札幌で相続した土地でのアパート経営
相続した土地を放置するとどうなるか
相続した土地を放置すると、所有者にとってさまざまなデメリットが生じます。
特に札幌のような都市部では、不動産を適切に管理しないことが原因で大きな損失を招く可能性がありますので、この章で紹介する5つの放置リスクをしっかり頭に入れておきましょう。
- 固定資産税・都市計画税の負担
利用していない土地でも、所有しているだけで固定資産税・都市計画税が毎年発生します。
家などの建物が建っている土地であれば、住宅用地の特例に該当するため、固定資産税の減額が受けられますが、建物が建っていない更地であれば減額特例が適用にならないので注意が必要です。
例えば、札幌市内の中心部にある土地であれば、不動産評価額が高いため税額も大きくなります。
- 雑草や不法投棄による管理リスク
土地を放置していると、夏場には雑草が生い茂り、害虫の発生や野生動物が住みつくなど、見た目が悪くなるだけでなく、悪臭や不法投棄のリスクも増えます。札幌市内でも、管理されていない空き地が不法投棄の温床となり、所有者が行政から指導を受けるケースが発生しています。
また、札幌では冬場の積雪がありますので、適切な除雪を行わないと近隣住民や通行人に迷惑をかける可能性も出てきます。
- 倒壊リスクや災害時の責任
もし相続した土地に老朽化した建物がある場合、放置することで外壁の脱落や屋根材の飛散、さらには倒壊など危険な事故を引き起こしてしまうリスクがあります。こうした状況は人の命にも関わる最悪の事態を招いてしまう可能性がありますので、早急な対策が必要です。
一見大丈夫そうに見えても、建築基準法改正(1981年)以前の建物は旧耐震基準のため、地震による倒壊リスクがありますので頭にいれておきましょう。
特に、札幌は地震や大雪の影響を受けやすいためリスクが高いといえます。
- 損害賠償責任が発生する可能性
土地の名義人は、所有する土地に対しての管理責任があると同時に、その土地で起きるトラブルに対しても責任を負う必要があります。民法第717条では、所有する土地が原因で第三者に損害が生じた場合には、損害賠償責任を負う可能性があるとされています。
つまり、土地の管理不行き届きから近隣トラブルや放火などが発生すれば、損害賠償責任を追わなくてはいけないというリスクがあるのです。
- 土地の資産価値低下
管理不行き届きによるトラブル発生など、空き地の状況が悪くなることで資産価値が下がり、売却する際の売却額に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、収益を得る機会損失も見逃せません。札幌では、住宅需要や駐車場需要が高い地域も多く、適切に活用すれば安定的な収益を生む可能性があります。せっかくの資産である土地を放置することはチャンスを逃してしまっているといえるでしょう。
相続した土地の活用方法
相続した土地はさまざまな方法で活用することができます。アパート経営はその一つですが、その他の選択肢も含めて検討することが大切です。
この章では代表的な活用例を5つご紹介しますので、土地の条件や特徴、所有者の状況に応じてに合わせて最適な選択肢を見つけましょう。
- アパート経営
土地活用の代表的な例としては、アパートや戸建てなどの建物を建てて入居者を募る、賃貸住宅経営です。
特に札幌市では、学生や単身者向けのワンルームアパートの需要が高いエリアも多く、駅近や大学周辺の土地であれば収益性が見込めます。土地の面積にもよりますが、地下鉄やバス停の近くなどであればアパート経営に向いているといえるでしょう。
また、賃貸経営は安定した収入を得ることができるだけでなく、固定資産税の軽減や所得税の控除などの税制上のメリットも享受できます。
- 駐車場経営
札幌は車社会であり、特に中心部や駅周辺では駐車場の需要が高いため、月極駐車場や時間貸し駐車場として活用する方法があります。初期投資が少なく、管理の手間もアパート経営ほどかからないのがメリットです。
駅徒歩圏内や通勤路、ショッピングモール周辺などの立地であれば、駐車場の経営で十分な収益が見込めるでしょう。たとえ駅から離れていたとしても、周辺に賃貸物件が多いなどの立地であれば、その入居者向け駐車場スペースとして需要があるケースもあります。
- 売却
相続した土地を売却し、まとまった資金を手に入れるという選択肢もあります。札幌市内では、再開発が進んでいるエリアや人気の住宅地では地価が上昇傾向にあり、適切なタイミングで売却すれば利益を得られる可能性があります。
売却で手放してしまえば、固定資産税や維持管理のコストもかからないため、労力や手間を省きたいという方にはおすすめの選択肢です。
- 太陽光発電
郊外の広い土地を相続した場合、太陽光発電施設を設置して売電収入を得る方法も考えられます。北海道は日照時間が短いものの、土地の取得コストが比較的低いため、収益化の可能性があります。日当たりに問題がない土地であれば、ほとんどの場所で行うことができ、建物が建てられない市街化調整区域など、活用方法を見出しにくい郊外の土地でも実施することができる点がメリットです。
