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2024.01.10

アパート売却は立ち退きの正当事由にならない!交渉方法や注意点を理解しよう

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アパートの売却を検討する上で、入居者の立ち退きについては重要なポイントの1つですよね。

入居者がいるアパートを相続したという方も同様に、立ち退きについては必ず理解しておいた方が良い知識と言えます。

 

特に、築年数が古くなってきたアパートや相続したけど不要なアパートなどは、早期に売却してしまうのが得策です。

 

そこで、今回の記事ではアパート入居者の立ち退きについて、必要になる正当事由や立ち退き交渉の流れや方法・注意点について詳しく解説していきます。

 

立ち退きは、大きなトラブルや多額の出費にもつながりかねないので、この記事を読んでしっかり理解しておきましょう。

 

アパートの立ち退きには正当事由が必要

まず、アパートなど物件の立ち退きに必要となる「正当事由」について詳しく解説していきます。

 

正当事由とは

正当事由とは、賃貸借契約において貸主側から解約、または契約更新の拒否をするために必要となる「事由」つまり理由のことを指します。一方、借主側は期間内解約条項があれば、特に理由を必要とせず解約することができます。

どのような事由であれば、正当事由になるかは裁判所に委ねられますが、貸主による土地・建物使用の必要性や借主側の事情など、貸主・借主双方の状況を総合的にみて判断されます。

しかし、借主は借地や借家を生活の拠点としていることがほとんどなので、どちらかというと借主側の状況が重視されるのが一般的です。貸主から急な明け渡し要求があれば、借主は多大な苦痛を伴うことが予測され、賃借人保護が考慮されるためです。

 

ただし、借主が長期間にわたって家賃を滞納していたり、貸主に無断で転貸しているなどの場合は、そもそも借主の契約違反となるため、貸主は正当事由がなくても借主に明け渡しを請求することができます。

 

不動産の賃貸契約と正当事由

先述した通り、日本では借地借家法により入居者の権利が強く保護されているため、正当な理由がない限り貸主側からの解約はできないことになっています。

 

賃貸借契約の種類が定期借家契約である場合には、事前に定めた契約期間が過ぎれば解約されますが、一般的な賃貸借契約の場合は、貸主側から解約を申し出るには「正当の事由」が必要です。

 

借地借家法では、下記のような5つの理由を正当事由として有効と定めています。

その中でも特に①が主たるものとして判断され、②〜④は①に加えて判断される従たるものとされるのが一般的です。

 

①土地・建物の使用を必要とする事情があること

居住や営業、建て替え、再開発などの必要性があるなど

 

②債務不履行などの従前の経過

賃貸借契約締結時の経緯や修繕のために必要な費用など

 

③老朽化しているなど建物の現況

建物の老朽化具合や契約に定められた目的で土地建物が使用されているかどうかなど

 

④土地・建物の利用状況

建物の利用頻度や契約に定められた目的で土地建物が使用されているかどうかなど

 

⑤明け渡しを条件として財産の給付を行うこと

貸主から借主側の損失補填に十分な立ち退き料の支払いがあるかなど

 

アパートの売却が立ち退きの正当事由となる場合

一般的に、物件の売却だけでは正当事由に該当しないことがほとんどです。

ただし、物件を売却する理由によっては正当事由と認められるケースがあります。

この章では、物件の売却が立ち退きの正当事由と認められた実例についても紹介していきます。

 

遺産分割のための売却

遺産分割のための物件売却は、立ち退きの正当事由となる場合があります。

遺産分割は、相続人が故人の財産を適切に分けるために行われますが、複数の相続人がいるなど場合には、不動産の共有や管理に関してトラブルが生じやすくなります。

 

そのため、相続人同士の利益調整や円滑な管理、負担解消のために立ち退きが認められるケースがあります。

 

相続税支払いのための売却

相続人が相続税の支払いを優先させる必要がある場合、物件売却の立ち退きが正当事由となることがあります。相続財産には、不動産や株式、預貯金などが含まれますが、特に高額な不動産の評価額は、相続税の支払いに大きく影響します。

そのため、物件を売却しなければ相続税の支払いが出来ないなどの状況であれば、正当事由と認められるケースがあるのです。

 

