相続のこと

2023.11.02

親の土地を売る手順や注意点を4つの状況別にわかりやすく解説!

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家族でも親名義の土地を勝手に売ることはできません。そのため、親が亡くなってしまった場合や認知症になってしまった場合などは特に困りますよね。

今回の記事では、「親が亡くなってしまった」「親が認知症になってしまった」「親の代理で土地を売りたい」「親から土地の贈与を受けたい」という、よくある4つの状況において1つずつ土地売却の手順と注意点をご紹介します。

 

亡くなった親の土地を売る場合の手順

まず、亡くなった親が残した土地を相続し、売却する際の手順について解説していきます。

それぞれ一つずつ、詳しく解説していきます。

 

❶遺産分割協議

❷相続登記

❸土地の売却

 

遺産分割協議

遺産分割協議とは、被相続人の財産を相続人である家族や親族などに分割するための協議のことです。被相続人が残した遺言書がある場合は、遺言書に従って遺産を分割することになります。しかし、遺言書がない場合は相続人が被相続人の財産を分割するために、遺産分割協議を行い遺産分割協議書を作成します。これにより相続人同士のトラブルを未然に防ぐことができます。

話し合いの内容は、相続人が分割する財産の種類や割合、相続人の順位、負債の分担方法などです。

もし、相続人が多数いる場合やトラブル等が起きた場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのが良いでしょう。遺産分割協議が終了したら、書面にまとめた内容を司法書士に提出し、遺産分割協議書を作成してもらいます。相続人が1人のみの場合は、遺産分割協議書は不要になる場合が一般的です。

 

相続登記(所有権移転登記)

土地や家などの不動産を相続した場合、相続人は所有権を持つことになりますがその所有権を証明するためには相続登記(名義変更)が必要です。相続登記を行わない場合、所有権を主張することができないので、土地の売却や貸し出し、家の改築や増築などの取引もできなくなってしまいます。

また、複数人で相続する場合には相続人全員の登記を行い、相続人が未成年者である場合は法定代理人が登記を行います。

登記手続きには、相続人の印鑑証明書や相続証明書・登記簿謄本などが必要となり、相続人全員が同意した上で、相続する土地が所在する法務局にて登記申請を行います。

相続人が住んでいる住所地ではなく、相続する土地の所在地法務局にて申請になるので注意してください。相続登記の手続きは、大変な手間が掛かることが多いため司法書士に依頼するのが一般的です。費用については、登録免許税(不動産評価額の0.4%)と司法書士へ依頼する場合には、司法書士への報酬が必要になります。

 

土地の売却

相続登記が完了して初めて、相続した土地の売却ができます。

まず、相続した土地がどのくらいの価格で売れそうか、不動産会社の査定を受け相場を把握しましょう。

査定額は、物件の相場価格に明確な基準がないことや、査定の仕方でも異なるなど、不動産会社によって提示される金額が違う場合がほとんどです。1社だけでなく複数社に依頼し、査定価格や査定の根拠を比較するといいでしょう。

不動産会社へ依頼する際、相続した土地を購入した当時の「売買契約書」や建築時の「建築請負書」などの書類が手元にあるとスムーズです。また、土地境界線の確認も必要になります。

土地境界線は、土地の所有権を保護するために重要なもので、境界線が明確に設定されていることで隣接する土地所有者間で紛争が発生することを回避できます。

不動産の売買などの際にも必ず必要になりますので、土地境界線が未確定であれば売却前に測量を依頼しましょう。

不動産会社へ相談する費用は、無料の場合がほとんどですが、実際に売却の仲介を依頼し成約につながると仲介手数料がかかります。土地価格が400万円を超える場合の仲介手数料は、「土地価格×3%+6万円+消費税」の計算式で算出できます。

 

亡くなった親の土地売却の注意点

遺産分割協議書の作成は、法定相続人全員の合意が必要です。相続人が複数いる場合、1人でも合意が得られなかったり、行方がわからないなどで作成に時間がかかったり、作成自体が困難になることが予想されます。

また、相続人に未成年がいる場合は、法定代理人(通常は親権者)が遺産分割協議に参加します。認知症などで判断応力が不十分な相続人がいる場合は、遺産分割協議が無効と判断される恐れがあります。判断能力の程度によって、家庭裁判所に成年後見人を選出してもらい、成年後見人が代わりに遺産分割協議に参加する必要があります。

