固定資産税の基本
アパートなどの不動産を相続した場合には、毎年固定資産税の支払い義務が発生します。その税額は、不動産の評価額に基づいて算出され、評価額が高ければ高いほど支払い額も大きくなるなどのルールがありますので、まずは固定資産税の基本について理解しましょう。
固定資産税とは
固定資産税とは、「固定資産」といわれる家屋や土地、償却資産(事業用資産)などを所有している人に対して、毎年課される地方税の一種です。
所有者は、固定資産税評価額を元に算出された金額を、その固定資産が所在する市町村に納めます。固定資産税評価額とは、固定資産税を決める際の基準となる評価額のことで、各自治体が個別に決定し、通常3年ごとに見直されるのが特徴です。ご自身が所有している不動産の固定資産評価額を調べるには、毎年届く固定資産税納税通知書に付いている「課税明細書」に記載されていますので確認してみてください。
具体的な例として、札幌でアパートを購入した場合、そのアパートの建物や敷地となっている土地が固定資産税の課税対象となります。たとえば、札幌市内に新築アパートを建てた場合、評価額に基づいて固定資産税が計算され、札幌市から納税通知書が送付されます。この税金は、所有者がその不動産を保有している限り、毎年支払い義務が発生します。
また固定資産税は、税収の使途が定められていない普通税といわれるもので、自治体にとって重要な財源の1つになっています。徴収した市町村で、道路や学校、公園など公共施設整備のほか、介護・福祉などの行政サービスにも使われています。
固定資産税の税率
固定資産税の金額は、毎年春頃に市町村から送られてくる納税通知書で知らされるため、自分で計算する必要はありませんが、参考として税率や計算式についてご紹介します。
固定資産税の税率は、固定資産評価額の1.4%です。ただし、地域や自治体の状況によって、特例措置や税率の変更が行われる場合がありますので確認が必要です。
以下、具体例を交えて計算してみます。
【固定資産税計算式】
固定資産評価額×1.4%
”アパートや家などの建物が建っている”住宅用地に関しては下記のような減額特例が設けられています。この特例は、土地に建っている建物を取り壊して更地にしてしまうと適用になりません。
【住宅用地の減額特例】
区分 | 固定資産税の計算式 |
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 固定資産税評価額×1/6×1.4% |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 固定資産税評価額×1/3×1.4% |
建物がない空き地(更地) | 固定資産税評価額×1.4% |
計算例:面積が200㎡の住宅用地で、固定資産税評価額が土地1,000万円・建物500万円の合計1,500万円の場合、固定資産税は35,000円です。
1,500万円×1/6×1.4%=35,000円
建物がない更地の場合は減額特例が適用にならず、計算式が土地評価額1,000万円×1.4%になりますので、固定資産税額は140,000円となり、金額に大きな違いが出ます。
1,000万円×1.4%=140,000円
札幌での固定資産税の納税額確認方法
札幌市内に固定資産を所有している場合、固定資産税の納税額を確認するには、以下3つの方法があります。
- 納税通知書の確認
固定資産税の納税額は毎年4月頃に札幌市から郵送される納税通知書に記載されています。この通知書には、不動産の評価額や課税内容が明記されているため、詳細な確認が可能です。
- 市役所や区役所での証明書取得
札幌市役所や各区役所に直接出向いて「課税台帳の閲覧」や「固定資産税評価証明書を取得」することもできます。この証明書は、不動産売買や相続手続きの際にも利用される重要な書類です。
- 札幌市オンライン申請の活用
札幌市では、市税証明のオンライン申請ができます。スマートフォンとマイナンバーカードを使ってオンラインで申請し、郵送で受け取る流れです。この申請は、メンテナンス時を除く24時間365日で行うことができるので、平日に時間が取れない方にもおすすめです。
相続したアパートの固定資産税は誰が納めるか
相続のタイミングにより、固定資産税の支払い義務が誰にあるのか?という疑問が出てくるかと思います。この章では、相続人決定前後も含めて詳しく解説していきます。
1月1日時点での所有者が納める
固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日時点で登記簿上の所有者として登記されている人です。空き家にしているなど、その不動産を使用していない場合でも所有者と認められれば支払い義務があります。
このルールは全国共通で適用され、年の途中で所有権が移転しても、1月1日時点の所有者に納税義務が課される点に注意が必要です。
たとえば、札幌市で2025年4月にアパートを購入し、新しい所有者として登記が完了している場合でも、その年の固定資産税は1月1日時点で登記簿上の所有者として登記されていた、元の所有者に支払い義務があります。
また、相続時も同様です。相続によって所有権が移転する場合でも、1月1日時点で故人が所有していた場合は、故人名義で納税通知書が送付されます。ただし、次の章で詳しく説明していますが、実際の支払いは相続人が引き継ぐことが一般的です。
そのため、不動産取引や相続時の混乱を防ぐためには、1月1日以降に所有権を取得した新しい所有者との間で固定資産税負担について、取り決めをしておく必要があります。
所有者死亡後は相続人が納める
所有者が亡くなった場合でも、固定資産税が免除されたり、支払い期日が延長されることはありません。所有者死亡後も、固定資産税の納税通知書は故人名義で届き、相続手続きが完了していない場合であっても、その支払い義務は相続人に引き継がれます。
故人名義で届いた納税通知書だからといって、納税せず期日が過ぎてしまうと、遅延金などのペナルティが発生しますので注意が必要です。
