相続したアパートをどうするかは、大きな決断の一つです。
「そのまま経営を続けて、家賃収入を得ながら将来を考えるべきか」「売却してまとまった資金を手に入れるべきか」、はたまた「建て替えや他の活用方法はないだろうか」など、検討すべきポイントはたくさんあります。
どの選択肢がベストなのかは、物件の状態や立地、オーナーの資金状況やライフプランによって異なります。
本記事では、相続後のアパート運用について、それぞれのメリット・デメリットを整理しながら、後悔のない道を選ぶための考え方をご紹介します。
相続したアパートを経営するメリット
家賃収入を得られる
相続したアパートをそのまま経営すれば、最初から家賃収入を得ることができます。
建物や部屋の設備が整っている場合、大きなリフォーム費用をかけなくても、すぐに家賃が入ってくる可能性があります。
銀行からローンを組む必要がないときは、初期投資を抑えながら収益をあげられる点が大きな魅力です。
定期的に家賃収入が入れば、生活や老後の資金にゆとりをもたらしてくれるかもしれません。
将来的に売却できる
相続したアパートは、「今は経営を続けながら、必要になったら売却する」という選択肢も残されています。
安定した家賃収入を得つつ、いざというときには現金化できる資産になるのです。
立地がいい物件や入居率の高いアパートなら、売却時に想定以上の値段がつく可能性も考えられます。
すぐに売る予定がなくても、資産のひとつとして所有しておけば、将来的なライフプランに合わせて柔軟に対応できるでしょう。
相続したアパートを経営するデメリット
管理に手間とコストがかかる
アパート経営をするとなると、入居者募集や退去手続き、建物の清掃や設備の修繕など、さまざまな管理業務が出てきます。
入居者の募集や退去手続き
新しい入居者を見つけるために広告を出したり、内見の対応をしたり、契約書の作成・更新を行ったりします。
入居者が退去する際には、退去立ち合いや敷金精算なども必要になります。
こうした手続きのたびに時間や労力がかかり、業者や不動産会社に代行を依頼すれば、その分の費用が発生します。
建物の清掃・メンテナンス
廊下や階段、ゴミ置き場など共用部分の清掃を定期的に行わないと、建物全体のイメージが悪くなり、入居率に影響が出ることがあります。
また、外壁や屋根の修繕、空調や給排水設備などのメンテナンスには、まとまった費用が必要になる場合もあります。
これらを後回しにして建物が傷んでしまうと、さらに大きな修繕費がかかるリスクが高まるので注意が必要です。
クレーム対応やトラブル処理
入居者からのクレーム内容によっては、設備の不具合だけでなく、騒音問題やゴミ出しルールの違反など多岐にわたる可能性があります。
オーナー自らが対応に追われると時間とストレスがかかりますし、トラブルの規模によっては弁護士の力を借りる必要が出てくることもあります。
管理委託料
こうした管理業務を管理会社に委託すると、手間は大幅に減らせますが、管理委託料として毎月一定の費用がかかります。
委託料の金額はサービス内容や地域、物件の規模などによって変わりますが、家賃収入が減ったり予期せぬ出費が重なったりすると、思ったよりも利益が伸びにくいケースもあります。
何も対策しないまま放置していると、建物の劣化が早まったり、入居者の満足度が下がったりするため、結果的に家賃収入が減る原因になることもあります。
空室リスクと収入の不安定さ
アパート経営では、空室が出るとその月の家賃収入が減ってしまいます。
建物が古くなったり、周辺の環境が変わったりすると、思うように入居者が集まらなくなることもあり得ます。
さらに大きな修繕費用がかかるタイミングが重なると、家賃収入だけではまかないきれない場合もあります。
そうなると、経営そのものが厳しくなるので、常に建物の状態や市場の動向をチェックしておくことが必要になってきます。
ローンも相続する
相続したアパートにローンが残っている場合、その返済義務も一緒に引き継ぐことになります。
亡くなった方が組んでいたローンを、相続人がそのまま払っていかなければいけない状況になるのです。
返済負担が大きいと、家賃収入とローン返済のバランスをとるのが難しくなる可能性があります。
金融機関によっては名義変更や条件の再確認が必要になることもあるため、事前にしっかり調べておきましょう。
他の選択肢の検討
売却のメリット・デメリット
相続したアパートを売却すると、まとまった現金を手にできるのが最大のメリットです。
ローンが残っている場合でも、売却益で返済を済ませてしまえれば、経営リスクから解放される可能性があります。
売却に踏み切ることで、不動産管理の手間や修繕費の心配がなくなるのも大きなメリットです。
その一方で、不動産を手放すことで将来的な家賃収入という安定的な資産を失うリスクがあります。
もし急いで売却したいときや、老朽化が進んでいる物件だと、希望通りの価格がつかないかもしれません。
売却がおすすめのケース
・アパート経営に時間や労力をかけられない、あるいはノウハウがない場合
・ローン返済負担が大きく、早めに資金化したい場合
・他に有望な投資先や資金需要があり、不動産を現金化して活用したい場合
建て替えのメリット・デメリット
古いアパートをいっそ建て替えることで、最新の耐震基準や設備を取り入れ、新築同様の物件として再スタートできます。
入居者が付きやすく家賃収入も上げやすいため、結果的に経営が安定する可能性があります。
また、新しい物件であれば修繕費や管理にかかる負担が軽減し、長期的に見ればメリットが大きいでしょう。
ただし、建物の解体や新築工事には高額な費用がかかるため、資金計画をしっかり立てる必要があります。
借り入れをする場合、完済までのキャッシュフローを考えながら経営を続けなければならず、リスクと隣り合わせになる点は注意が必要です。
建て替えがおすすめのケース
・立地条件が良く、家賃設定を引き上げても十分な入居需要が見込める場合
・築年数や建物の傷みがひどく、リノベーションだけでは根本的な改善が難しい場合
・十分な自己資金や融資のメドが立っていて、長期的に安定した経営を目指したい場合
他の方法で土地活用するメリット・デメリット
アパートを解体して更地にし、駐車場や太陽光発電、貸し倉庫など別の形態で活用する方法もあります。
駐車場なら管理が比較的簡単で、需要があれば安定した収益が見込めるでしょう。
太陽光発電を設置して売電を行うケースもあり、地域や日照条件次第ではメリットが大きい選択肢となります。
一方で、土地活用の事業形態によっては、始めるための初期費用がかさんだり、思ったほど収益が上がらなかったりするリスクも存在します。
将来的に土地を売却しやすいよう、更地のまま保有するという考え方もありますが、固定資産税の負担が増える場合があるため、収益プランや税金面の試算をしっかり行うことが大切です。
最終的には、「どの選択肢なら無理のない範囲で長期的な資産活用ができるか」をしっかり考えることが大切です。
相続したアパートの状態や立地だけでなく、家族の意向や将来像、ローンの返済状況などを総合的にチェックしながら、まずは情報収集を進めてみましょう。