- 借地として貸し出す
相続した土地を、そのまま借地として法人や個人事業主に貸し出し、店舗や事務所、倉庫などとして利用してもらう方法です。初期投資もほぼ無しで毎月安定した収入が得られますので、副収入を得るにはシンプルで最適な選択肢といえるでしょう。
ただし、借地として貸し出すには、良い借り手を探す工夫が必要になります。札幌の商業エリアなどであればテナント需要が高いため、立地によっては安定した賃料収入を得られる可能性があります。
札幌で相続した土地でアパート経営するメリットとデメリット
アパート経営のメリット
アパート経営の主なメリットとして、家賃収入・資産形成・節税効果の3つがあげられます。
【安定した家賃収入】
アパートを経営する最大のメリットは、毎月家賃収入という安定した収入源を手に入れられることです。住居系の賃貸というのは、景気の影響をほぼ受けることなく需要が安定しており、賃料も変動しにくいという特徴があります。
特に札幌では単身者や学生向けの賃貸需要が安定しており、特に地下鉄沿線や大学周辺では空室リスクが低いとされています。
【資産形成ができる】
アパートをはじめ不動産は、インフレに強い資産とされていますので、長期的に資産価値を維持できる可能性が高いといえます。特に需要の高いエリアにあるアパートであれば、空室リスクも低く、資産形成がしやすいでしょう。
その他のエリアでも、札幌市内では再開発が進んでいるエリアが多く、入居者対応や建物の維持管理など適切な運営をすれば資産価値の向上も期待できます。
【節税効果がある】
アパート経営は、固定資産税や相続税、所得税の節税効果があります。
例えば、更地の状態では固定資産税が高く課されますが、住宅やアパートなどが建っている土地については、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)について固定資産税の額が1/6になります。また、相続時に賃貸住宅が建っている場合には、建物部分の評価額が低くなるため、相続税対策としても有効です。
さらに、アパート経営による収益は事業所得として扱われるため、経費計上が可能になり、所得税の負担軽減にもつなげることができます。
アパート経営のデメリット
アパート経営に伴うリスクやデメリットとしては、コスト・空室リスク・管理の手間などがあげられます。
【初期投資などのコストが必要】
相続した土地が更地である場合、アパートを建設するために数千万円以上の資金が必要になるのはデメリットの一つです。札幌市内でも、不整形地や高低差があるなど土地の形状などによっては建設コストが高くなることもあり得ます。
またアパート経営には、建物の定期的な管理や修繕など運営コストがそれなりに発生します。アパートが古くなるにつれ、外壁塗装や屋根の修繕、設備の交換など、修繕にかかる費用は高額になっていくため、家賃収入で賄いきれないケースもあります。
また、アパートを所有する上で固定資産税や都市計画税など税金の支払いも欠かせません。
【空室リスク】
アパートの経営をする上で課題となるのが入居者の確保です。
ある程度の人口があり、需要の高いエリアなら良いですが、郊外では入居者が見つかりにくい可能性があります。例えば、札幌市内でも地下鉄駅から遠いエリアでは、賃貸需要が低下しがちです。
さらに、アパートが古くなるにつれ、空室率が高くなる傾向にあり、家賃を値下げせざるを得ないなどの可能性も出てきます。つまり、空室率が高いということは、その分アパート収益の減少に直結しますので、結果的にアパート経営が赤字になる可能性があるということです。古いアパートや収益性が低いアパートを相続した場合は、経済的な負担が相続人に重くのしかかることがあるため注意が必要です。
【管理の手間がかかる】
アパートの経営には、日々の運営・管理に手間や労力がかかるという側面があります。
入居者の対応はその一つで、入居者が退去する際の手続きや新しい入居者の募集、家賃の滞納が発生した際の対応、設備の不具合やクレームへの対応など、多岐にわたる業務が必要になります。
また、建物の定期的な管理や修繕も欠かせません。これを怠ると、資産価値の低下や空室率の増加を招く可能性があります。
もちろんすべてを管理会社に委託することもできますが、その分の手数料がかかるため、家賃収入が減少する点もデメリットといえるでしょう。収益性とのバランスを考慮しながら、考慮していく必要があります。
札幌でアパートを経営する費用
初期投資にかかる費用
アパート経営を始める際に必要になる初期投資について、この章では5つご紹介します。
立地や規模によって異なりますが、これらの初期費用を合計すると、札幌でのアパート経営の初期投資は5,000万円~1億円程度がおおよその目安となります。
アパート構造を木造にしたり、補助金や助成制度を活用することで費用を抑えることができます。
- 建設費
札幌でのアパート建設費は、1棟あたり3,000万円~1億円程度が目安です。建設コストは建物面積はもちろん、構造(木造、鉄骨造、RC造)によって異なり、木造アパートは比較的安価で、RC造(鉄筋コンクリート造)は耐久性が高い分コストも上がります。