納税通知書を新しい所有者の名義で届くようにするためには、市役所や区役所に「所有者変更届」を提出しなければなりません。この手続きを行わないと、固定資産税の納税通知書が故人名義のままとなり、支払い漏れにつながる可能性があります。
相続人決定前
相続人が確定する前の状態では、故人が所有していたアパートなどの不動産は「相共有財産」と見なされ、固定資産税の納税義務も相続人全員が共有で負うことになります。
たとえば、札幌市のアパートを相続する権利が兄弟3人にある場合、そのアパートにかかる固定資産税の支払い義務も3人全員に等しく課されます。
ただし、実際の納付に関しては、3人それぞれが自分の割合に応じて支払うということはできないので、誰がどのように負担するかを話し合い、代表者1人が納税するという流れになります。
この時、取り決めが不明確なままだと誰も支払わずに納税遅延金が発生するなど、思わぬトラブルの原因となることもありますので、相続発生後は速やかに相続人の決定や所有者変更届の提出など手続きを進めましょう。
相続人決定後
相続人が正式に確定し、不動産の所有者が決まると、その相続人(新しい所有者)が固定資産税を納めることになります。
たとえば、札幌市内のアパートを兄弟3人で相続した場合、遺産分割協議を経て最終的に1人が所有者として確定した後は、その人物が固定資産税の納税義務を負います。所有者確定後すみやかに、札幌市役所に「所有者変更届」を提出し、正式に新所有者名義で固定資産税の納税通知書が発行されるように手続きする必要があります。
注意が必要なのは、所有者が確定するタイミングによって納税者が変わるケースがあることです。たとえば、相続手続きが翌年まで長引いた場合、その間に発生する固定資産税については全相続人が一時的に負担し、その後の支払い分からは確定した所有者が全額を負担する形になります。このように、相続手続きが遅れるほど税負担の整理が複雑になりますので、早めに相続手続きを進めましょう。
相続したアパートの固定資産税の負担軽減方法
相続するアパートによっては固定資産税負担が大きく、軽減方法はないかと悩まれる方もいらっしゃるかと思います。この章では3つの負担軽減方法をご紹介いたします。
未納の固定資産税は債務控除を利用
「債務控除」とは、相続税額の計算にあたって、故人が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引くことができる仕組みです。債務が控除されることで課税される金額も少なくなるため、控除できる金額が多ければ多いほど相続税の納付額が少なくなります。
未納の固定資産税についても相続人が代わりに支払った場合には、その支払い分を「債務控除」として相続税の課税対象から差し引くことができます。未納の固定資産税は、本来故人が支払うべき税金であり、故人の債務となるためです。
具体的には、札幌市内のアパートを相続した際に発生した未納の固定資産税50万円を相続人が支払った場合、その50万円分が相続税の計算から控除できます。
この債務控除を適用するためには、支払った固定資産税が正当な負債であることを証明する必要がありますので、納税通知書や領収書などの証拠書類をきちんと保管し、税務署に提出できるように準備しておくことが重要です。
札幌市の場合、必要書類の取得は市役所や区役所で簡単に行えるため、事前に確認しておくとスムーズに手続きが進みます。
相続税の申告期限は相続開始から10か月以内となっているため、早めに税理士など専門家に相談し、債務控除を最大限に活かせる方法を検討しましょう。
アパートを売却する
毎年の固定資産税支払いが難しい場合には、アパートを売却して現金化するという選択肢も一つです。相続したアパートが空室率が高いなど収益性が低い場合、維持費や固定資産税が大きな負担となる場合が少なくありません。このようなケースでは、早期に売却を検討し、固定資産税の支払いを含む負担を解消することが重要です。
たとえば、札幌市内で相続したアパートが築年数の古い物件だった場合、固定資産税の負担だけでなく、多額の修繕費用や管理費用がかかるなどのリスクが高まります。このようなアパートを相続する際は、売却も視野に入れて不動産会社で価格査定を受け、売却価格とアパート経営の収支を比較して判断しましょう。
売却を選ぶ場合には、売却利益を利用して他の投資物件を購入したり、相続税の支払いに充てたりすることも考えられます。特に、札幌市のような都市部ではアパートを含めた不動産の需要が高いため、市場に見合った売却価格であればスムーズに買い手が見つかることも多いです。ただし、売却には入居者の立ち退きが必要だったり、譲渡所得税が課税される可能性があるなどデメリットもありますので、不動産会社など専門家に相談しながら進めましょう。
相続放棄を検討する
固定資産税の支払い義務から免れるための選択肢として相続放棄という方法もあります。
相続放棄とは、相続の権利すべて(アパートを含む相続財産すべて)を放棄することです。法律上、資産と債務は一体として扱われるため、「債務だけを放棄し、アパートだけを相続する」という選択肢は認められていません。そのため、故人の遺産が少額であったり、プラスの資産よりマイナスの債務の方が大きい場合に検討する方法です。
相続放棄は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申請し、手続きをする必要があります。この期間を過ぎてしまうと、相続を承認したものと見なされるため、注意が必要です。
ただし、先ほども記載した通り、相続放棄をするとアパートを含むすべての遺産を放棄することになるため、慎重に判断しなければなりません。
また、被相続人が生前にアパートローンを借りた際に、相続人が連帯保証人になっている場合があります。この場合、たとえ相続放棄をしても、連帯保証人としての支払い義務は残るため、完全に債務から逃れることはできません。
また、相続放棄を行った場合でも、放棄者以外の相続人に負担が移るため、事前に家族や親族と相談し、全体の資産状況を確認することが重要です。
このような法律的側面を十分理解し、相続の可否を検討する際には弁護士などの専門家に相談するのが確実でしょう。