相続人が複数いたり、判断能力が不十分な相続人がいる場合などは、司法書士など専門家に依頼するのが無難でしょう。

 

土地を相続には相続税がかかる

相続でお金や家・土地などの財産を受け継いだ場合、その受け取った財産には「相続税」が課税されます。

相続税の計算は土地のみではなく、現金や有価証券などの他財産と合算した金額をもとに算出することになります。

ただし、財産を相続した際に必ず課税されるとは限らず、相続した財産の額から借金や葬式費用等を差し引いた後の金額が基礎控除額を上回るときに課税されます。

 

この基礎控除の額は「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」で計算します。

 

例:相続人が被相続人と配偶者と子2人の場合→法定相続人は3人

3,000万円+(600万円×3人)=基礎控除額4,800万円

※この場合、相続した財産の額が4,800万円以下であれば、相続税は課税されません。

相続税の他にかかる税金土地売却の際には、以下の税金が相続税の他にかかります。

・印紙税 ・登録免許税 ・所得税/特別復興所得税 ・住民税

詳しくは別記事「土地の売却にかかる税金4種と支払いタイミングを計算式とともに詳細解説!」をご参照ください。

 

土地の売却にかかる税金以外の費用は?

土地を売却する際、税金以外にかかるその他の費用は、以下が考えられます。

 

不動産仲介手数料

前章でも触れましたが、土地の売却を不動産会社へ依頼し売却が成立した際、販売活動や買主との仲介業務の成功報酬として支払うのが仲介手数料です。売却が成立しなくても「手付解除」「違約解除」の場合は仲介手数料が発生します。

 

抵当権抹消登記費用

売却する土地を住宅ローンで購入している場合には、金融機関が設定した「抵当権」が登記されているため、ローンを完済した際に必ず「抵当権抹消登記」が必要です。これを司法書士に依頼する場合は、その手数料も含めて1万円~3万円程度が目安でしょう。

また、売却物件の売買代金をつかってローンを一括返済する際には、金融機関所定の一括返済手数料が掛かりますので覚えておいてください。手数料の金額は、ローンの残高や金利の種類等によっても異なるため、事前に金融機関に確認しておくことがおすすめです。

 

敷地測量費

土地の売却の際、その敷地の境界が定まっていない場合は測量をいれる必要があります。測量費は売主負担となりますが、引渡しを受けたら登記簿面積と違ったなど、のちのちのトラブル回避にもつながります。

 

認知症の親の土地を売却する場合

認知症の親に代わって土地を売却する際には、まず成年後見人が必要です。

認知症で「意思能力」がなくなっている場合には、土地をはじめ不動産の売却はできません。

「意思能力」とは、自己の行為によってどのような結果が生じるかを認識、判断できる能力のことを言います。

認知症が疑われる場合でも「意思能力がある」と判断され、土地の売却ができる可能性もあります。

しかし、「意思能力がない」と判断されると売買契約を結んだ場合でも、契約は無効になってしまいます。そのため、成年後見制度を利用して売却するのが一般的です。

成年後見制度・成年後見人とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害などにより、判断能力が不十分な状態にある人を保護・支援するための制度です。家庭裁判所が成年後見人を選任することで、成年後見人が本人の利益を考えながら、身の回りのお世話や契約締結などの法律行為、財産管理等を行うことができます。本人の不利益になる法律行為を本人が行なってしまった場合には、成年後見人もしくは本人が後から取り消すことが可能です。しかし、食料品等の日用品購入などの日常生活に関する行為は、取り消すことができません。

 

成年後見人には誰が選ばれる?

成年後見人は、本人の状態に応じて家庭裁判所が選任します。本人の親族が選ばれる場合や、弁護士・社会福祉士などの第三者、福祉関係の公益法人等が選ばれる場合もあり、複数選ぶこともできます。後見人と本人との利害関係や、職業等もふまえ本人にとって最も適任と考えられる人が選任されます。誰を選ぶかという家庭裁判所の判断について、不服申立てをすることは認められていません。

親族が選ばれない可能性として高いのは、親族が高齢である・親族間の争いがある・親族が本人の財産を使ってしまうことが考えられるなどの場合です。

 