実際に、相続税のほとんどが相続したビルの評価で、賃借人が立ち退いた状態でこのビルを売却しなければ相続税の支払いができないという事案で、正当事由と認められたという判例があります。

 

借金返済のための売却

借金返済のための資金調達が必要で、賃借人の立ち退きと物件売却が認められた事例があります。しかし、同じ借金返済でも正当事由が認められなかった事例もあります。

 

例えば、物件の売却をしなくても借金返済の方法が他にある場合や、貸主からの立ち退き料提示額が少なかったなどの場合です。実際に、飲食店の経営をしていた借主が、立ち退きによる営業損失が大きくなるのに対し、賃貸人側が提示した立ち退き料の金額が少なすぎたことで、正当事由が認められなかったという事例があります。

 

また、借金返済などで貸主にお金が必要な場合でも、立ち退き料は特に安くならない傾向がありますので覚えておきましょう。

 

立ち退き交渉の流れ

立ち退き交渉は、なかなか合意してくれない入居者が出たり、高額な立ち退き料を請求されたりなど難航する可能性が大いにあります。そのため、立ち退き交渉に必要な流れを把握して計画することが重要です。

この章では、立ち退き交渉の流れを4つのステップに分けて詳しく解説していきます。

 

賃貸借契約を更新しない旨の通知を送る

基本的に貸主側からの正当事由による解約通知は、解約日の6か月前に行わなければいけません。

通知は必ず書面で行う必要があり、書面で通知した記録を残しておくためにも、内容証明付きの書面で送ることをおすすめします。

 

突然貸主から賃貸借契約の更新をしない旨の書面が届くことで、感情的になってしまう入居者が出てくる可能性もありますので、前もって口頭で知らせておくなどの配慮をすると良いでしょう。

 

交渉を行う

立ち退きは、書面で通知を送れば完了というわけではありません。入居者のもとへ訪問し、立ち退きを求める「正当事由」を伝える必要があります。

 

貸主側の主張を伝えることに意識がいきがちになりますが、入居者側の事情をよく聞くことも大切です。

入居者側が引越しを決断するにあたって、何が問題になっているのかを見極め、その問題を1つずつ解決することが立ち退きへの近道です。

 

また、交渉時には解約の期間や立ち退き料、引っ越し費用などの交渉も行わなければいけません。

立ち退き交渉では、貸主側の説明に嘘や隠し事があると、交渉の失敗やトラブルにつながる可能性が高くなりますので注意してください。

 

 転居先をあっせんする

入居者が立ち退きをしやすいようなサポートをすることは、立ち退きを円滑に進めるのに役立ちます。

特に、古いアパートには高齢の入居者も多く、引越し先の物件を探すのも一苦労です。入居者側の希望も踏まえ、賃貸物件の資料を用意したり引越しプランの用意など、出来ることのサポートを心掛けましょう。

また、もし他にも賃貸物件を複数所有している場合には、交渉段階で他の物件へ斡旋するのがおすすめです。所有する他の物件へ斡旋することは、借地借家法の「財産の給付」に該当するため、立ち退き料の削減にも役立ちます。

立ち退き交渉は、最低でも立ち退きの2ヶ月前までには合意を得る必要があります。転居先の斡旋を行う場合は、最低でも3ヶ月前までに立ち退きの合意を得て部屋探しを行いましょう。

 

明け渡しに関する取り決めを行う

立ち退きは、入居者が明け渡しに合意して初めて成立します。入居者と立ち退きについて合意できたら、のちのトラブルを避けるために合意内容を書面に残しておくことが大切です。

 

合意書には、立ち退き料の支払い時期や明け渡し日、明け渡しに伴う費用の負担額等を明記しておく必要があります。

 

【立ち退き合意書の記載事項例】

・賃貸借契約解約の合意

・明け渡しまでの猶予期間

・残存物の取り扱い

・立ち退き料

・契約終了後の期間に対応する使用損害金

・敷金の返還

 

立ち退き料の目安

この章では、立ち退き料の計算基準やその費用内訳についての基本情報をご紹介します。

 

立ち退き料の計算基準

立ち退き料に明確な決まりはありませんが、目安として下記2パターンで算出するのが一般的です。

新居へ入居するための費用については、次章でさらに詳しく解説しています。

 