- 設備費
アパートの設備には、エアコン、給湯器、キッチン、バス・トイレなどが含まれます。札幌の場合、冬の寒さ対策として断熱仕様やロードヒーティングなど、屋外の雪対策費用も追加で必要になるのが一般的です。これらの設備費用は、総額で数百万円~1,000万円程度かかることもあるので、忘れずに想定しておきましょう。
- 設計・許認可費用
建築設計料や札幌市の建築確認申請費用などが必要になります。設計事務所に依頼すると設計費が高くなるものの、長期的に見て管理のしやすい物件に仕上げられるケースが多いです。概算で建築費の5~10%程度を目安として考えておきましょう。
- 土地代(必要な場合)
すでに相続した土地がある場合は不要ですが、追加で土地を購入する場合、札幌市内では坪単価30万~200万円ほどと幅広いです。特に中央区や地下鉄駅近の人気エリアでは高額になりやすいため、土地価格を考慮した事業計画が必要です。
- 融資手数料・登記費用
住宅ローンやアパートローンを利用する場合、金融機関の手数料や登記費用も必要になります。登記費用は数十万円~100万円程度で、融資手数料は借入額の1~3%が目安です。
維持管理費用の考慮
アパートを経営する上で、維持管理費用を長期的に考える必要があります。
札幌の気候特性を考慮し、どのような費用が発生するのか詳しく説明します。
- 修繕費用
アパートの修繕には、外壁塗装、屋根の補修、給湯器の交換などが必要になります。
特に札幌では、雪による屋根の損傷や寒冷地特有の水道凍結による修理が発生することがあります。
外壁・屋根塗装は10~15年ごとに検討する必要があり、費用目安としては100万円~300万円程度、給湯器・暖房設備の交換はだいたい10年ごとで、50万円~100万円が目安です。
- 管理費用
賃貸管理会社に管理を委託する場合、家賃収入の5~10%が管理費としてかかります。管理業務には、入居者対応、家賃回収、建物メンテナンスなどが含まれます。
- 共用部分の光熱費
アパートの廊下やエントランスなど共用部分の照明や防犯カメラ、ロードヒーティングがあればその電気代もかかります。特に札幌では、ロードヒーティングにかかる光熱費が高くなりがちで、年間数十万円程度になることもあります。
- 空室対策費用
空室を埋めるための広告費(1戸あたり数万円~)や、家賃を下げるための補修費用などが必要になる場合があります。
特に、郊外では空室率が高くなりがちなので、計画的な広告戦略など空室対策が重要になってきます。
その他の費用
その他、アパート経営には、さまざまな税金や保険料がかかります。
- 固定資産税・都市計画税
札幌市では土地や建物に対して固定資産税がかかります。建物を建てることで税額が軽減される場合もありますが、年額数十万円~数百万円の負担になることがあります。
- 所得税・住民税
アパート経営による所得は「不動産所得」として課税対象になります。年間の家賃収入や経費の差額によって所得税率は異なりますが、税額が高額になる可能性も少なくありません。必要経費を適切に計上したり、青色申告を活用するなどしっかりと節税対策を行いましょう。
- 火災保険・地震保険
札幌では冬季の火災リスクや地震リスクもあるため、適切な保険加入が重要です。保険料は年間5万円~20万円程度が一般的です。
札幌でアパート経営が向いているケース
アパート経営に適した土地条件
札幌でアパート経営を成功させるためには、特に土地の条件が重要になります。立地や周辺環境など以下のような条件を満たしていると収益性が維持しやすいので、ぜひご自身が相続する土地条件と照らし合わせてみてください。
【駅近・公共交通機関の利便性が高いエリア】
地下鉄東西線・南北線・東豊線沿線の駅近エリアは、通勤・通学に便利なため賃貸需要が高いです。例えば、「大通」や「円山公園」など中央区周辺は特に人気があります。
【大学・病院・企業が多い地域】
北海道大学や札幌医科大学の周辺では、学生や医療関係者向けの賃貸需要が高く、空室リスクが低いです。また、大型病院や企業のオフィスがあるエリアも狙い目です。
【再開発エリア】
札幌市内では再開発が進んでいる地域も多く、今後の地価上昇や賃貸需要の増加が見込めます。例えば、「札幌駅周辺」や「新札幌エリア」では、再開発による利便性向上が期待できます。
土地を相続したら専門家に相談する
土地を活用する方法について迷ったり悩んだりする場合、所有したままにしていても固定資産税などのコストや管理手間等がかさむ一方です。そのような時は、まず不動産会社に相談して土地の査定をしてみるのも選択肢の1つです。
不動産会社で、土地の売却価格を査定してもらい、その金額で納得できれば、そのまま売却し現金化することができます。査定価格は不動産会社によって異なるため、まずは複数社に査定を依頼してみると良いでしょう。
不動産会社では、土地の価値を知るための査定や土地の有効活用に関する相談など、不動産に関わる様々なサポートを提供していますので、売却を決めていなくても、まずは相談することで良い活用方法が見出せるかもしれません。