相続のこと

2023.12.04

アパートの相続税評価額って何?基本から節税のコツまで

facebook

twitter

line

アパートのオーナーまたは所有する予定の方にとって、相続税は大きな関心事ではないでしょうか。
特に「アパートは相続税対策になる」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、実際そのためには、相続税の計算におけるアパートの評価額への理解が不可欠です。
本記事では、アパートの相続税評価額の重要性を明らかにし、その計算方法と影響をわかりやすく解説します。
相続税評価額を適切に理解し管理することで、節税効果を最大限に引き出すことが可能となるでしょう。
複雑に感じるかもしれませんが、基本的な知識を身につけることで、将来にわたって資産を守り、税負担を軽減することができます。
この記事を通じて、アパートオーナーの皆様が賢い相続税対策を立て、安心して資産を管理できるよう解説していきます。

アパートの相続税評価額とは?

相続税評価額とは、相続が発生した際に遺産となる財産を金額で評価するための基準のことです。
特にアパートなどの不動産に関しては、その評価方法が他の資産とは異なるため、よく注意しましょう。

相続税評価の基本

相続税評価額の基本的な考え方は、財産を「公正市場価格」で評価することです。
これは、相続時にその財産が市場で売りに出された場合に想定される価格を意味します。
この価格設定の目的は、相続税の公平な課税を実現することにあります。
不動産の相続税評価額を正確に算出することで、不動産の実際の市場価値を反映し、税金の過不足を防ぐことができるため、重要な評価とされています。

アパート特有の評価方法

アパートの評価においては、その賃貸物件としての特性が考慮されます。
アパートは、個々の部屋を個別に賃貸するという性質を持っているため、空室率や賃料、建物の老朽化程度などが評価額に大きく影響しています。
たとえば、高い空室率や低い賃料は、評価額を下げる要因になり得ます。
これは、例えば一軒家やオフィスビルのような他の種類の不動産とは異なる、アパート特有の評価ポイントです。

アパートの相続税評価額を算出する際には、建物の構造や立地条件も重要な要素となります。
例えば、鉄筋コンクリート造りの建物は木造建物よりも評価額が高くなる傾向があります。立地条件に関しては、都市部や交通の便が良い場所にあるアパートは、評価額が高くなります。
また、建物の築年数も重要で、新しい建物ほど高い評価を受けることが一般的です。

さらに、アパートの相続税評価額は、固定資産税評価額に基づいて算出されることが多いです。
固定資産税評価額は、地方自治体が定める不動産の価値であり、これを基に相続税評価額が計算されます。
この評価額は、通常、市場価格よりも低く設定されることが一般的ですが、それでも相続税の計算において重要な基準となります。

アパートの特性を踏まえた適切な評価により、相続税の正確な計算が可能となり、将来的な財産管理や節税対策に大きく役立ちます。

基礎的な計算方法

アパートの相続税評価額を算定するには、まず土地と建物を別々に評価します。
土地の評価には、国税庁が定める路線価または倍率方式が用いられます。
路線価は、土地が面する道路に基づく1㎡当たりの価格を基準に設定され、倍率方式は路線価が定められていない土地に適用される方法です。
倍率方式では、固定資産税評価額に地域ごとの倍率を乗じて土地の評価額を算出します​​​​。

建物の評価に関しては、市町村が定める固定資産税評価額が使用されます。
この評価額は、通常、市場価値の60%~70%程度に設定されており、特に賃貸物件として利用されている場合、その特性が考慮されます​。

アパートの固定資産税評価額を基に、相続税評価額を算出します。

固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

「借家権割合」とは、賃貸物件が持つ借家権の割合を指し、これにより評価額が減少します。
一方、「賃貸割合」は物件が実際に賃貸されている割合を示し、この割合が高いほど評価額は下がります。
この計算方法により、賃貸物件としてのアパートの評価額は、同じ価値の自己使用物件よりも通常低くなります。

計算の具体例

例えば、路線価が1㎡当たり20万円、面積が300㎡の土地の場合、初期評価額は6,000万円となります。
この土地に借地権割合を50%、賃貸割合を100%適用すると、最終的な評価額は

6,000万円×(1−0.50×1.00)=6,000万円×0.50=3,000万円

となります。
建物に関して、固定資産税評価額を同じく6,000万円とし、借家権割合30%、賃貸割合100%を適用すると、評価額は

6,000万円×(1−0.30×1.00)=6,000万円×0.70=4,200万円

となります。

土地と建物の評価額を合算すると、アパートの総評価額は

3,000万円+4,200万円=7,200万円 となります。

アパートを賃貸用途で使用している場合、相続税評価額には特別な減額が適用され、結果的に相続税の納税額が軽減される可能性があります。
特に、賃貸割合が高い場合、より大きな税対象額の軽減効果を期待できますが、空き室が多い場合はその恩恵が少なくなってしまいます。

以上のように、アパートの相続税評価額の計算は、複数の要素を組み合わせて求められます。
一見複雑に思えるかもしれませんが、相続税の負担を適切に管理することで、将来的な財産計画に役立てることが可能となるでしょう。
また、この計算方法の理解は、賃貸物件を適切に評価し、相続時の税負担を見積もる上で必要不可欠です。