成年後見制度の注意点

これまで解説してきた通り、成年後見制度にはメリットがある一方、デメリットや注意点も存在します。

後悔のないよう、制度を利用する前に理解しておきましょう。デメリットと注意点を改めて以下にあげておきます。

 

・申請のための書類作成や準備など手間がかかる

・家族や親族が成年後見人になれるとは限らない

・専門家が成年後見人に選任された場合コストがかかる

・選任について家庭裁判所に不服申立てができない

・本人以外のために財産を使うことができない

・基本的に一度利用を開始すると途中でやめることができない

・不動産の売却など大きな契約には裁判所の許可が必要

・認知症の親本人の財産状況等を家庭裁判所に年に1回程度報告する必要がある

 

親の土地を売る際の手続き

まず、基本的な土地の売却の流れは下記の6つです。子が親の代わりに土地を売却する場合は、「親名義のまま売却」「子名義に変更して売却」の2つの方法があります。親名義のまま売却する際は、親に委任状をもらってから下記の流れに移ります。子名義に変更してから売却する場合は、土地が所在する法務局で所有権移転登記を行ってから下記の流れで売却です。

 

❶不動産会社へ売却査定を依頼する

❷不動産会社の選定・媒介契約

❸不動産会社の販売活動

❹買主との価格や条件交渉

❺売買契約の締結

➏決済・引渡し

 

親の土地を売却する際の注意点

親名義のまま土地を売却した場合は、売却して得た利益は当然親のものです。もし、売却金を子が受け取る場合には贈与税が課税されます。また、子名義に変更する場合でも、名義変更の時点で不動産取得税と贈与税の課税対象となり、さらに土地の売却利益が発生した場合には、譲渡所得税がかかる可能性もありますので覚えておきましょう。

 

健康な親の代理で不動産を売却する場合

健康な親であっても、様々な事情で親本人が不動産契約を行えないケースもあるかと思います。そのような場合、代理人を立てることで親の代わりに売却を進めることが可能です。

 

代理人の選定基準

代理人とは、その権限内において本人の代わりに意思表示を行い、法律行為を行う人のことです。代理人の権限は、当事者間の合意によって決まります。すべてを任せるような広い範囲の代理権とすることも、一部のみの狭い代理権にすることも可能です。ただ、代理人が行った法律行為は本人が行ったものと同等の効力を発しますので、代理人の選定は非常に重要です。

親が信頼できる人物であることはもちろん、不動産契約の場合は専門的な知識と経験も必要になるケースが多いです。代理人の選定には、法律的な基準や条件等は定められていませんので、信頼できるという視点で家族や親族などを選んだり、知識を重視して司法書士や弁護士などの専門家を選ぶことも可能です。専門家を選定する場合、費用は発生しますが。権利関係が複雑にからんでいる不動産の売却などの場合は安心して任せられるでしょう。

 

代理人の役割と責任

代理人は「任意代理」と「法定代理」の2種類です。「任意代理」とは、本人の意思に基づいて代理人となるもので当事者の合意に基づいて代理人が選定されます。一方「法定代理」とは、本人の意思に関係なく法律の規定に基づいて発生する代理権のことで、先に説明したような成年後見人なども法定代理人となります。いずれの場合でも、代理人が果たすべき役割は多岐にわたります。価格の交渉から契約書の作成、さらには売却後の手続きまで一連の流れをスムーズに進める責任があります。

 

代理人としての売却手続き

代理人として売却手続きを行う場合、委任状を作成する必要があります。委任状には決まった書式がなく自由ですが、不動産売却のような大きな契約の場合には、最低限下記のような項目を記入し、代理の範囲権限がどこまでであるのか明確にしておくことが重要です。まずは、不動産売却の仲介を依頼する不動産会社が持っている書式を使うのがいいでしょう。

 

・委任の内容

・売却する不動産の情報

・価格や手付金、キャンセル料、引渡日などの売却条件

・登記申請に関する内容および司法書士の選任について

・委任状に取り決めがない事項の扱い

・代理の有効期限

・売主と代理人の記名(住所氏名)と捺印(実印)

 