【立ち退き料の目安】

・家賃の6カ月分~1年分

・新居へ入居するための費用

 

入居者側に債務不履行がある場合や、アパートの老朽化がひどい場合などは、交渉次第でもっと安い価格で済むこともあります。

 

また、あくまで上記の立ち退き料は目安です。

立ち退きを求める理由や、貸主や借主の事情によって大きく変動し、場合によっては多額の立ち退き料になってしまう場合も少なくありません。実際に立ち退き交渉をする場合は、不動産問題に詳しい不動産会社や弁護士へ相談してから行うのが良いでしょう。

 

費用内訳

立ち退きが決まった入居者は、新居への引越し費用など様々な費用が必要になります。立ち退き料で補填すべき費用として挙げられるものを以下にピックアップしておきます。

 

・新居へ入居するための費用

敷金(家賃2ヶ月分)・礼金・仲介手数料(家賃1ヶ月分×消費税)・火災保険料などに加えて、さらに家賃1ヶ月分を補填するのが一般的です。

 

・引越しにかかる費用

引越しする時期や場所により費用は異なりますが、1世帯分の引越し費用は10万円前後を目安にするといいでしょう。

 

・ネットや電話環境の整備、エアコン等の移設費用

こちらは、引越し先によって不要になる場合もありますが、業者依頼に必要な2万円程度を想定しておくといいでしょう。

 

立ち退き交渉のポイント

最後に、スムーズな立ち退き交渉を行うためのポイントや注意点について解説します。

 

テナントの権利を理解する

飲食店や小売業の店舗などである場合は、店の営業が止まることによる損失や常連客を失ってしまう可能性、移転による売上減少の可能性があるなど、店側が受ける損害をしっかりと考慮する必要があります。そのため、立ち退き料は高額になる場合が少なくありません。

 

一方で、倉庫など業連客等への配慮が不要なテナントは、移転による支障が比較的小さく思えますが、移転のために一定の広さがある物件が必要であったりなど代替物件での懸念が出てきます。それぞれテナントの特性を事前に理解して交渉にのぞみましょう。

 

立ち退きまでの期間は半年以上を目安に

貸主の都合で入居者に立ち退きを要求する場合は、賃貸契約の契約期間満了の1年前から6カ月前までに勧告し、交渉を始める必要があります。

 

6カ月前を過ぎてから勧告を行なっても立ち退きを認められない場合がほとんどであることや「正当事由があれば、必ず立ち退いてもらえる」わけではありませんので、そこを踏まえて交渉にあたりましょう。

 

引っ越し費用などの実費に迷惑料を加算

貸主からの立ち退き依頼は、入居者にとって多大な苦痛や負担を伴うことが多いため、迷惑料を立退料に加算して含めるケースがあります。なかなか立ち退きに合意してくれない入居者がいる場合は、家賃1,2ヶ月分程度の加算を想定しておく必要があるでしょう。

 

ただし、状況によっても異なるので立退料の金額に迷った際は、弁護士や不動産会社などの専門家に相談するのが確実です。

 

スムーズに立ち退きや売却を進めるための近道

これまで解説してきた通り、貸主から借主へ立ち退きを依頼する際には正当事由が必要になり、立ち退き交渉や引っ越しのサポート、立ち退き料の設定など様々なタスクをこなす必要があります。また、正当事由や借主側の過失による立ち退き要求であったとしても、なかなか応じてもらえないなど難航するなどのケースも多く、最悪の場合、裁判沙汰になってしまったり多額の立ち退き料を払うはめになってしまったりと、労力をかけても円満に解決するとは限りません。

 

そのようなことを踏まえると、立ち退き交渉は不動産会社や弁護士に代行してもらうのが安心です。

当事者同士で交渉するよりも、第三者が入ることで感情を入れずに交渉を進められたり、早く話がまとまったりなどのメリットがあります。デメリットとしては手数料があげれらますが、トラブルや交渉の煩わしさを考えると賢い選択といえるはずです。

 

弊社「S plus home(エスプラスホーム)」では、札幌や札幌近郊の不動産売却の仲介や買取を行っています。アパートの売買についてもご相談や査定についても無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

代表取締役浜谷 卓

一つ一つのお取引を大切にし、必ずご満足のいくサービスをご提案致します。

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