アパートの相続税をさらに節税する方法

賃貸アパートにかかる相続税を節税する一つの方法として生前贈与があります。
この方法の節税効果は遺産の総額や贈与の方法によって異なります。

生前贈与のメリット

生前贈与のメリットとしては、まず不動産収入が相続税の対象から外れることが挙げられます。
例えば、年間500万円の不動産収入があれば、10年間で合計5,000万円が相続税の対象から除外されます。
これは、受贈者がその不動産から得る収入が彼らのものになるためです。
また、贈与者の所得税が累進課税により軽減される可能性もあります。
贈与者が他の不動産収入を多く持っている場合、贈与によって自身の不動産収入が減少し、結果として所得税の税率が下がることがあります。
さらに、生前贈与を通じて、賃貸アパートの継承者を親が自由に選択できるため、遺言書や分割協議の必要がなく、相続時のトラブルを回避できるというメリットもあります。

生前贈与のデメリット

一方で、生前贈与のデメリットとして、まず贈与税の負担が発生する可能性があります。
特に、基礎控除以上の相続の場合、贈与税を支払う必要が生じるかもしれません。
また、負担付贈与には注意が必要です。
建築時のローンが残っている場合、そのローン部分も受贈者が引き継ぐ必要があります。
この場合、プラスの財産である建物を贈与する際に、マイナスの財産であるローンを引き継ぐことが条件となります。
さらに、小規模宅地等の特例が使えなくなることもデメリットの一つです。
賃貸アパートの建物を生前贈与した場合、その後の相続で土地部分が被相続人の賃貸アパートの敷地とは見なされなくなります。
そのため、小規模宅地等の特例が使えず、評価額の50%減が使えなくなります。
最後に、生前贈与を受けた子と受けていない子がいる場合、相続時に特別受益として争いの原因になることがあります。
贈与された不動産の価値が遺留分の計算に含まれるため、不公平感が生じることがあります。
さらに、不動産取得税がかかるため、この追加負担も考慮する必要があります。

生前贈与は相続税の節税対策として有効な手段ですが、その利用には様々な注意点があります。
特に、贈与税の負担や後続の相続問題については十分な検討が必要です。

アパートの相続税評価額における注意点

建物の評価で使うのは固定資産税課税標準額ではない

アパートの相続税評価額を算定する際には、特に建物の評価でよく間違いやすい誤りに注意が必要です。
多くの場合、建物の評価に固定資産税課税標準額を誤って使用するケースが見られます。
しかし、相続税申告においては、固定資産税評価額を基に評価することが求められます。
固定資産税課税明細書には、これら二つの金額が記載されているため、間違って固定資産税課税標準額を用いると、過小評価になってしまうリスクがあります。
このような過小評価は、相続税の計算において不正確な結果をもたらす可能性があるため、金額を間違えないように十分注意しましょう。

相続直前に行ったリフォーム・リノベーションの評価漏れ

アパートの相続税評価において、特に注意すべき点の一つが、相続直前に行われたリフォームやリノベーションの評価漏れです。
被相続人が亡くなる直前に実施されたリフォームやリノベーションは、しばしば固定資産税評価額に反映されていないため、見落とされがちです。
これらの改修工事の費用は、相続税評価額の計算において重要で、工事費用から減価償却費相当額を控除した額の70%相当を評価額に加算する必要があります。
したがって、生前にリフォームやリノベーションに投資した場合、それが固定資産税評価額に反映されないと、相続税対策になると誤解している人もいますが、実際にはその部分を適切に評価する必要があるのです。
このような評価漏れを防ぐためには、リフォームやリノベーションに関する詳細な記録を保持し、相続税申告時にこれらの情報を適切に反映させることが重要です​​。

相続税申告における建物の評価額は家を売ったときの取得費にならない

相続税申告における建物の評価額は、家を売却した際の取得費にはなりません。
多くの人が、相続税申告時の建物評価額を、その後の譲渡所得税の計算における取得費として使用できると誤解しています。
しかし、実際には相続税申告時の建物評価額と譲渡所得税計算上の取得費は異なります。
譲渡所得税の計算には、被相続人が建物を取得した当初の金額等を基に減価償却費を控除して取得費を算出します。
この過程で、相続税申告時の建物の評価額を取得費として使うと、誤った計算になるため注意しましょう。
このような誤解を避けるためには、相続税申告と譲渡所得税計算の違いを正確に理解することが重要です。

まとめ

アパートの相続税評価額算定時には、複数の重要な注意点があります。
まず、建物の評価には固定資産税評価額を用い、固定資産税課税標準額と混同しないよう注意が必要です​​。
また、相続直前に行われたリフォームやリノベーションの評価漏れを避け、これらの工事費用を適切に評価に反映させることが重要です​​。
さらに、相続税申告時の建物評価額は、譲渡所得税計算上の取得費とは異なるため、これらを混同しないよう注意する必要があります​​。
これらの点を適切に理解し対処することで、相続税評価の正確性を保ち、将来的な税金トラブルを避けることができるでしょう。

この記事を書いた人

代表取締役浜谷 卓

一つ一つのお取引を大切にし、必ずご満足のいくサービスをご提案致します。

facebook

twitter

line

お問い合わせ Contact

「不動産売却について」「不動産買取について」「当社について」など、
お困りごとがございましたら何でもご相談ください。

エスプラスホームへの
お問い合わせはこちら