代理人としての売却手続きの流れ

代理人として不動産売却を進める際の手続きは、親自身が行う場合と基本的には同じですが、前章で解説した委任状の作成がまず必要になります。代理人による不動産契約の場合、買主からみると代理人が本当に売主の代理人であるかどうかの判断が難しく、騙されてお金を支払ってしまうリスクが高いといえます。そのため、買主や仲介する不動産会社、司法書士等から本人へ意思確認が行われると同時に、委任状には実印での押印と印鑑証明書も添付することが一般的です。

 

代理人としての売却手続きの注意点

代理人として不動産売却を進める際の注意点として一番にあげられるのは「無権代理人」とみなされてしまうことです。「無権代理人」とは、はじめから代理権がない人や委任された権限の範囲を超えて代理行為を行なった代理人のことです。

無権代理人が行った契約は、原則無効で本人も代理人も契約を履行する責任はありません。ただし、無権代理人が行った契約でも本人が契約は有効であると追認すれば、無権代理人が契約を履行する責任を負うことになります。無権代理人が代理権を証明できない場合や本人が追認しない場合は、契約の相手方の選択により、無権代理人が契約の履行か損害賠償責任を負います。

しかし、代理人に代理権が無いことを相手方が知っていたり、相手方の過失で代理人に代理権が無いことを知らなかったときなどは、相手方が善意・無過失と認められないため、無権代理人は責任を負う必要がなくなります。

代理人として不動産売却を行える代理権はメリットもありますが、売主・買主ともにリスクがあるということを覚えておきましょう。

 

贈与で得た不動産を売却する場合

最近では、終活のために生前贈与を考える親も増えてきています。「贈与」とは、子や親族、第三者などに財産を無償もしくは無償同然で譲り渡すことを言います。

親の土地を売却する際、「相続」なのか「贈与」なのかによって税率や売却の手順が異なりますので、この章では「贈与」の不動産を売却する場合について詳しく解説していきます。

 

贈与税とその対策

親から不動産を譲り受けたときには「贈与税」が発生します。贈与税が課税されるのは、不動産を贈与する人ではなく、受け取る側です。贈与税は税率が高く、無償で譲り受けたはずなのに

 

贈与税の計算

贈与税には基礎控除があり、基礎控除額は1月1日〜12月31日の1年間で110万円です。そのため、この110万円を超えた金額の贈与に対して贈与税がかかります。贈与金額が110万円以下であれば、贈与税は課税されません。

 

贈与税の計算式

(1年間に譲り受けた財産価格の合計-110万円)×税率-控除額

 

贈与税の税率については「特例贈与」と「一般贈与」で異なります。「特例贈与」とは、父母や祖父母などの直系尊属から20歳以上の子や孫への贈与のことで、特例贈与に該当しない贈与は「一般贈与」に分類されます。下記にそれぞれの税率を表でまとめましたのでご参照ください。

 

【特例贈与】

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

 

【一般贈与】

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 40万円

※国税庁「贈与税の計算と税率」参照

 

贈与税の節税対策

不動産の贈与税計算には「相続税評価額」もしくは「固定資産税評価額」が必要です。土地の場合は相続税評価額を用い、路線価方式もしくは倍率方式で算出、建物の場合は固定資産税評価額から算出されます。

路線価は、近隣の地価公示価格の8割程度が目安ですので、たとえば時価総額1,000万円の土地であれば、相続税評価額は800万円という目安になります。そのため、この場合親名義のまま土地を売ると1,000万円となりますが、先に贈与を受けた場合は800万円の財産として譲り受けることができるということです。特に時価と相続税評価額の差額が大きい場合には、先に土地を贈与してもらった方が有利ということになります。売却と贈与、どちらを先に行うのがいいかは時価を確認してから判断すると良いでしょう。

 

 

スムーズで損しない土地売却の近道

これまで親の土地を売りたいと考える方によくある4つの状況毎に手順と注意点をご紹介してきました。一言で親の土地を売ると言っても、各状況に応じて手順や注意点が異なることがお分かりいただけたかと思います。

特に不動産売却については、取引金額も大きい場合が多く専門的な知識を多く必要とします。親の土地をスムーズに、かつ損なく売るためには信頼できる不動産会社に仲介を依頼するのが一番の近道です。弊社「S plus home(エスプラスホーム)」では、札幌や札幌近郊の不動産売却の仲介や買取を行っています。土地売買についてのご相談や査定についても無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

代表取締役浜谷 卓

一つ一つのお取引を大切にし、必ずご満足のいくサービスをご提案致します。

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