かつ価格も安価で手に入るという魅力はもちろん、さらに内装などについてもリノベーションで自分の好きなように変更できることが、中古住宅市場の活性化につながっているといえるでしょう。
このような点をふまえると、売却前の大規模なリフォームやリノベーションは実施しない方がいいと言えます。買い手は、自分で好きなようにリノベーションしたいと考えている場合も多いので、リフォームして価格が高くなるよりも、リフォームせずに安い価格の方が売れやすいという傾向もありますので注意が必要です。
中古住宅リノベーションの導入例
現在のリノベーションでは、間取りや内装の変更だけでなく、耐震性や断熱性などの性能面も高めることが可能です。築年数の古い住宅でも、地震に強く、暑さや寒さにも影響されにくい、快適な住まいにつくり変えることができるのです。
実際に、国内では築40年以上の中古住宅も数多くリノベーションされています。
では、海外のリノベーション事情はどうなのでしょうか。例えばアメリカでは、売り手がリノベーションをしてから売却するスタイルが主流となっています。日本のように自分好みにしたいと考える買い手が少なく、購入する時点ですぐ住めるような家を求める傾向があるためです。国が変われば、住まいに求める条件も異なりますね。